著者
原田 杏子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.54-64, 2003-03-30
被引用文献数
7

本研究の目的は,一般の人々による日常的な相談・援助場面の会話に注目し,「人はどのように他者の悩みをきくのか」を明らかにすることである。会話データから帰納的な分析を行うため,質的研究法の1つであるグラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた。データ収集においては,大学生の同年代・同性ペアによる実験的な相談・援助場面の会話を録音した。データ分析においては,<概念のラベル付け>から<最終的なカテゴリーの選択>へと至る4つの段階を経て,データからカテゴリーを生成した。その結果,他者の悩みをきく際の発言として,【推測・理解・確認】【肯定・受容】【情報探索】【自己及び周辺の開示】【違う視点の提示】【問題解決に向けた発言】という6つのカテゴリーが抽出された。生成されたカテゴリーを先行研究と比較すると,悩みのきき手が自分の体験を開示したり,問題を受容するよう促したりするところに,臨床面接や援助技法とは異なった日常的な相談・援助のあり方が見出された。これらのカテゴリーは,データに基づいた暫定的なものではあるが,今まで研究対象として見過ごされてきた日常的な相談・援助に実態像を与えるものとなった。
著者
原田 杏子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.344-355, 2004-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

本研究の目的は, 法律相談を題材として,「専門的相談がどのように遂行されるのか」を, 実践現場からのデータに基づいて明らかにすることである。データ収集においては, 弁護士及び相談者 (クライエント) の同意を得て, 12件の法律相談場面の会話を録音した。データ分析においては, 質的研究法の1つであるグラウンデッド・セオリー・アプローチを用い, 分析の途中段階で法律家によるメンバー・チェックを受けた。分析の結果, 15の弁護士発言カテゴリーが見出され, それらはさらに【I問題共有】【II共鳴】【III判断伝達】【IV説得・対抗】【V理解促進】【VI終了】という6つの上位カテゴリーにまとめられた。分析結果からみるに, 専門的相談は, 問題をめぐる様々な情報を相談者との間で共有し, 専門的立場から判断を伝えることを中心として遂行される。加えて, かかわりの基本的態度としての共鳴, 相談者の不適切な解決目標や思い込みに対する対抗, 相談者の理解を促進する働きかけ, 相談の終了を導く働きかけなどが見出された。法律相談の実践現場から導かれた本研究のカテゴリーは, 既存の援助モデルで十分扱われていない専門的相談の特徴を明らかにしている。
著者
原田 杏子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.344-355, 2004-09

本研究の目的は, 法律相談を題材として, 「専門的相談がどのように遂行されるのか」を, 実践現場からのデータに基づいて明らかにすることである。データ収集においては, 弁護士及び相談者(クライエント)の同意を得て, 12件の法律相談場面の会話を録音した。データ分析においては, 質的研究法の1つであるグラウンデッド・セオリー・アプローチを用い, 分析の途中段階で法律家によるメンバー・チェックを受けた。分析の結果, 15の弁護士発言カテゴリーが見出され, それらはさらに【I問題共有】【II共鳴】【III判断伝達】【IV説得・対抗】【V理解促進】【VI終了】という6つの上位カテゴリーにまとめられた。分析結果からみるに, 専門的相談は, 問題をめぐる様々な情報を相談者との間で共有し, 専門的立場から判断を伝えることを中心として遂行される。加えて, かかわりの基本的態度としての共鳴, 相談者の不適切な解決目標や思い込みに対する対抗, 相談者の理解を促進する働きかけ, 相談の終了を導く働きかけなどが見出された。法律相談の実践現場から導かれた本研究のカテゴリーは, 既存の援助モデルで十分扱われていない専門的相談の特徴を明らかにしている。
著者
原田 杏子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.54-64, 2003-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
17
被引用文献数
2 1

本研究の目的は, 一般の人々による日常的な相談・援助場面の会話に注目し,「人はどのように他者の悩みをきくのか」を明らかにすることである。会話データから帰納的な分析を行うため, 質的研究法の 1つであるグラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた。データ収集においては, 大学生の同年代・同性ペアによる実験的な相談・援助場面の会話を録音した。データ分析においては, 〈概念のラベル付け〉から〈最終的なカテゴリーの選択〉へと至る4つの段階を経て, データからカテゴリーを生成した。その結果, 他者の悩みをきく際の発言として,【推測・理解・確認】【肯定・受容】【情報探索】【自己及び周辺の開示】【違う視点の提示】【問題解決に向けた発言】という6つのカテゴリーが抽出された。生成されたカテゴリーを先行研究と比較すると, 悩みのきき手が自分の体験を開示したり, 問題を受容するよう促したりするところに, 臨床面接や援助技法とは異なった日常的な相談・援助のあり方が見出された。これらのカテゴリーは, データに基づいた暫定的なものではあるが, 今まで研究対象として見過ごされてきた日常的な相談・援助に実態像を与えるものとなった。