著者
古川 博史
出版者
特定非営利活動法人 日本血管外科学会
雑誌
日本血管外科学会雑誌 (ISSN:09186778)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.603-606, 2012-06-25 (Released:2012-06-26)
参考文献数
11

高齢者四肢高度拘縮内シャント造設困難症例に対して,4~6 mm tapered graftを使用した腋窩動脈-腋窩静脈前胸部交叉シャント(ネックレスシャント,arteriovenous axillary crossover grafts; AVACG)を作成した2例を経験した.症例1:91歳,女性.約6カ月前に左前腕内シャント閉塞で左上腕レベル尺側皮静脈転位内シャントを造設したが,四肢高度拘縮でシャント血流不全を繰り返すためPTFE 4~6 mm tapered graftを使用しAVACGを作成.術後14日目に穿刺にて透析可能,術後40日目に退院.症例2:84歳,女性.約3カ月前に右前腕内シャント閉塞で再度右前腕に内シャント再建したが,シャント静脈発達不良にて再閉塞.四肢高度拘縮で四肢への作成困難にて4~6 mm tapered graftでAVACGを作成.術後8日目に穿刺可能となったが,誤嚥性肺炎の悪化で術後31日目に呼吸不全にて死亡した.四肢が高度に拘縮した内シャント造設困難症例に対して4~6 mm tapered graftを使用したAVACGは,長期留置型カテーテルを念頭に置きつつ検討されるバスキュラーアクセスのオプションと考えられた.
著者
古川 博史
出版者
特定非営利活動法人 日本血管外科学会
雑誌
日本血管外科学会雑誌 (ISSN:09186778)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.97-101, 2012-04-25 (Released:2012-04-26)
参考文献数
11

【目的】末梢血管外科手術におけるデンプン由来吸収性局所止血材アリスタAHの使用効果に関して,血液製剤由来フィブリン糊止血材の使用効果と比較検討したので報告する.【方法】症例は2008年1月~2009年12月までの当科における末梢血管外科手術症例25例を対象とした.アリスタAH使用群(A群)10例,血液製剤由来フィブリン糊止血材(ベリプラストP)使用群(B群)15例で,ASOに対する下肢血行再建術がA群6例,B群10例,人工血管シャント造設術がA群4例,B群5例であった.止血材の使用方法は,血管吻合後止血材を吻合部に適量散布し,数分間用手圧迫を行った.両群間で術中,術後成績,合併症に関して比較検討を行った.【結果】術中出血量はA群で平均30.5 ml,B群で平均83.0 mlとA群で少ない傾向にあった.術後の主な合併症はA群で創の発赤1例,滲出液の貯留1例,肝機能障害1例で,B群では誤嚥性肺炎1例,腎機能の悪化1例であった.創傷治癒遅延および創感染は両群で認めなかった.また発熱の遷延化や吻合部仮性瘤の形成,出血による再手術例は認めなかった.末梢血管病変に対する手術症例では,両群とも下肢造影CTにて全例人工血管の良好な開存を確認することができた.人工血管シャント造設症例でも両群ともに穿刺にて問題なく血液透析を行うことが可能であった.【結論】アリスタAHは末梢血管外科手術における血管吻合部への補助的な止血材として従来の血液製剤由来の止血材とほぼ同等の効果が得られ,さらに術後成績に影響を与えず,合併症の少ない十分な効果が期待できる止血材であると考えられた.
著者
古川 博史 畑 隆登 津島 義正 松本 三明 濱中 荘平 吉鷹 秀範 藤原 恒太郎 黒木 慶一郎 増田 善逸
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.91-96, 1998-02-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
14

1994年3月から1995年10月までに急性心筋梗塞に合併した乳頭筋断裂による僧帽弁閉鎖不全症4例に対し,超急性期(24時間以内)に緊急でMVRを施行した.術前のMRは全例IVで,緊急手術までの補助手段として4例全例にIABPを,3例にPCPSを積極的に使用し血行動態の安定化を図った.術中所見で4例中3例に後乳頭筋断裂が,1例に前乳頭筋断裂が認められた.術後経過は,1例が術後17時間後に左室破裂を発症し術後6日目に多臓器不全にて死亡したが,3例は術後良好に経過し生存退院した.乳頭筋断裂によるMRは急性心筋梗塞に伴う合併症の中で頻度は少ないが,予後不良な合併症の一つである.発症から短時間での超急性期緊急手術までの補助手段としてIABPやPCPSは非常に有効であると考えられる.