著者
原田 悠紀 青木 久
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2018年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.000213, 2018 (Released:2018-06-27)

1.はじめに 海水飛沫帯の岩石表面に形成される微地形に,タフォニやハニカム構造(以下,単にハニカムとする)がある.両者は塩類風化によって岩石表面の強度が低下した結果形成される窪みであるが,一般に,ハニカムはタフォニよりも窪みが浅く,蜂の巣状の平面形態を示す地形である.ハニカムはタフォニの生成初期の地形であると指摘する研究が存在するものの,両者の関係性を実証的かつ定量的に考察された研究はない.本研究では,海岸域に建設された砂岩塊からなる石垣表面にタフォニとハニカムがみられることに着目し,それらの分布,窪み深さ,および岩石強度を調べ,タフォニとハニカムの形成条件を明らかにすることを目的とする.さらにそれらの結果からタフォニとハニカムの関係性について考察する. 2.調査地域 千葉県銚子市海鹿島海岸は砂浜や波食棚が発達している.その波打ち際には全長約100 m,高さ約2.5 mの昭和初期に建てられた石垣が存在する.石垣は砂岩塊で積み上げられた最大7段の積み石からなっている.砂岩塊の大きさは,幅約40 ㎝,高さ約30 ㎝である. 3.調査方法 まず観察により,砂岩塊表面に見られる微地形について,窪みの有無,風化物質の有無,平面形態に基づき地形分類を行った.タフォニとハニカムのように窪んでいる地形については窪み深さを計測した.次にエコーチップやシュミットハンマーを用いて砂岩塊表面の強度計測を行った. 4.調査結果と考察砂浜背後の砂岩塊には,多くのハニカムが形成されており,波食棚背後の砂岩塊にはタフォニが卓越していた.潮間帯の砂岩塊は風化物質が付着しておらず,ほとんど窪んでいなかった.タフォニとハニカムの窪み深さを比較してみると,タフォニの方がハニカムよりも大きかった.風化していない砂岩塊(以下,未風化砂岩),タフォニ,ハニカムの岩石強度を比べてみると,岩石強度は,タフォニ<ハニカム≦未風化砂岩であった.この結果から,タフォニはハニカムに比べて,塩類風化によって強度が大きく低下した砂岩塊に形成される地形であり,ハニカムとタフォニの形成の差異は,砂岩塊表面の風化による強度低下量の違いに関係することがわかった.同一の砂岩塊においてハニカムとタフォニが共存していたり,ハニカムの側壁に穴が空いていたりする地形が観察された.以上のことから,塩類風化によってわずかに強度低下した砂岩塊に形成されたハニカムは,風化の進行に伴い,窪みがより深くなり,側壁が破壊されることによってタフォニに変化していくと推察される.付記 本研究は科研費(17K18524)の助成を受けて実施された成果の一部である.
著者
三浦 誠司 西岡 道人 野澤 慶次郎 藤田 正信 青木 久恭 和田 浩明 捨田利 外茂夫 三重野 寛治 小平 進
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.18-23, 1998-01
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

22歳,男性.主訴は入工膣からのガス・便の排出.1年10か月前に海外で膣造設術を含む性転換手術を受けている.造影および内視鏡検査では瘻孔は高位にあり,直腸膣中隔の膣側上皮は広汎に欠損していた.手術は経仙骨的アプローチで施行し,直視下に瘻孔を切除して層々に縫合閉鎖した.術後3年以上経過した現在,再発はない,本症例は腹部や大腿部に創痕が残るような術式を拒んだため,瘻孔を閉鎖できたが,膣を安全に使用できるような術式ではなかった.男性性転換手術者に発生する直腸膣瘻の治療は困難で,その理由として発生原因が人工膣の萎縮防止用ステントを長期間使用したための圧迫壊死であること,および造膣手術時に広範囲に剥離が行われていて周囲組織を瘻孔閉鎖手術時の修復に利用できないことなどがあげられている.欧米の報告では本症の発生率は低いが,観察期間が短いものが多いことから過小評価されている可能性が考えられる.
著者
青木 久
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.126, no.4, pp.413-424, 2017-08-20 (Released:2017-09-27)
参考文献数
31
被引用文献数
2 2

To investigate cliff recession processes and rates for the purpose of studying the development of horizontal shore platforms, data taken from a masonry seawall at Ashikajima located on the Choshi Peninsula coast is used. The seawall is composed of artificially cut blocks of Cretaceous sandstone, which is the same rock type as that forming shore platforms in the area. The seawall with a horizontal length of 100 m was built 90 years ago to protect reclaimed land on pre-existing shore platforms. Two sites are selected for this study: Site A without a shore platform in front of the seawall and Site B with a platform. The surfaces of sandstone blocks in the supratidal zone are depressed at both sites; Site B has a more noticeable depression. The depression depth (i.e. erosion depth) after the period of 90 years is considerably larger (more than double) at Site B than at Site A, in spite of Site A suffering direct attacks from waves, irrespective of tidal stages, while Site B experiences low-energy waves only during high tides due to the presence of the horizontal platform. Granular disintegration occurs markedly on the sandstone surface at Site B, but little occurs at Site A. This strongly suggests that salt weathering is prevalent at Site B, reducing the strength of rocks. The moisture content in sandstone blocks at Site B is lower than that at Site A, which implies that Site B is more susceptible to weathering than Site A which is always exposed to waves and tides. It would be reasonable to consider that the seawall at Site A is analogous to a cliff at the initial stage of platform development, while the seawall at Site B is similar to a cliff at its middle stage. Horizontal shore platforms start to develop due to wave action alone, but as they grow wider the importance of salt weathering increases and the combined effects of waves and weathering become crucial to platform development.
著者
青木 久
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.195-208, 2004-04-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
31

礫浜におけるカスプの形成過程を明らかにするために野外実験と室内実験を実施した.相模湾真鶴岬先端付近のポケットビーチ(礫浜)における野外実験では,既存のカスプを壊して平滑に整地した後,カスプが回復する過程を観察した.室内水槽実験では,平滑な一様勾配斜面から成る模型海浜を作り,遡上波帯の地形変化を含めて,カスプの出現・成長過程を観察した.カスプスペーシングは野外では2.2~2.5m,室内では29~35cmとなった.フルードの相似則に基づいたスケーリングによって,室内実験値を野外スケールに換算すると7.7~9.5mとなり,オーダーレベルで野外実測値と一致することがわかった.カスプ形成に関しては,野外と室内実験のいずれにおいても,不規則地形(野外では巨礫集積部,水槽内では側壁)から遡上波フロントの屈曲が起こり,カスプの形成が始まった.この遡上波フロントの屈曲とそれに同調する前浜上の凹凸地形の相互作用が,連続したカスプを形成することがわかった.
著者
青木 久美
出版者
沖縄工業高等専門学校
雑誌
独立行政法人国立高等専門学校機構沖縄工業高等専門学校紀要 (ISSN:1881722X)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.29-38, 2010-03

「逆対応」とは西田幾多郎の用語であり、絶対と相対(人間)という相対立するものが、自己否定的に対応しあう宗教的関係を表している。西田によれば、このような否定を媒介するものは絶対者の自己表現であるところの言葉であり、仏教の場合は名号がそれにあたる。では、言葉を否定し、一切が空であるとする空観においては、このような逆対応的関係は成立しないのであろうか。空の経験は、それだけでは、西田が「平常底」と呼ぶ自在的立場を意味するものではない。空の自覚による肯定的転換を経て、はじめて、人は、否定と肯定という二項対立をはなれ、執着をはなれた自在的立場に達することができる。空の哲学を築いたといわれる『中論』において、このような自在的立場に到る道は「中道」と呼ばれている。それは、空にほかならない仏陀が、慈悲による自己否定により示した道である。このような仏陀の慈悲に導かれて、人は、自らが空であるという仏陀の自覚を自覚する。そして自覚が深まるにつれて、世界はより慈悲に満ちたものとして経験されるのである。このような宗教経験は西田が「逆対応」と呼ぶものに相当する。空の経験において言葉は止滅するが、言葉がなければ仏教的真実は示されない。このような逆対応的経験において、ひとは、仏陀の慈悲を表現する世界の自己表現点となり、それを通して、仏教的真実が示されるのである。ただし、「中道」を歩む者に対して仏陀は、同時に空であるという自己矛盾的側面を露呈する。このような仏陀の自己矛盾的側面によって、「中道」を歩む者は、自己を際限なく否定し、その自覚はより深まるのである。
著者
青木 久 松倉 公憲
出版者
日本地形学連合
雑誌
地形 (ISSN:03891755)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.267-276, 2004-07-25
被引用文献数
8

We introduce the equotip hardness tester and present the relations between the Equotip rebound value (L-value) and the unconfined compressive strength (UCS) for intact rock samples. Based on existing data and the results of our laboratory tests, an equation is derived connecting UCS (MPa) and L-value obtained from single impacts, L_s, and porosity, n (%), using multiple linear regression analysis: it is found that UCS = 0.079 e^<-0.039n> L_s^<1.15>
著者
青木 久美
出版者
沖縄工業高等専門学校
雑誌
独立行政法人国立高等専門学校機構沖縄工業高等専門学校紀要 (ISSN:1881722X)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.47-59, 2008-03

『中論』においてナーガールジュナは、言語が現実をそのまま言い表すことができるという人々の考え方を批判し、言語がそこで止滅するところの空を示そうとする。ただし、彼は空という見解を主張しようとしたわけではない。テトラレンマに基づいたナーガールジュナの帰謬法的論法は、自らの主張さえをも否定する。ナーガールジュナはむしろ、二項対立的言語が陥らざるを得ないアポリアを暴露し、それによって空を示そうとするのである。言語が陥らざるを得ないアポリアとは、言語世界の裂け目であり、非言語世界への開けである。このような開けとして経験される空は、伝統的解釈でいわれるような、自性の否定ではない。空が自性の否定と解されてきたのは、自性は縁起と相容れないものであるがゆえであるが、自性がなければそもそも事物の存在すら成り立たない。自性が非言語に開けているとき、事物は自立していると同時に他に依存している。つまり、自己同一的存在として縁起によって生じうるのである。
著者
小川 和洋 庄子 哲雄 青木 久彦 藤田 範生 鳥越 泰治
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. A編 (ISSN:03875008)
巻号頁・発行日
vol.66, no.647, pp.1370-1376, 2000-07-25
被引用文献数
4 2

A two-layer plasma sprayed thermal barrier coating on Ni base superalloy substrate was characterized. The coating was comprised of an inner layer of MCrAlY bond coating and an outer layer of 8wt% yttria stabilized zirconia (YSZ) thermal barrier coating (TBC). After aging, the reaction layer at interface between YSZ and MCrAlY was observed. The reaction layer had two different contrast layers in the SEM images. One was black which was closer to MCrAlY and the other was gray which was closer to YSZ. The thickness of both layers increased with aging. Also countless porosities at the gray layer and microcrack at YSZ were observed. Most of the macrocrack grew through the porosities. From this viewpoint one may say that the mechanism of macrocrack formation is a deterioration of adhesion which was accompanied by an increase of the porosities or the microcrack.
著者
露木 基勝 大儀 和彦 今井 裕一郎 青木 久美子 山本 一彦 桐田 忠昭
出版者
Japanese Society of Oral and Maxillofacial Surgeons
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.430-434, 2007-07-20 (Released:2011-04-22)
参考文献数
31

An odontoma is an odontogenic, tumor composed of enamel, dentine, and cementum, commonly less than 30 mm in diameter. We describe a large compound odontoma arising in the left anterior region of the mandible.A 16-year-old boy was referred by an orthopedist to our hospital for evaluation of a radiopaque lesion in the left side of the mandible. Clinical examination revealed a bony-hard swelling in the left anterior region of the mandible at presentation. The left mandibular canine and lateral incisor were not erupted. Radiographic and CT examinations showed a large, circumscribed, radiopaque lesion, measuring 30×40×28mm and surrounded by a thin radiolucent area accompanied by two impacted teeth. There were many small tooth-like structures within the lesion. The clinical diagnosis was odontoma. The tumor and the impacted teeth were surgically removed by an intraoral approach under general anesthesia. The tumor was covered by a thin capsule and consisted of 321 small tooth-like structures. The histopathological diagnosis was a compound odontoma. The clinical course has been uneventful for 4 years 3 months after surgery.
著者
庄山 茂子 大谷 紗友理 窪田 惠子 青木 久恵 栃原 裕
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.339-348, 2017-04-25 (Released:2017-04-27)
参考文献数
28

大学病院に勤務する看護師20 名を対象に,通常のユニフォーム,各自好きなユニフォーム,病棟内の話し合いで決定したユニフォームを着用した場合の3 条件で職務を遂行してもらい,ユニフォームの採用条件の違いが看護師の心理やチーム医療にもたらす効果を比較した. (1)病棟内の話し合いにより決定したユニフォームを着用した場合の看護師の仕事に対するやりがい感は,通常のユニフォームを着用した場合より有意に高かった.患者や同僚への声かけ,ストレス,緊張感については,ユニフォームの採用条件の違いによる差はみられなかった. (2)チーム医療に関する評価では,ユニフォームの採用条件の違いによる差はみられなかった.しかし,病棟内の話し合いにより決定したユニフォームを着用した場合においてのみ,「目標達成と向上心」が高い看護師は,患者や同僚への声かけが多く,やりがい感が高かった.「職務協働性」が高い看護師は,同僚への声かけが多かった.
著者
庄山 茂子 青木 久恵 窪田 惠子 栃原 裕
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.172-179, 2013-02-20 (Released:2017-05-30)
参考文献数
15

異なる6スタイルの看護服を看護師,歯科衛生士に着用してもらい,患者と看護師ならびに歯科衛生士(病院群)を対象に各スタイルの印象を調査し,スタイル間の印象の違いを明らかにした.(1)6スタイルの中で,「花柄のチュニックと白のパンツスタイル」は,患者群と病院群ともに看護 服として好ましい割合が高く,「ダークレッドパープルのスクラブと白のパンツスタイル」は,両群ともに好ましくない割合が高かった.特に,病気や治療に不安のある患者ほど「好ましくない」と回答した. (2)6サンプルの印象について因子分析の結果,患者群では,「思いやり,信頼・責任,積極性,活動性」の4因子,病院群では,「思いやり,信頼・責任,活動性,洗練」の4因子が得られた. 「思いやり」は花柄のチュニックや花柄のスクラブの因子得点が高く,「信頼・責任」は白のワンピースや白のチュニックに白のパンツスタイルの得点が高かった. 看護服のスタイルや色により,印象評価が異なることから,今後看護服の採用にあたっては十分な配慮が求められる.
著者
松倉 公憲 青木 久
出版者
日本地形学連合
雑誌
地形 = Transactions, Japanese Geomorphological Union (ISSN:03891755)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.175-196, 2004-04-25
参考文献数
147
被引用文献数
11

We briefly review some problems arising in papers on the Schmidt hammer used in a geomorphological context. There are several types of Schmidt hammer, and many measurement methods including ways of collecting data have beeen proposed, but no standard method for taking measurerements has yet been established. We propose continueous (repeated) impacts for assessing the hardness of intact rock and single impact for assessing the hardness of a rock surface, including the weathering layer.
著者
青木 久美子
出版者
首都大学東京・都立大学社会学研究会
雑誌
社会学論考
巻号頁・発行日
no.32, pp.83-107, 2011-10-31

1990年代半ばから2000年代半ばにかけて, 「昭和30年代(1955~1964)」 がメディア等で頻繁に取り上げられるようになった.この「昭和30年代ブーム」において,昭和30 年代は「貧しくても夢があった時代」といった語りによって,おおむね肯定的に捉えられている.本稿は,この「昭和30年代ブーム」 が時間的経過のなかでいかに変化したかを,過去のモノや出来事をどのように取り扱うかという観点から分析するものである.分析にあたり,「断片化」, 「概念化」という分析枠組みを設定する.「断片化」は,モノや出来事を当時の文脈から切り離しそれ自体を強調して扱う態度を指す.その際,特定の側面を強調し,感情に訴えるような扱い方をここでは「キッチュ」と呼ぶ. 「概念化」は,モノや出来事のあり方をふまえて,特定の社会像を再構成する作業である.その際に当時の生活様式などが理想化され,極端な形になると今後の社会の目指すべき指針として「イデオロギー」的になることもある.「昭和30年代ブーム」における過去の扱い方は,当初,「断片化」された懐かしいモノなどへの愛着という「キッチュ」 が主流であったが,「概念化」され理想として語られるようになり,明確に「イデオロギー」的に利用するような現象も見られるようになった.そうした「イデオロギー」化においては,往々にして,モノや出来事のもつ具体性が巧妙に利用されている.
著者
森山 裕太 青木 久
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

<br><br>1.はじめに<br><br> 岩石海岸における特徴的な波食地形に波食棚がある.波食棚とは,海崖基部から海側に向かって平坦面をもち,その海側が急崖となっている地形である.波食棚の高さは,波の侵食力や岩石の抵抗力(力学的強度)などの諸要因によって規定されると報告されている.本研究では,まず静岡県須崎半島の岩石海岸に卓越する波食地形を把握する.そして恵比須島に発達する,火山角礫岩と砂岩からなる波食棚の形成高度の違いについて,岩石の抵抗力という観点から定量的に明らかにすることを目的とする.<br><br>2.調査地域の概観<br><br> 須崎半島は,静岡県下田市東部に位置する半島であり,伊豆半島ジオパーク下田エリアの一部となっている.恵比須島は,須崎半島南部の沖にある小さな島であり,須崎ジオサイトとなっている.恵比須島を調査地域として選定した理由は,(1)島の周囲には「千畳敷」と呼ばれる火山角礫岩と砂岩で構成される波食棚が発達すること,(2)それらの波食棚は近接して存在するため,作用する波の侵食力や潮汐の場所的違いが少なく,波食棚の地形と構成岩石との関係を考察しやすいと考えたためである.<br><br>3.調査方法<br><br> まず地形図の読図と現地観察に基づき,須崎半島南部に発達する波食地形を分類し,地質図を用いて,構成岩石との対応関係を調べた.次に,恵比須島に発達する波食棚を構成する火山角礫岩と砂岩の分布を調べ,地質図の作成を行った.さらに火山角礫岩と砂岩からなる波食棚に測線を設け,レーザー距離計を用いた縦断面測量を行い波食棚の形成高度を把握した.またシュミットハンマーによる岩石強度の計測を行った.<br><br>4.結果・考察<br><br> 須崎半島南部の岩石海岸は火山角礫岩,砂岩,安山岩で構成されており,波食棚の地形が卓越することがわかった.安山岩からなる海岸では,一部海食崖(プランジングクリフ)となっている海岸も存在した.<br><br>恵比須島に発達する波食棚は,火山角礫岩の波食棚のほうが砂岩の波食棚よりも高い位置に形成されていた.構成岩石の強度は火山角礫岩のほうが砂岩よりも大きな値を示した.このように力学的強度の大きい火山角礫岩の方が,砂岩に比べて波食棚の形成高度が高いという結果は,火山角礫岩の波食棚は砂岩に比べ,波によって下方に侵食されにくく,高い位置に形成されていることを示唆している.
著者
青木 久
出版者
Japanese Association of Communication Disorders
雑誌
聴能言語学研究 (ISSN:09128204)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.41-46, 2002-04-25
参考文献数
8

本報告では,我々がこれまでに開発した1つのスイッチで操作するコンピュータ使用支援機器と,現在研究を進めている重度身体障害児・者用の新しい入力手段を紹介した.新しい入力方法は,文字認識に対する皮膚電位変化をスイッチの作動信号に採用したので,スイッチを操作するためにどのような動作も必要としない方法である.4名の健常な被検者の左手掌から記録した皮膚電位には,ターゲット文字の判別時に交感神経皮膚反応(SSR)が観察された.4名の被検者における文字認識時のSSR出現率の平均値は,63%であった.SSRのような皮膚電位をスイッチ作動信号として使用することには,脳波によるBrain Computer Interfaceと比較して,記録方法や信号判別の簡便さや,利用者の特別な訓練を必要としない点などの多くの利点があることが明らかになった.しかし,実用化するには,SSRの反応潜時が長いこと,出現率が低いこと,慣れなどの問題を解決する必要があることが示唆された.
著者
三浦 誠司 西岡 道人 野澤 慶次郎 藤田 正信 青木 久恭 和田 浩明 捨田利 外茂夫 三重野 寛治 小平 進
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.18-23, 1998 (Released:2009-06-05)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

22歳,男性.主訴は入工膣からのガス・便の排出.1年10か月前に海外で膣造設術を含む性転換手術を受けている.造影および内視鏡検査では瘻孔は高位にあり,直腸膣中隔の膣側上皮は広汎に欠損していた.手術は経仙骨的アプローチで施行し,直視下に瘻孔を切除して層々に縫合閉鎖した.術後3年以上経過した現在,再発はない,本症例は腹部や大腿部に創痕が残るような術式を拒んだため,瘻孔を閉鎖できたが,膣を安全に使用できるような術式ではなかった.男性性転換手術者に発生する直腸膣瘻の治療は困難で,その理由として発生原因が人工膣の萎縮防止用ステントを長期間使用したための圧迫壊死であること,および造膣手術時に広範囲に剥離が行われていて周囲組織を瘻孔閉鎖手術時の修復に利用できないことなどがあげられている.欧米の報告では本症の発生率は低いが,観察期間が短いものが多いことから過小評価されている可能性が考えられる.
著者
青木 久 岸野 浩大 早川 裕弌 前門 晃
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

津波石とは,津波により陸上に打ち上げられた岩塊のことである.先行研究によると,宮古島や石垣島をはじめとする琉球列島南部の島々には,過去の複数の津波によって石灰岩からなる巨礫,すなわち津波石が打ち上げられていることが報告されている.本研究では,津波によって陸上に打ち上げられた津波石のうち,海崖を乗り越えて海岸段丘上に定置している津波石に焦点をあてて野外調査を行い,過去に琉球列島南部,宮古諸島と八重山諸島に襲来した津波営力の違いについて考察を行うことを目的とする.本研究では,宮古諸島に属する宮古島・下地島,八重山諸島に属する石垣島・黒島の4島を調査対象地域として選び,宮古島東平安名崎海岸,下地島西海岸,石垣島大浜・真栄里海岸,黒島南海岸において,津波石の調査が実施された.これらの海岸では琉球石灰岩からなる海崖をもつ海岸段丘が発達し,段丘上や崖の基部,サンゴ礁上に大小様々な津波石が分布する.各海岸の背後には,岩塊が供給されうる丘陵などの高台が存在しないため,段丘上の岩塊は津波によって崖を乗り越えた可能性が高いと判断し,本研究では3 m以上の長径をもつ巨礫を津波石とみなした.津波石の重量(W)と海崖の高さ(H)に関する以下のような調査・分析を行った. Wを求めるため,津波石の体積(V)と密度(ρ)の推定を行った(W=ρgV,gは重力加速度). Vは津波石の長径と中径と短径の計測および高精細地形測量(TLSおよびSfM測量)による3D解析を併用し求められた.ρは弾性波速度の計測値から推定された.Hはレーザー距離計を用いて計測された.津波石は,宮古島ではH=17 mの段丘上に14個,下地島ではH=10 mの段丘上に1個,石垣島ではH=3 mの段丘上に4個,黒島ではH=3~4 mの段丘上に6個,計25個が確認された.段丘上の津波石が津波によって崖下から運搬されたと仮定すると,W・Hは津波石の鉛直方向の移動にかかった仕事を示すことから,津波石を崖上に運搬するのに必要な津波営力(運動エネルギー)の指標となる.さらに各島のW・Hの最大値は,各島における過去最大の津波を示すと考え,それらの値を比較してみると,その大小関係は下地島≧宮古島>石垣島>黒島となった.この結果は,過去に宮古諸島に八重山諸島よりも大きな津波が襲来したことを示唆し,石垣島周辺で最も大きい津波が襲来したとされる1771年の明和津波とは異なっている.
著者
青木 久美子
出版者
首都大学東京・都立大学社会学研究会
雑誌
社会学論考
巻号頁・発行日
no.32, pp.83-107, 2011-10-31

1990年代半ばから2000年代半ばにかけて, 「昭和30年代(1955~1964)」 がメディア等で頻繁に取り上げられるようになった.この「昭和30年代ブーム」において,昭和30 年代は「貧しくても夢があった時代」といった語りによって,おおむね肯定的に捉えられている.本稿は,この「昭和30年代ブーム」 が時間的経過のなかでいかに変化したかを,過去のモノや出来事をどのように取り扱うかという観点から分析するものである.分析にあたり,「断片化」, 「概念化」という分析枠組みを設定する.「断片化」は,モノや出来事を当時の文脈から切り離しそれ自体を強調して扱う態度を指す.その際,特定の側面を強調し,感情に訴えるような扱い方をここでは「キッチュ」と呼ぶ. 「概念化」は,モノや出来事のあり方をふまえて,特定の社会像を再構成する作業である.その際に当時の生活様式などが理想化され,極端な形になると今後の社会の目指すべき指針として「イデオロギー」的になることもある.「昭和30年代ブーム」における過去の扱い方は,当初,「断片化」された懐かしいモノなどへの愛着という「キッチュ」 が主流であったが,「概念化」され理想として語られるようになり,明確に「イデオロギー」的に利用するような現象も見られるようになった.そうした「イデオロギー」化においては,往々にして,モノや出来事のもつ具体性が巧妙に利用されている.The purpose of this paper is to analyze how "thebooms of the Showa 30s" has changed. "The Showa 30s(1955-64)" has received media attention since the mid 1990s. Themedia considers the era positively as it was special era whenpeople could have dreams despite their poverty; In this paper, Ifocus on the changes in the ways to treat things and events in thepast.For analyzing these changes , I use two categories;fragmentation and conceptualization ."Fragmentation" is definedas the attitude of someone in which they try to emphasize somecertain things and events in the past by taking them up from theoriginal contexts. "Kitsch" is used here to explain the way inwhich an emotional attachment is put on the things and the eventsin the past." Conceptualization" is defined as to rearrange oldthings and events in order to reconstruct specific past images. Theway of life in the past is often idealized , and it becomes"ideological as it is politically treated as a new guideline for thefuture.I would argue that the way of treating things and events inthe past has changed as follows; firstly ," kitsch" was themainstream of the boom, as it only aroused nostalgias through"fragmented" things and events , secondly the particular images ofthat era was "conceptualized" as ideal , and finally , it was used as"ideology". The case of "the booms of the Showa 30s" shows theprocess of constructing our pasts.