- 著者
-
古池 弘隆
- 出版者
- 宇都宮大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1988
本研究は高所から撮影したビデオ画像とパ-ソナルコンピュ-タを組み合わせて、静止した画面上に表示された対象物の位置を、ディジタイザ-により読みとる装置を開発し、それを実際の交通流現象の調査解析に応用しようとするものである。昨年度のビデオカメラの精度に関する基礎実験、座標変換のソフトウエアの開発、商店街での歩行者や自転車の実測調査・分析に続き、本年度は応用研究に力点を置いた。宇都宮市内には3ヵ所のスクランブル交差点があるが、そのひとつが高校生の通学路にあたっており、スクランブル現示時に多くの学生が自転車に乗ったまま交差点を横断し、スクランブル交差点として機能しているかどうか疑問であった。そこで本研究で開発された調査手法により、ビルの屋上から交差点をビデオカメラで撮影し、その画像を解析した。比較のためにもう一ヵ所の典型的なスクランブル交差点においても同様な調査を行った。解析の結果、高校生通学時の自転車交通が交通量の9割を占め、スクランブル交差点の特徴である斜め横断率が比較交差点では30%台であるのに対して、当該交差点ではわずか数%にすぎず、スクランブル本来の機能を果たしていないこことが明らかになった。この結果に基づき栃木県警では当交差点を一般交差点に改めた。その結果自転車・歩行者の安全な横断が確保され、また自転車に対する青信号時間が増加して交通容量も増大した。本研究では開発された手法は、以上述べたように一応初期の目的を達成したが、ビデオ画像の対象物をディジタイザ-を用いて座標変換する際に判読者の負担が大きく、自転車や歩行者など大量の点を時系列で追跡していくのはかなりの困難さを伴うことが判明した。今後は画像処理技術を用いるなど効率的なデ-タ入力の自動化を図る方法の開発に向けてさらに研究を進めていく必要があろう。