著者
古屋 秀隆
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.3-12, 2020

<p>Dicyemids (phylum Dicyemida) are endosymbionts that typically are found in the renal sac of benthic cephalopod molluscs. The dicyemid bodies consist of only 8 to 40 cells, which are the fewest in number of cells in metazoans, and are organized very simply. Typically, two or three dicyemid species are found in a single specimen of the host, and most of them show high host specificity. Dicyemid species have been examined in the benthic cephalopods collected from the Kumano Sea at a seafloor depth of 150–400 m using bottom trawl nets since 2013. Twenty-five undescribed species of dicyemids, included in five genera, were found in 15 species of cephalopods. There is a considerable diversity of dicyemids in relatively narrow range of localities of the Kumano Sea. Here current taxonomic studies on dicyemid fauna in the Kumano Sea are briefly reported.</p>
著者
古屋 秀隆
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ : 日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
no.21, pp.19-32, 2006-08-20

Dicyemid mesozoans (phylum Dicyemida) are endoparasites that are typically found in the renal sac of benthic cephalopod molluscs. Dicyemid bodies are very simply organized, consisting of only 8 to 40 cells, which is the fewest number of cells in metazoans. The current paper gives an overview of the morphology of dicyemids and reviews current status of the taxonomy of dicyemids. The renal sac of cephalopods is a unique environment providing habitat for a diversity of dicyemids. The current paper also reviews recent advances in several biological aspects, such as prevalence, zoogeography, and host specificity. The degree of host specificity differs among different species of dicyemids, although the recent study reveals narrow host specificity. Most previous descriptions were based on the character of vermiform stages, and several species seem to be incorrectly identified. The current study suggests that the cellular composition and cell types of infusoriform embryos are significant characters used to help identify dicyemids species. In addition, the type host specimen for a new species of parasite is briefly discussed The accurate identification of a host organism is an important component in the taxonomic recognition of a new species of parasite.
著者
古屋 秀隆
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

二胚動物門ニハイチュウ類は底棲の頭足類の腎嚢に片利共生する動物である。体を構成する細胞数が10-30個ときわめて少なく、体制の単純な動物である。分子系統学的解析によって、この動物はその見かけによらず原始的な動物ではないことが明らかになった。すなわち単純な体制は頭足類の腎嚢という微小環境への適応の結果であることがいえる。このような進化史をもつニハイチュウ類の分類形質がどのように適応してきたか、その道筋を明らかにするために、形態学的手法と分子系統学的手法を用いて解析を進めている。可能な限り多くの種を集め、種間の系統関係を明らかにしながら、分類形質の進化の道筋を解明している。当該年度は、日本海沿岸のウスベニコウイカ、ハクテンコウイカ、トサウデボソコウイカ、ハリイカ、およびトラフコウイカから12種の未記載のニハイチュウ類を見出すことができた。これらすべての種は分類形質を明らかにした結果、新種であることが判明した。現在、それらの新種記載の準備を進めている。同時に、これらニハイチュウ類のミトコンドリアCOI遺伝子と18SrRNAの塩基配列を解析中である。また、クモダコとツノモチダコから特異な適応形態をもつ種を発見し記載したが、一昨年イッカクダコのニハイチュウ類からも特異な適応形態をもつ種を発見し記載中である。昨年には、マダコ属未記載種の宿主から発見されたニハイチュウ類にも、特異な形態形質をもつ種を発見した。これらのニハイチュウ類に見られる特徴について、その形態を電子顕微鏡で観察した。その結果、体の前部の形を自由に変化させ、他の同種個体と手を繋ぐように接着させて群体を形成していた。それによって腎上皮の表面の生息域を大きく覆っていた。これは腎上皮の表面部を広く覆う適応である。この形質は分類上重要であるばかりでなく、ニハイチュウ類の系統の中でどのようなプロセスで生じたかが興味深い。
著者
古屋 秀隆
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

中生動物ニハイチュウについて、分類、系統、およびニハイチュウと宿主との関係(共進化)について調べた。(1)分類 カリフォルニア湾産Octpus hubbsorum、オーストラリア沿岸産Sepioteuthis australis とSepioloidea lineolata、および日本沿岸産クモダコとウスベニコウイカの腎嚢を検索し、10種の未記載種のニハイチュウ類を発見した。そのうち3種のニハイチュウ類を記載した。(2) ニハイチュウの細胞分化:細胞の分化が起きているかどうか16遺伝子の遺伝子の発現パターンよって調べた。(3)ミトコンドリアゲノムの解析ニハイチュウとプラコゾアのミトコンドリアゲノムの構造を調べた。ニハイチュウ類では、一般にミトコンドリア遺伝子がそれぞれミニサークルを形成していることを明らかにした。(4)共進化ニハイチュウと頭足類について、ミトコンドリアCOI遺伝子と18SrDNAの塩基配列を用い、それぞれの種間の系統関係を調べた。その結果、共進化している種もみられる一方、ホストスイッチングした種もみられ、厳密な共進化はみられなかった。
著者
古屋 秀隆
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

(1)分類 イイダコ、スナダコ、コブシメ、テナガコウイカ、メンダコから10新種のニハイチュウを記載した他、ボウズイカとミズダコのニハイチュウの再記載を行なった。(2)系統関係ギャップ結合タンパクのイネキシンによるニハイチュウの系統解析を行なった結果、以前から考えられていた扁形動物との関連性はなく、軟体動物や環形動物との関連が深いことが明らかになった。(3)共進化 ニハイチュウと頭足類について、それぞれの種間の系統関係を調べた結果、共進化している種もみられる一方で、宿主を変えた種もみられ、いわゆる共進化はみられなかった。
著者
古屋 秀隆
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

(1)分類日本海産アオリイカから1種(Dicyema koshidai)、土佐湾産スナダコから3種(Dicyema irinoense, Dicyema tosaense, Dicyema sphaerocephalum)、瀬戸内海産イイダコから3種(Dicyema akashiense, Dicyema awajiense, Dicyema helocephalum)、土佐湾産ヨツメダコから2種(Dicyemas balanocephalum, Dicyema leiocephalum)およびの沖縄産コブシメから1種(Dicyemennea ryukyuense)、10新種を発見し記載した。(2)系統と進化ニハイチュウ類の系統と進化について、次のことを明らかにした。1)ニハイチュウの極帽形態が宿主の頭足類間で収斂していることが示唆された。2)ニハイチュウの生活史戦略を明らかにした。3)2科6属のニハイチュウ類の滴虫型幼生の細胞数と細胞構成を明らかにした。3)頭足類の腎臓の構造とニハイチュウ類の寄生状況を比較検討した。4)ニハイチュウと頭足類との関係(宿主特異性や共進化)を明らかにする前段階として、まずミトコンドリア遺伝子(16S rRNA,12S rRNA,COI)を用いて日本沿岸産の頭足類33種の系統関係を明らかにした。ニハイチュウの系統関係に関しては、現在までにアオリイカ、マダコ、イイダコ、アマダコ、スナダコ、コウイカ、カミナリイカ、シリヤケイカに寄生する16種のニハイチュウについて、ミトコンドリアCOI遺伝子の塩基配列を明らかにした。現段階で、ニハイチュウ類の系統に関しては、同じ宿主の頭足類にみられる種どうしは、異なる宿主の間の種よりも近縁であり、ニハイチュウ類は頭足類と共進化してきたことが示唆された。