著者
古庄 敏行 吉丸 博志 前田 徹
出版者
北里大学
雑誌
北里医学 (ISSN:03855449)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.205-215, 1987-06-30

遺伝的形質の中には,支配する遺伝子が常染色体上に座位するものでも,表現や浸透度などに性差を表わすものがある。それらは程度の差こそあれ,従性遺伝の傾向がある。しかしながら,Snyderら^<4)>による若禿に関する有名な報告以来,従性遺伝の分析に関する報告はほとんどない。また,完全浸透と無淘汰を仮定した従来の分析法では必ずしも現実に適合せず,解析が困難な場合もある。そこで著者らは,浸透度,出生前淘汰,突然変異率,遺伝子頻度を考慮した上で,4つの従性遺伝モデル(A: 男女とも優性,B: 男で優性かつ女で劣性,C: 男で劣性かつ女で優性,D: 男女とも劣性)を仮定し,その検定法について考察した。その結果,(1)男女別発端老の両親の近親婚率,(2)両親の表現型組合せ別に,男女別発端老の男女別同胞における分離比,を推定することにより有効な検定が可能であることが示唆された。
著者
吉丸 博志 古庄 敏行
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.219-229, 1986

遺伝的危険率の推定は, 遺伝相談における一つの重要なポイントである。前回の著者らの報告では, 単純な常染色体優性および劣性を仮定して危険率を推定する方法が考案された。今回は, 前回と同じ遺伝的パラメータ(遺伝子頻度, 突然変異率, 浸透度, 出生前淘汰)を考慮して, 単純な性染色体劣性遺伝を仮定した危険率の推定方法が考案された。さらに, 危険率の推定におよぼす遺伝的パラメータ(特に後二者)の影響を検討し, 以下の如き結果が得られた。浸透度が低くなるにつれて, 新しく生まれる男子の危険率は減少することが多い。さらに女子の危険率については, その父が異常遺伝子を確実に持っている場合は, 同様の傾向がみられる。しかしながら, 他の場合は, 浸透度が低くなるにつれて, 女子の危険率はずっと増加することが多い。出生前淘汰の存在は, 男子も女子も危険率をわずかに減少させる。