著者
平澤 由平 鈴木 正司 伊丹 儀友 大平 整爾 水野 紹夫 米良 健太郎 芳賀 良春 河合 弘進 真下 啓一 小原 功裕 黒澤 範夫 中本 安 沼澤 和夫 古橋 三義 丸山 行孝 三木 隆治 小池 茂文 勢納 八郎 川原 弘久 小林 裕之 小野 利彦 奥野 仙二 金 昌雄 宮崎 良一 雑賀 保至 本宮 善恢 谷合 一陽 碓井 公治 重本 憲一郎 水口 隆 川島 周 湯浅 健司 大田 和道 佐藤 隆 福成 健一 木村 祐三 高橋 尚 由宇 宏貴
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.1265-1272, 2003-07-28
被引用文献数
2 12 4

遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤 (rHuEPO) が6か月以上継続投与されている慢性維持血液透析患者 (血液透析導入後6か月以上経過例) 2,654例を対象に, 維持Ht値と生命予後との関係をretrospectiveに調査, 検討した. Cox回帰分析による1年死亡リスクは, 平均Ht値27%以上30%未満の群を対照 [Relative Risk (RR): 1.000] とした場合にHt 30%以上33%未満の群でRR: 0.447 [95%信頼区間 (95% CI): 0.290-0.689 p=0.0003] と有意に良好であったが, Ht 33%以上36%未満の群ではRR: 0.605 [95% CI: 0.320-1.146 p=0.1231] と有意差を認めなかった. 一方, Ht 27%未満の群ではRR: 1.657 [95% CI: 1.161-2.367 p=0.0054] と有意に予後不良であった. また, 3年死亡リスクも1年死亡リスクと同様, Ht 30%以上33%未満の群ではRR: 0.677 [95% CI: 0.537-0.855 p=0.0010] と有意に良好であったが, Ht 33%以上36%未満の群ではRR: 1.111 [95% CI: 0.816-1.514 p=0.5036] と有意差を認めず, Ht 27%未満の群ではRR: 1.604 [95% CI: 1.275-2.019 p<0.0001] と有意に不良であった.<br>これらの調査結果より, 1年および3年死亡リスクはともにHt値30%以上33%未満の群で有意に低値であり, 生命予後の観点からみた血液透析患者のrHuEPO治療における至適維持目標Ht値はこの範囲にあると考えられた. ただし, 1年死亡リスクは, 例数が少ないもののHt値33%以上の群についても低値であったことから, このレベルについては今後再検討の余地があると考えられた.
著者
古橋 三義 中島 光好
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.35-42, 2002-01-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
15

透析患者の消化性潰瘍に対して, H2受容体拮抗剤は有効な治療薬である. 新規H2受容体拮抗剤であるlafutidineは他剤と比較して尿中排泄率が低く, 腎機能の低下した高齢者〔Ccr: 20-60 (平均45.2) mL/min〕でも, 腎機能の正常な高齢者 (Ccr: 61mL/min以上) および健常成人と同様な未変化体の血漿中濃度推移を示すことが報告されている. そこで今回, 透析患者におけるlafutidineの体内動態について検討した. 透析患者6名 (年齢49-72歳, 透析歴11か月-14年) の非透析時および透析時にそれぞれ, lafutidine 10mg錠を1回1錠投与し, 血漿中未変化体濃度を測定し, ファーマコキネティックパラメータを算出した. また, 透析による除去率についても測定した. 非透析時にはTmaxが0.8±0.1hr, Cmaxが336±40ng/mL, t1/2が6.71±0.30hrを示し, AUC(0-24hr)は2278±306ng・hr/mLであった. 透析時はTmaxが2.6±0.5hr, Cmaxが226±36ng/mL, t1/2が4.57±0.24hrを示し, AUC(0-6hr)は853±128ng・hr/mLであった. 使用した透析膜におけるlafutidineの除去率は7-18%であった. 透析患者においてもlafutidineのt1/2の延長は大きくなかった. Lafutidineの透析患者におけるt1/2 (6.7hr) はlafutidineの投与間隔 (12hr) よりも短く, 他のH2受容体拮抗剤と異なり, 透析患者においても用法を変更する必要はないと考えられた. しかし, 透析患者ではCmaxが健常成人の約2倍に上昇したことから, 用量は低用量から投与開始することが望ましい.
著者
松橋 秀典 若佐 友俊 田北 貴子 古橋 三義
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.381-385, 2014

漏血警報は透析膜の破損により, 血液と透析液が透析膜の壁を隔てずに直接接触することを意味する重大な警報である. 近年, 透析液清浄化の技術が広く普及し, 透析液の水質は多くの施設で清浄化レベルが確保されてきているが, 透析液の水質の確保されていない透析施設での漏血事故は, 血液へのエンドトキシンや細菌混入などをひき起こす危険な事故である. 今回われわれは目視にて透析液ダイアライザー出口側より赤褐色様濾液が確認できる漏血警報発生時に, ダイアライザーを交換しても警報を回避できず, 偽漏血が疑われた1例を経験したので報告する. 症例は77歳女性, 心不全に伴う腎機能悪化にて維持透析を実行. 透析治療はHD3時間とECUM1時間の4時間治療を行っていた. 除水の多かった治療日に, HDからECUMに変更後, 漏血警報が発生. ダイアライザーを同器種に交換し治療を再開したが, 再度漏血警報が発生した. さらにダイアライザーを他種膜に変更したが, 再び漏血警報が発生し, 漏血警報が回避できなかった. 漏血警報発生の原因として, 使用していたダイアライザーに膜破断などの異常は認められなかった. 当日の装置漏血検知器の状態にも問題はなく, 誤警報である可能性はなかった. 血中ハプトグロビンの値が10mg/dL未満であり, 溶血が起こっていると考えられたが, 透析由来の溶血は否定的であり, 心臓の人工弁による機械的溶血が原因となる偽漏血であると考えられた. 心臓の弁置換の行われている透析患者で漏血警報が発生した場合には, 溶血による偽漏血の可能性も考慮する必要があると考えられた.