著者
川島 弘之 古屋 武史 植草 省太 金田 英秀 越永 従道
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.487-490, 2016 (Released:2017-03-18)
参考文献数
13

横紋筋肉腫は間葉系細胞を起源とする悪性腫瘍であり,全身のどの部位にも発生する.鼠径部に発生し,非還納性鼠径ヘルニアとの鑑別を要した横紋筋肉腫の1例を経験したので報告する.症例は2歳女児で鼠径部腫瘤を認め,当院へ紹介受診した.超音波検査の結果,非還納性鼠径ヘルニアが否定できないために同日手術を施行した.手術所見で鼠径ヘルニアは認めず,鼠径部腫瘤は腫瘍性病変であり,腫瘍の部分切除術を施行し手術を終了した.病理結果で胞巣型横紋筋肉腫の診断を得た.日本横紋筋肉腫研究グループのプロトコールに準じて腫瘍全切除術を含めた治療を行い,治療終了後2年で再発は認めていない.非還納性鼠径ヘルニアの診断で手術を施行した際に腫瘍性病変を認めた場合には,術中に腫瘍進展を的確に評価し,腫瘍の全切除が不可能と判断した場合は腫瘍生検術や部分切除術による病理診断を得ることが治療方針を決定していく上で重要であると考えられた.