著者
山﨑 勝也 関野 とも子 古木 忍
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.350-362, 2014-09-30 (Released:2015-10-01)
参考文献数
32
被引用文献数
1

失語症者の聴覚的文理解に影響を及ぼす因子を明らかにするため, 聴覚的文理解検査である標準失語症検査の「口頭命令に従う (以下, 口頭命令検査) 」を例に取り, この検査を遂行する上で必要となる能力の検討を行った。実験的検査を 4 種設定し, 口頭命令検査文に含まれる内容語の理解がすべて可能である失語症者と健常者, 各々10 名を対象として実施した。その結果, 1. 従来より重要視されている auditory pointing span は口頭命令検査成績と相関しないこと, 2.単語を一定以上の速度で連続して正しく処理する能力 (「聴覚性連続的単語処理能」と呼ぶ) が口頭命令検査成績と高い相関を認めること, 3. 口頭命令検査では, 「で」を除き, 助詞解読能力はほぼ必要としないことが明らかとなった。以上より聴覚的文理解障害への訓練として, 聴覚性連続的単語処理能の改善という観点からの働きかけが重要である可能性が示唆された。
著者
関野 とも子 古木 忍 石崎 俊
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.231-240, 2003 (Released:2006-04-21)
参考文献数
17
被引用文献数
1 4

仮名1文字の音読はほぼ良好だが,仮名無意味綴りの音読に著明な障害を示す phonological dyslexia1例に対し,文字表記形態を操作した仮名単語(実在語) の音読課題を実施し,その反応パターンの分析から症状の発現機序について考察した。本例は,単語親密度および表記妥当性の高い(つまり形態親近性が高い) 語の場合は,良好な音読成績を示す。しかし表記妥当性の低い語は,1文字ずつ音韻変換をはかる逐字読みのストラテジーを用いようと試みるのだが,変換した一部の音韻から目標語とはかけ離れた別の語を連想,表出するといった形態的錯読ともいえる反応が頻発した。したがって本例の仮名単語音読処理は文字列の形態親近性の識別が先行し,それが高いものは Warringtonら(1980) の語形態処理モデルに相当する形態処理ルートを,低いものは逐字読みルートを経由するが,本例ではそのうちの後者が特異的に障害されていると考えられた。