著者
下島 昌幸 福士 秀悦 谷 英樹 吉河 智城 森川 茂 西條 政幸
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.7-12, 2013-06-25 (Released:2014-04-26)
参考文献数
25
被引用文献数
1 11 1

重症熱性血小板減少症候群は新種のブニヤウイルス(重症熱性血小板減少症候群ウイルス)による感染症で,致死率は約12%,主にマダニによって媒介される.これまで中国でのみ報告があったが,国内で昨年秋に亡くなられた方が本疾患に罹患していたことが判明した.後方視的調査の結果,これまでに計8名の方が罹患し内5名の方が亡くなられていたことが明らかとなった.いずれも国内で感染しており,病原体は以前から国内に存在していたと考えられる.
著者
下島 昌幸
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

ヒトに病原性があるISKウイルスと病原性がないと考えられるSTBウイルスについて、本研究ではその病原性の発現機序と、更に2ウイルス間にある増殖性や病原性の相違の機序を明らかにすることを主目的とする。ISKウイルスおよびSTBウイルスを含めKeterah orthonairovirusの生物学的あるいはウイルス学的解析に取り組んでいる研究者は国内外を通し我々のグループのみであり、本研究なくしてはKeterah orthonairovirusの学術研究は進まない。
著者
下島 昌幸
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

フィロウイルス(エボラウイルスおよびマールブルグウイルス)の感染は、本ウイルスの細胞侵入を担う表面糖蛋白質GP蛋白質をエンベロープとしたシュードタイプウイルスを代替として用いた。シュードタイプウイルスのゲノムにはレポーターとして蛍光蛋白質(もしくは細胞膜蛋白質)の遺伝子が組み込まれているので感染の検出は容易である。フィロウイルスが感染しにくいとされるJurkat細胞にヒト肝臓cDNA libraryを発現させ、上記のシュードタイプウイルスの感染性が上昇するようなcDNAの探索を行った。エボラウイルス・マールブルグウイルスのどちらのGP蛋白質を用いた場合もカルシウム依存性レクチンのLSECtinという分子を感染性を上昇させる分子として同定した。cDNA libraryを発現させる細胞としてK562細胞(やはりフィロウイルスが感染しにくい)を用いた場合も同じであった。LSECtin分子は主に肝臓やリンパ節の類洞内皮細胞に発現しているが、フィロウイルスはマクロファージや肝細胞を含めた様々な細胞に感染するため、本ウイルスは感染標的によって異なる分子を侵入に用いていると考えられた。次にヒト由来細胞株(HeLa細胞・HT1080細胞)でマウスを免疫し、上記シュードタイプウイルスの感染阻止を指標としてハイブリドーマをスクリーニングしたが、感染を阻止するような抗体は得られなかった。18年度の結果も含め、フィロウイルスの感染に関わりうる分子としてTyro3ファミリー・C型レクチンがあることが分かったが、これら以外にも未同定の分子があることも分かった。GP蛋白質による免疫沈降など、他の実験方法も用いる必要性があると考えられた。
著者
堀本 泰介 五藤 秀男 高田 礼人 安田 二郎 下島 昌幸 高田 礼人 安田 二郎 下島 昌幸
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

人畜共通新興再興感染症は人類の脅威である。特に、H5N1 高病原性鳥インフルエンザの世界的な蔓延とヒトへの感染は、インフルエンザの新たな世界的大流行(パンデミック) を危惧させている。本研究では、こういった世界情勢を鑑み、H5N1 ワクチン開発のための基礎研究を実施した。その結果、不活化ワクチン製造のためのシードウイルスの発育鶏卵ならびにMDCK 細胞における増殖基盤を明らかにし、その知見をもとに高増殖性シードウイルスの作出に成功した。本成果は、今後のインフルエンザワクチン開発におおいに貢献することが期待される。
著者
下島 昌幸
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

低温馴化株をベースにした組換えインフルエンザウイルスの作製HA分節にVSV-G遺伝子、NA分節にVenus遺伝子を持ち、残り6分節を低温馴化ウイルス由来のものとしたインフルエンザウイルスの作製をリバースジェネティクス法で試みたが、増殖するウイルスは得られなかった。そこで、低温馴化ウイルス由来ではないWSN株由来の分節と様々な組み合わせを作り検討したところ、少なくともMおよびPB2分節はWSN株由来でないと33℃で増殖するウイルスが得られないことが判明した。残り4分節をすべて低温馴化ウイルス由来にすることはできなかったが、幾つかの分節が低温馴化株由来で33℃において増殖するウイルスが5種類(5つの組み合わせ)得られた。増殖可能な組換えウイルスの低温馴化得られた5種類のウイルスは33℃では増殖可能だが、この温度では接種対象としたいショウジョウバエは生存できない。そこで、まずこのウイルスの低温馴化(2℃ずつ、BHK細胞、MOI=0.0005で接種)を行った。31℃ではいずれも増殖可能であったが、29℃では増殖性が急激に低下し、5種類のうち2つは増殖不可能となった。残り3種類に対し更に2回29℃で増殖させたところ、増殖能の上昇が認められ約5x10^4~5x10^5PFU/mlのウイルス液が得られた。すべての分節がWSN株由来のものが最も高いウイルス価を示し、低温馴化は予想に反し比較的容易おこることが判明した。