著者
原田 悠紀 青木 久
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2018年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.000213, 2018 (Released:2018-06-27)

1.はじめに 海水飛沫帯の岩石表面に形成される微地形に,タフォニやハニカム構造(以下,単にハニカムとする)がある.両者は塩類風化によって岩石表面の強度が低下した結果形成される窪みであるが,一般に,ハニカムはタフォニよりも窪みが浅く,蜂の巣状の平面形態を示す地形である.ハニカムはタフォニの生成初期の地形であると指摘する研究が存在するものの,両者の関係性を実証的かつ定量的に考察された研究はない.本研究では,海岸域に建設された砂岩塊からなる石垣表面にタフォニとハニカムがみられることに着目し,それらの分布,窪み深さ,および岩石強度を調べ,タフォニとハニカムの形成条件を明らかにすることを目的とする.さらにそれらの結果からタフォニとハニカムの関係性について考察する. 2.調査地域 千葉県銚子市海鹿島海岸は砂浜や波食棚が発達している.その波打ち際には全長約100 m,高さ約2.5 mの昭和初期に建てられた石垣が存在する.石垣は砂岩塊で積み上げられた最大7段の積み石からなっている.砂岩塊の大きさは,幅約40 ㎝,高さ約30 ㎝である. 3.調査方法 まず観察により,砂岩塊表面に見られる微地形について,窪みの有無,風化物質の有無,平面形態に基づき地形分類を行った.タフォニとハニカムのように窪んでいる地形については窪み深さを計測した.次にエコーチップやシュミットハンマーを用いて砂岩塊表面の強度計測を行った. 4.調査結果と考察砂浜背後の砂岩塊には,多くのハニカムが形成されており,波食棚背後の砂岩塊にはタフォニが卓越していた.潮間帯の砂岩塊は風化物質が付着しておらず,ほとんど窪んでいなかった.タフォニとハニカムの窪み深さを比較してみると,タフォニの方がハニカムよりも大きかった.風化していない砂岩塊(以下,未風化砂岩),タフォニ,ハニカムの岩石強度を比べてみると,岩石強度は,タフォニ<ハニカム≦未風化砂岩であった.この結果から,タフォニはハニカムに比べて,塩類風化によって強度が大きく低下した砂岩塊に形成される地形であり,ハニカムとタフォニの形成の差異は,砂岩塊表面の風化による強度低下量の違いに関係することがわかった.同一の砂岩塊においてハニカムとタフォニが共存していたり,ハニカムの側壁に穴が空いていたりする地形が観察された.以上のことから,塩類風化によってわずかに強度低下した砂岩塊に形成されたハニカムは,風化の進行に伴い,窪みがより深くなり,側壁が破壊されることによってタフォニに変化していくと推察される.付記 本研究は科研費(17K18524)の助成を受けて実施された成果の一部である.