著者
原田 貴弘 宮原 隆 中嶋 直敏 栗原 和枝
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.792-799, 2002-12-25 (Released:2010-03-15)
参考文献数
30

チミン (T) およびアデニン (A) を末端に有する両親媒性分子を用いて, 雲母基板上に核酸塩基を表面に有する単分子膜を調製した. 水溶液中 (pH4~10) において, 調製した核酸塩基表面間に作用する力を, 表面力装置 (SFA) を用いて, 表面間距離の関数として測定した. (i) T-TおよびA-A表面間では, 核酸塩基の酸解離を反映して, それぞれ, pH7以上またはpH4以下において電気二重層斥力が観察された. また, A-Aの場合, pH8以上でも斥力となり, 水酸化物イオンの吸着による電気二重層斥力と考えている. それ以外のpH領域では, 90nmに及ぶ長距離引力が作用した. これは主に核酸塩基の疎水性による引力と考えられる. (ii) 相補的なT-A表面間においては, pH4~10の領域においてつねに長距離から引力が観察され, 特に純水中においては, 60nmの長距離から引力が観察された. 生理的pH条件下において, 相補的な核酸塩基間にpKaと疎水性の最適化が起こっていると考えられる. (iii) 接着力は, T-A表面間でもっとも強く, 特に中性のpH領域で接着力は極大となった. この事実は, 生理的pH条件下で, 相補的な核酸塩基対がもっとも効果的にその分子認識能を発現していることを示している.