著者
千明 政好 片貝 智恵 原田 竜三 濱元 淳子 山勢 博彰
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.23-30, 2013 (Released:2017-04-05)
参考文献数
17
被引用文献数
2

本研究は、救急看護の基礎教育や現場教育および専門教育に生かすことを目的に、多くの看護技術や能力の質問紙調査から重要な項目を抽出することで、「ここ1~2年救急看護の現場で重要性が高まっていると思われる技術・能力」および、「救急看護に携わる救急看護師に現在不足している(今後強化したい)技術・能力」を具体的に明らかにすることである。 全国の500床以上の救急科標榜病院200施設の救急看護経験が3年目以上の看護師400名に、独自作成した質問紙調査をした。その結果、ここ1~2年救急看護の現場で重要性が高まっていると思われる技術・能力は、「JNTECの実践」 、「災害時のトリアージ能力」 、 「災害や外傷者のストレスマネージメント能力」の順に重要と認識しており上位は「救急関連技術」であった。救急看護に携わる看護師に現在不足している(今後強化したい)技術・能力では、 「災害や外傷者のストレスマネージメント能力」 、 「災害時のトリアージ能力」、「インフォームドコンセントを確実に実施する脳死患者・家族」、「災害訓練時のリーダーシップ」、「フィジカルアセスメント能力がある」であった。災害看護関連や救急看護関連の技術や能力ばかりではなく、フィジカルアセスメント、家族ケアなどの技術・能力が不足していると認識していた。
著者
原田 竜三
出版者
北里大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、救命救急センターに搬送され、治療の甲斐無く、亡くなられた患者の家族への看護について、看護師がどのような援助をしていく必要があるのかを探求する目的で行った。国内、国外の文献を幅広くレビューし、どのような実態があるのかを調査した。その結果、欧米における研究では、突然死患者の家族に対する死別後の遺族に対するケアや研究がされ、救命救急センターでの看護援助が遺族の悲嘆に影響を及ぼすことが明らかにされていた。家族が救命救急センターに入室した時点から家族との関わりを持ち、蘇生場面に立ち会い、死亡確認がされ、救命救急センターから退室するまでの一連の流れの中での具体は的な方法が示されていた。患者に行われている治療の情報を提供する。蘇生に立ち会わせる。家族に寄り添い、家族の抱く感情を受け止め、悲嘆の感情を表出させる。また、患者の身体をきれいにし、清潔なリネンで覆い患者の身体に触れてもらうことも悲嘆の援助となっている。さらには、死別後のケアや地域のサポートグループの紹介などが含まれていた。突然死の死別後の遺裂ケアの必要性を探求するため、突然死別後の遺族の悲嘆について、死別後から1年を経過した2名の遺族から身体の不調はなく、故人のいない生活に慣れてきていることが語られた。また、四十九日までの間は、身体的な不調があったこと、故人のいない生活に混乱をきたしたことも語られた。周囲からのサポートが悲嘆プロセスを促進していることが考えられ、研究対者が少ないことから、さらに救命救急センターにおいて研究依頼を試みたが、倫理的な問題から協力が得られなかった。我が国の救命救急センターにおいては、近年、精神科医の協力を得て、死別後の家族のケアが行われ始めているとの報告が見られている。救命救急センターにおいて、家族は突然の状況により医師の説明を十分に理解することができないことから、行われた治療に対する説明を聞く機会を作る必要があると考える。また、救命救急センターにおける看護師が、突然死を体験する家族における援助において、時間的な制約や信頼関係の確立などから難しいという認識を持っているとの報告がある。そのことから、今後、救命救急センターの看護師が家族に関わるための知識やスキルをどのように獲得していけばよいのかについて検討していく必要がある。