著者
古屋 典子 河野 伸二 夏秋 啓子
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理學會報 = Annals of the Phytopathological Society of Japan (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.108-110, 2012-05-25
参考文献数
6
被引用文献数
2

バンチートップ病は,中南米を除く世界各地のバナナ栽培国に広がり,日本の沖縄県では,野原(1968)によって初めて報告された。本病の病原ウイルスは,Babuvirus属バナナバンチートップウイルス(Banana bunchy top virus;BBTV)で,本ウイルスに感染したバナナは,株が著しくわい化して葉は狭く直立し,果実は結実不良となるため,経済的被害が深刻である。そこで,我々は,沖縄県で栽培されている食用バナナおよび繊維用バナナであるイトバショウ(M。balbisiana var。liukiuensis,BBゲノム)において,BBTVに対する感受性を評価したところイトバショウは,BBTVに対して免疫性を有する可能性が認められたので,その結果を報告する。
著者
古屋 典子 Somowiyarjo Susamto 夏秋 啓子
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.75-81, 2004-12
被引用文献数
1

バナナ(Musa spp)にとって,ウイルスの存在は,生産の場だけではなく,遺伝資源としての種や品種の保存においても重大な脅威である。本研究では,インドネシアのジョグジャカルタ特別州に位置するバナナ品種保存園において,38品種68株のバナナを3年間に渡って採集し,血清学的・分子生物学的手法の両方または一方を用いて,ウイルスの検出を行った。その結果,キュウリモザイクウイルス(CMV)は3株のみで感染が確認されたのに対し,バナナバンチートップウイルス(BBTV)は21株で認められたことから,本来はウイルスフリーであるべき本品種保存園においてもBBTVは蔓延していることが示された。また,調査を行った38品種は長期間同じ環境条件下で栽培されていたが,BBTVは12品種で,CMVは3品種でそれぞれ病徴を伴って感染が確認された。このことから,これらの12品種と3品種はそれぞれBBTVとCMVに対して,より感受性であると思われた。バナナ品種保存園に発生したBBTV2分離株(BBTV-IG33, -IG64)とその近郊の農村に発生したBBTV1分離株(BBTV-IJs11)についてDNA-1とDNA-3の塩基配列を決定した結果,それぞれのコンポーネントの全長で3分離株は高い相同性を有していた(98〜99%,99〜100%)。また,DNA-1のCR-M領域(major common region)では,既報のオーストラリアおよびフィジーの分離株よりも,日本・台湾・フィリピン・中国・ベトナムの分離株と,より高い値を示した(63〜65%,93〜95%)。したがって,インドネシアにおけるBBTVアジアグループ(KARANら,1994)の発生とそれらの分子生物学的性状が本研究によって初めて明確に示された。