著者
石井 信之 伊藤 寿樹 武藤 徳子 室町 幸一郎
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究目的は、MG使用によるSAR症状改善効果を分析し、SAR症状発症における唾液の役割を明らかにすることであった。MG装着前およびMG装着後の唾液流速を分析し、唾液中のIgAおよびIgG4の量を測定した。 MG装着によるアレルギー性鼻炎症状と唾液各因子の相関関係を評価した。唾液中IgA濃度はSAR患者で有意に減少。 SAR症状はMG装着により有意に改善された。唾液流量および単位時間当たりのIgA総量は、MGの使用と共に有意に増加したが、IgG4総量は変化しなかった。MG装着は、単位時間当たりのIgA総量を増加させることによってSARのアレルギー性鼻炎症状を改善することが明らかにされた。
著者
石井 信之 浜田 信城 渡辺 清子
出版者
一般社団法人 日本歯内療法学会
雑誌
日本歯内療法学会雑誌 (ISSN:13478672)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.26-29, 2008 (Released:2017-12-30)
参考文献数
10

Abstract : Hypochlorous acid is a weak acid with the chemical formula HClO. It forms when chlorine dissolves in water. HClO is an acid involving a polyatomic ion. HClO is used as a bleach, oxidizer, deodorant, and disinfectant. CampherTM contains 80% HClO and is used as a food disinfectant, deodorant, air cleaner, and in instrument and package cleaner systems. The purpose of this study was to examine the efficacy of CampherTM as a root canal irrigant in endodontics. Both pH 6.5 and pH 7.0 CampherTM were examined for bactericidal effect and cytotoxicity. Obligative anaerobic bacteria were completely inhibited by applying CampherTM for 1 minute, and facultative bacteria was inhibited 10−2~10−3 by CampherTM for 1 minute in bactericidal effect. The growth of oral epithelial cells was not affected by CampherTM for 48 hours. Both bactericidal effect and cytotoxicity did not vary with the different pH of CampherTM. These results suggested that CampherTM has a bactericidal effect and no cytotoxicity, and could be useful as a root canal irrigant.
著者
原賀 裕 室町 幸一郎 武藤 徳子 鈴木 二郎 下島 かおり 藤巻 龍治 宇都宮 舞衣 木庭 大槻 許 多 石井 信之
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.280-286, 2020 (Released:2020-08-31)
参考文献数
26

目的 : 本研究は, 唾液性状とアレルギー性鼻炎との相関関係を明らかにすることによって, マウスガード (MG) 装着によるアレルギー性鼻炎に対する治療法を確立させることを目的とした. 実験にはスギ花粉症 (Seasonal allergic rhinitis : 以後, SAR) 患者に対して, MG装着前後の唾液性状を健常者と比較解析した. 方法 : スギ花粉飛散季節に神奈川歯科大学に来院したSAR患者24名, 健常者7名を被験者とした. 被験者はMG装着前後におけるアレルギー性鼻炎症状 (3TNSS), 唾液分泌量を測定し, 唾液性状を多項目唾液検査で解析した. 唾液性状は, う蝕原生菌, pH値, 酸緩衝能, 潜血濃度, 白血球数相対値, タンパク質濃度, アンモニア産生量の7項目を測定した. 結果 : MGを装着したSAR患者において3TNSSスコアは有意に減少し (p<0.05), 症状改善が認められた. SAR患者の安静時唾液分泌量は健常者と比較して低値を示していたが, MG装着後のSAR患者唾液分泌量は有意に増加した. SAR患者の多項目唾液検査は健常者と比較して, う蝕原生菌, 酸緩衝能, アンモニア産生量で有意に高値を示したが, pH, 潜血, 白血球数, タンパク質濃度で有意に低値を示した (p<0.05). SAR患者はMG装着後に潜血が減少したが, ほかの検査項目は変化しなかった. 結論 : SAR患者はMG装着によってアレルギー症状の改善が認められた. 症状改善には唾液分泌量が関与し, 唾液性状の影響はほとんど認められなかった.
著者
石井 信之 木庭 大槻 許 多 佐藤 イテヒョン 清水 千晶 田中 俊 林田 優太郎 菅原 美咲 水野 潤造 武藤 徳子 鈴木 二郎 室町 幸一郎 下島 かおり 藤巻 龍治 宇都宮 舞衣 山田 寛子
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.38-43, 2020

<p> 目的 : 現在では, 歯科用実体顕微鏡や拡大鏡を使用した拡大視野下の長時間にわたる精密歯科診療が求められ, 歯科医師や歯科衛生士の正確な手技への支援や肉体的負担を軽減できる歯科診療支援システムの開発が必要とされている. 本研究は歯科診療アシストスーツを開発することで, 歯科診療の精密性向上, 診療成功率の向上, および歯科医師や歯科衛生士の肉体的負担軽減を目的とする.</p><p> 材料と方法 : 歯科診療アシストスーツの上腕負担軽減効果を解析するために, 表面筋電図による解析と定量評価機能を有した臨床シミュレーション装置を使用した臼歯部窩洞形成を実施した.</p><p> 結果 : 歯科診療アシストスーツを作動することで, 上腕二頭筋および上腕三頭筋の平均振幅値はいずれも有意に減少し, 上腕の負担軽減効果が認められた. 臼歯部窩洞形成の客観的総合評価は, 歯科診療アシストスーツ作動前と比較して作動後に有意な高得点を示した.</p><p> 結論 : 本研究で開発した歯科診療アシストスーツは, 上腕二頭筋と上腕三頭筋の緊張を軽減することによって, 診療精度の向上と長時間診療における術者の負担軽減を可能にする装置であることが示された.</p>
著者
望月 仁志 中里 雅光 塩見 一剛 十枝内 厚次 石井 信之
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

慢性砒素中毒は多臓器にまたがる障害を生じ、近年多くの国において健康被害の脅威となっている。宮崎県土呂久地区では、1920年から1962年に高濃度慢性砒素中毒患者が生じた 。住民検診において、多くは温痛覚性末梢神経障害を呈し、重症例では深部感覚障害を併発した。体性感覚誘発電位では重症例において中枢伝導時間の遅延が認められた。低濃度の飲料水砒素汚染が広がっているミャンマー国における住民検診にて、神経学的評価を実施した。50ug/Lを越えた飲料水摂取群では振動覚性末梢神経障害と中枢神経障害を呈した。これらの結果は、初めての知見であり、世界に数千万人と言われる砒素中毒患者の診療に重要な情報となる。
著者
天川 丹 林 都美香 石井 信之
出版者
The Japanese Society of Conservative Dentistry
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.381-390, 2015

目的 : 垂直歯根破折歯の保存治療はきわめて困難で, 歯科医療において最も解決すべき問題と考えられている. 垂直歯根破折の早期診断が可能になることで, 長期に経過する歯内療法や感染による広範囲な歯槽骨吸収を回避することが可能である. 本研究は, 根管充塡後の垂直歯根破折歯を対象として歯根破折と臨床所見の相関関係を解析し, 歯根破折の早期診断法確立と破折を防止することを目的とした. <br> 材料と方法 : 八ケ岳歯科に来院した患者420名 (27~84歳), 459症例の垂直歯根破折歯を対象とした. 対象歯は根管充塡後の定期検診時に歯根破折と診断され, 臨床症状, エックス線所見, 支台築造形態と性状を臨床的に精査して歯根破折との関連性を調査した. なお, 歯根破折の確定診断は歯科用実体顕微鏡所見と外科治療時の直接観察で行った. <br> 結果 : 歯根破折は50歳代に最も好発し, 歯種別では下顎大臼歯が最も多かった. 歯根破折歯は打診反応が共通して認められた. 歯根破折の特徴的エックス線所見 (Perilateral radiolucency, "Halo" radiolucency) は全体の20%を示したが, ほかの症例は歯周病変および根尖病変との鑑別診断を必要とした. 歯科用実体顕微鏡による確定診断は有用であった. 歯根破折歯の80%は, 歯冠部限局のコアおよび根管長1/4以下のポストコア症例であった. <br> 結論 : 歯根破折の早期診断には定期検診による打診反応と規格エックス線所見が有用であり, 確定診断には歯科用実体顕微鏡所見がきわめて有用であった. 根管充塡後の垂直歯根破折防止には, 根管長1/2以上のポストコアが有用であることが示唆された.