著者
大曲 貴夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.11, pp.2355-2360, 2021-11-10 (Released:2022-11-10)
参考文献数
21

SARS-CoV-2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)による感染では他のウイルス感染症と同様にまずは自然免疫が応答するが,I型インターフェロン応答が阻害されるために一部の患者では感染が抑制されずに進行し,NLRP3インフラマソームの活性化が持続する.そこに獲得免疫系の応答が強く起こり,さらにI型インターフェロン応答が遅発性に強く起こるために重症化すると考えられている.
著者
森岡 慎一郎 桑江 芙美子 大曲 貴夫
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.201-209, 2017-07-25 (Released:2017-09-05)
参考文献数
35
被引用文献数
2

これまでに本邦の療養病床を有する病院での薬剤耐性菌の疫学的検討や感染症診療への介入に関する報告はない.今回,療養病床を有する病院における薬剤耐性菌の現状を報告し,感染症診療への介入による診療の質の推移を評価した.介入内容は,グラム染色検査を活用した院内コンサルテーション,勉強会を通じた集団教育等であり,介入前(2015年4月~9月)と介入後(2016年4月~9月)の抗菌薬使用量,主な微生物の薬剤耐性率,血液培養採取状況等を後方視的に比較検討した.介入前後でcefmetazoleの抗菌薬使用密度は2.2倍に増加,meropenemのそれは30%減少,levofloxacinのそれは46%減少した.大腸菌のキノロン耐性率,大腸菌におけるESBL産生菌の割合は,それぞれ介入前後で71%から65%,68%から68%に推移した.新入院1000人当たりの血液培養採取セット数は,介入前後で281と859であった.当院では大腸菌におけるESBL産生大腸菌の分離頻度が68%と極めて高く,高度に蔓延していた.また,広域抗菌薬使用量が減少したのは,医師数が少なく勉強会で全医師に効率のよい情報共有が可能であったことが原因として挙げられる.加えて,担当医師が自らグラム染色検査を行い原因微生物を推定したことで初療時から狭域抗菌薬が選択された可能性がある.
著者
大曲 貴夫
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.51-58, 2022-04-28 (Released:2022-05-26)
参考文献数
11

感染症発生時には疫学的・臨床的対応の観点から臨床情報の収集が必要である。2009年の新型インフルエンザ発生時の英国のthe first few hundred(FF100)研究や,COVID-19発生時の武漢からの99例報告は世界中の多くの論文で引用された。これらの事実は,新興感染症発生早期の臨床情報が極めて貴重であり,世界中で速やかに共有されるべきことを示している。COVID-19の流行初期には,日本においてはこのような臨床情報の迅速な収集と共有が上手く行かず,患者からの検体を研究機関や企業への提供が遅れた。これらは本邦でのCOVID-19対応における公衆衛生対策,臨床上の対応,そして研究開発の観点で大きな足枷となった。今後は感染症指定医療機関の研究能力の強化,研究環境の改善,特に電子カルテ等の病院内情報システムの情報の積極的疫学調査,戦略的な知見の共有体制の構築,日本発の医学誌を介した情報発信,行政検査だけではなく医療機関・研究機関・民間での微生物の検出体制およびゲノム解析の体制を充実させるなどの対策が必要である。
著者
大野 茜子 日馬 由貴 佐藤 匡博 小泉 龍士 岩元 典子 大曲 貴夫
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.25-30, 2022-03-20 (Released:2022-03-23)
参考文献数
14

目的:診療所における抗菌薬適正使用の推進に向けて,抗菌薬処方状況を処方医自らがモニタリングできるシステムの開発を計画中である.本研究は,システムの実現性,妥当性の調査を目的とした.方法:6つの診療所のレセプトコンピュータ内に格納されている傷病名と処方薬のデータを出力後,個人情報を匿名化した.急性気道感染症と急性下痢症に対する抗菌薬処方を集計,データ整理した後,報告書を作成し,診療所が閲覧できるようにした.結果:対象の6つの診療所全てで,匿名化したデータを取得できた.また,傷病名と処方を連結させたデータの抽出や,処方薬の集計を行うことができた.結論:診療所における,抗菌薬処方モニタリングによる抗菌薬適正使用支援確立の可能性を見出し,本システム実現化を見通すことができた.一方,傷病名の付け方は多様であり,抽出する傷病名の定義づけに関しては,さらなる調査・検討が必要と考えられた.
著者
具 芳明 藤友 結実子 添田 博 中浜 力 長谷川 直樹 前﨑 繁文 前田 真之 松本 哲哉 宮入 烈 大曲 貴夫
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.289-297, 2019-05-20 (Released:2019-12-15)
参考文献数
32

背景:日本では抗菌薬の多くが診療所で処方されているが,その現状や医師の意識はあまり知られていない. 目的:診療所医師の抗菌薬適正使用の現状や意識について調査する.デザイン:診療所医師を対象としたアンケート調査.方法:日本全国の診療所から無作為抽出した1,500診療所に医師を対象とするアンケートを送付した.結果:回収数274回収率18.3%)のうち調査に同意した269通を集計の対象とした.アクションプランや抗微生物薬適正使用の手引きの認知度は低かったが,抗菌薬適正使用についての認識や意識は高かった.感冒や急性気管支炎に抗菌薬を処方している医師が一定数おり,最も処方されているのはマクロライド系抗菌薬であった.処方の背景には医師の知識だけでなく医師患者関係など複雑な要因があることが示唆された.結論:診療所医師の知識向上に加え,医師患者間のコミュニケーション改善などさまざまな手法で外来での抗菌薬適正使用を推進していく必要がある.

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著者
大曲 貴夫
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.331-338, 2016

<p>2012年以降中東では中東呼吸器症候群 (MERS) が発生し,第2のSARSとなる可能性が懸念されている。2015年には韓国でもアウトブレイクが発生し,WHOも介入する世界的な問題となった。本疾患が拡散した一つの要因として,特にサウジアラビアを中心に医療関連感染として患者および医療従事者間で流行したことがあげられている。そればかりでなく,中東で曝露した者が飛行機を用いて欧州,北米などに移動し,同地で発症する等の事態も起こっている。加えてラクダがMERSコロナウイルスを保有していることが明らかになってきており,ラクダの国境を越えた売買による本ウイルスを有するラクダの移動なども感染の伝播の観点から注目されている。</p><p>H5N1鳥インフルエンザAは1998年に最初の感染例が香港で報告されたが,2003年から再び東南アジアを中心に発生している。H5N1インフルエンザの出現は,感染症に対する世界的な危機意識を高めた。なぜならば本疾患の流行は,将来くるであろうインフルエンザのパンデミックへの懸念を呼んだからである。また現在では中華人民共和国を中心にH7N9鳥インフルエンザがみられている。本疾患は2013年2月に発生し,同年夏に収まったかに思えたが,同年秋以降再度患者が発生し発生国も中国以外に広がっている。</p>