著者
八十島 誠 友野 卓哉 醍醐 ふみ 嶽盛 公昭 井原 賢 本多 了 端 昭彦 田中 宏明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.77, no.7, pp.III_179-III_190, 2021 (Released:2022-03-10)
参考文献数
37

本研究では,感染者の排泄物に由来する陽性反応の利用が容易な個別施設を対象に,トイレ排水を排除するマンホールでの下水疫学調査でSARS-CoV-2の回収・検出を通じて感染者の早期発見を目的としたパッシブサンプラー(PoP-CoVサンプラー)を開発し,有効性を検証した.SARS-CoV-2中等症感染者が入院する病院施設と軽症者等宿泊療養施設での検証実験の結果,PoP-CoVサンプラーにはSARS-CoV-2が残存しており,マンホール調査での有効性が確認された.またPoP-CoVサンプラーでのCt値はグラブサンプルより最大7.0低かった.本法の社会実装を想定し,111名が勤務する事業場施設で調査を行ったところ,下水から陽性反応が得られた.陽性反応の原因として無症候性感染者からの排泄は否定出来ないものの,下水疫学によって1名の症候性感染者を陽性確定日の4~5日前に発見できる可能性が示唆された.