著者
中嶋 聡美 栗岡 隆臣 古木 省吾 原 由紀 井上 理絵 鈴木 恵子 梅原 幸恵 小野 雄一 佐野 肇
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.253-261, 2022-08-30 (Released:2022-09-17)
参考文献数
16

要旨: 高齢中等度難聴者の QOL を, 包括的健康関連 QOL, 主観的幸福度, 社会活動性を評価する質問紙を用いて調査すること, さらに各尺度の相互関係, 各尺度に影響する要因を検討することを目的として研究を実施した。 対象は北里大学病院耳鼻咽喉科の補聴器外来または難聴外来に, 2019年10月から2020年12月までに受診した65歳以上の中等度難聴者149名であった。 質問紙は「基本的質問」,「SF-36ver2」,「Subjective Well-Being Inventory (SUBI)」,「いきいき社会活動チェック表 (社会活動)」で構成した。SF-36 の平均値と国民標準値の比較では70歳代の Mental Component Summary (MCS) のみ有意な低下を認めた (p<0.025)。MCS と SUBI, 社会活動と MCS, SUBI に正の相関を認めた。MCS の重回帰分析において, 平均純音聴力レベルの悪化に伴い改善を認め (p<0.05), 補聴器装用が悪化に影響する傾向があり (p=0.072), 通院している高齢中等度難聴者の精神的 QOL の特徴として注意を払うべき結果と思われた。 今後の検討でも各評価法を併用して QOL を検討することが有用と考えられた。
著者
古木 省吾 佐野 肇 栗岡 隆臣 井上 理絵 梅原 幸恵 原 由紀 鈴木 恵子 山下 拓
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.256-262, 2020-08-30 (Released:2020-09-09)
参考文献数
15

要旨: 補聴器増幅特性の決定は補聴器フィッティングの中で最も重要なプロセスである。 NAL-NL 法や DSL 法などの処方式を選択しソフトウェア上で算出した設定値は平均的な外耳道, 鼓膜の特性を基に計算されたものであり各耳の個体差は考慮されていない。そこで我々は, 純音聴力検査の結果をフィッティングソフトに入力し選択した処方式から算出された設定値と, 実耳測定を用いてターゲット値に近似するように調整した後の設定値との差を比較し, フィッティングソフトにより算出される設定値の妥当性を評価した。結果, 全周波数の修正が±4dB以内に止まった割合は NAL-NL2では10% (2/20耳), DSLv5では5% (1/20耳) とかなり低値であった。適切なフィッティングには実耳測定が重要であることが再認識された。しかしながら, 実耳測定を行っている施設はおそらく限定的である。どのような方法で実耳測定の代用方法を構築できるかは今後の課題である。