著者
古川 智史
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.88-105, 2010-06-30 (Released:2017-05-19)
被引用文献数
2

本研究は,大阪市北区扇町周辺のクリエイター及び関連企業のネットワークを,「バズbuzz」と紐帯の強さの観点から検討することを目的として行った.クリエイターは,案件ごとに制作プロセス内の位置や外注先を柔軟に変えている.彼らの取引ネットワークの多くは,近畿圏という地理的範囲内で形成されている.特に,クリエイター同士の取引ネットワークは,クライアントとのそれに比べて濃密な意思疎通が必要であるため,相対的に狭い地理的範囲で形成されやすい.また,クリエイターは,リスクを回避するために既存の人脈を通じて新たな取引関係を形成することが多い.さらに,ネットワークを形成する契機は,その種類ごとに地理的な差異が存在する.一方,非取引ネットワークは,取引を前提としない対面接触の場を通じて醸成されるが,そうしたコミュニケーションを通じて,異分野のクリエイターとの協業や,暗黙知の共有,クリエイター間での相互触発,クリエイターに関する評価などが行われている.その一方で,非取引ネットワークは,クリエイター自身が評価され選別される場であるともいえる.クリエイターのネットワークは,「バズ」が有効に機能し,強い紐帯のみならず弱い紐帯を通じて取引関係を拡大しているといえる.したがって,クリエイターがネットワークを拡大する利点は大きく,これが扇町周辺にクリエイターを集中させる要因になっていると考えられる.
著者
古川 智史
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.135-157, 2013-03-01 (Released:2017-12-02)
参考文献数
38
被引用文献数
2 2

本研究の目的は,1990年代以降の広告産業を取り巻く環境の変化の中で,東京における広告産業の組織再編の実態と地理的集積の変容を考察することである.広告関連企業の分布を1980年と2010年で比較した結果,銀座や神田を中心に,依然として都心部5区に集中する傾向が強いものの,グローバル化による外資系広告会社の立地の増加や,渋谷周辺にインターネット広告企業の新たな集積の形成がみられた.このうち,大手広告会社は,2000年以降,従来外部化していた広告制作の垂直統合,積極的な専門広告会社の設立,他企業の買収を進め,グループの競争力を強化している.その結果,都心部にグループ企業の集積が形成されている.広告制作会社は,広告主のニーズに対応するため,Webを中心として業務範囲を広げ,外注先と柔軟な関係を形成する傾向にある.そのため,広告制作会社にとって都心部に立地する利点は大きく,このことが地理的集積の維持に寄与していると考えられる.
著者
古川 智史
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.88-105, 2010-06-30

本研究は,大阪市北区扇町周辺のクリエイター及び関連企業のネットワークを,「バズbuzz」と紐帯の強さの観点から検討することを目的として行った.クリエイターは,案件ごとに制作プロセス内の位置や外注先を柔軟に変えている.彼らの取引ネットワークの多くは,近畿圏という地理的範囲内で形成されている.特に,クリエイター同士の取引ネットワークは,クライアントとのそれに比べて濃密な意思疎通が必要であるため,相対的に狭い地理的範囲で形成されやすい.また,クリエイターは,リスクを回避するために既存の人脈を通じて新たな取引関係を形成することが多い.さらに,ネットワークを形成する契機は,その種類ごとに地理的な差異が存在する.一方,非取引ネットワークは,取引を前提としない対面接触の場を通じて醸成されるが,そうしたコミュニケーションを通じて,異分野のクリエイターとの協業や,暗黙知の共有,クリエイター間での相互触発,クリエイターに関する評価などが行われている.その一方で,非取引ネットワークは,クリエイター自身が評価され選別される場であるともいえる.クリエイターのネットワークは,「バズ」が有効に機能し,強い紐帯のみならず弱い紐帯を通じて取引関係を拡大しているといえる.したがって,クリエイターがネットワークを拡大する利点は大きく,これが扇町周辺にクリエイターを集中させる要因になっていると考えられる.