著者
原賀 裕 室町 幸一郎 武藤 徳子 鈴木 二郎 下島 かおり 藤巻 龍治 宇都宮 舞衣 木庭 大槻 許 多 石井 信之
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.280-286, 2020 (Released:2020-08-31)
参考文献数
26

目的 : 本研究は, 唾液性状とアレルギー性鼻炎との相関関係を明らかにすることによって, マウスガード (MG) 装着によるアレルギー性鼻炎に対する治療法を確立させることを目的とした. 実験にはスギ花粉症 (Seasonal allergic rhinitis : 以後, SAR) 患者に対して, MG装着前後の唾液性状を健常者と比較解析した. 方法 : スギ花粉飛散季節に神奈川歯科大学に来院したSAR患者24名, 健常者7名を被験者とした. 被験者はMG装着前後におけるアレルギー性鼻炎症状 (3TNSS), 唾液分泌量を測定し, 唾液性状を多項目唾液検査で解析した. 唾液性状は, う蝕原生菌, pH値, 酸緩衝能, 潜血濃度, 白血球数相対値, タンパク質濃度, アンモニア産生量の7項目を測定した. 結果 : MGを装着したSAR患者において3TNSSスコアは有意に減少し (p<0.05), 症状改善が認められた. SAR患者の安静時唾液分泌量は健常者と比較して低値を示していたが, MG装着後のSAR患者唾液分泌量は有意に増加した. SAR患者の多項目唾液検査は健常者と比較して, う蝕原生菌, 酸緩衝能, アンモニア産生量で有意に高値を示したが, pH, 潜血, 白血球数, タンパク質濃度で有意に低値を示した (p<0.05). SAR患者はMG装着後に潜血が減少したが, ほかの検査項目は変化しなかった. 結論 : SAR患者はMG装着によってアレルギー症状の改善が認められた. 症状改善には唾液分泌量が関与し, 唾液性状の影響はほとんど認められなかった.