著者
権 順度 田中 基明 去来 川覚三
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.7, pp.1314-1319, 1973-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
7
被引用文献数
2

2-位にカルボニル基を有するセリジン類,すなわち2-ホルミルピリジン,2-アセチルピリジンおよび2-ベンゾィルピリジンを2-ヒドラジノベンゾチァゾールといろいろの条件下で反応させ,相当するヒドラゾン類を得た。このときに得られるZ-およびE-異性体をカラムクロマトグラフィーにより分離し,それらの分光学的性質を検討した。さらに,Z-およびE-異性体間の異性化反応について調べた。Z-異性体は分子内で六員環水素結合を形成するためNMRスペクトルではNHプロトンおよびピリジン環の6-位のプトンがE-異性体にくらべて低磁場シフトし, IRスペクトルではz,o :N吸収がE-異性体にくらべて低波数側に現われた。さらに,UVスペクトルではZ-異性体の極大吸収がE-異性体にくらべて長波長側にシフトした。得られたヒドラゾン類のうち,2-アセチルピリジン=2-ベソゾチァゾリルヒドラゾン[5]をキシレン中で加熱還流して,Z-およびE-異性体の挙動を調べた。その結果,[5z]a[5 E]の平衡は[5 z][5 E]÷3/7(wt%)の割合で一定値になることが明らかとなった。また[5E]はいくつかの有機溶媒中(2x10-5 molll),温度25ccでタングステンランプを照射すると容易にZ-異性体に異性化した。その異性化の速さは溶媒によって異なり,その速さの順序はEtOH>CH3CN>cyclo-C6H,2であった。