著者
古宮 伸洋
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.47-52, 2016-06-25 (Released:2017-05-09)
参考文献数
21

西アフリカで甚大な被害をもたらしたエボラウイルス病(Ebola Virus Disease: EVD)流行は対策強化の成果として現在のところほぼ終息している. EVDに関する新たな知見が多く得られた一方で,不明な部分も多く残されている.エボラウイルスが患者体内に長期間存在し感染源になりうることが示されたがその機序は不明である.治療においては画期的な治療方法はなく,古典的な支持療法が基本となることに変わりはない.新しく開発されたワクチンは曝露後接種であっても高い有効性を示した.検査では迅速診断キットの開発が進められている. 現地では「患者発生ゼロの継続」を目標として,患者発生時の早期探知及び対応,医療施設における基本的な感染対策の強化が進められている.落ち着いた状況になりつつあるが,エボラ生還者(Ebola survivor)が偏見や後遺症に悩まされている状況は続いている. 流行によって医療,経済や教育に至るまで社会全体がダメージを受けており,流行再燃のリスクも依然として存在している.保健医療システムを包括的に強固にすることがEVDを含めた様々な感染症の流行への備えとして望まれる.