著者
谷口 守 荒木 俊輔
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.225-232, 1996-08-31 (Released:2010-06-04)
参考文献数
8
被引用文献数
1

低成長時代においては、社会資本整備が地域に及ぼす効果を経済的指標で捉えることは難しく、むしろ社会資本整備が住み易さやイメージの向上といった地域に関わる認識の高さに影響を及ぼすことで地域間競争が進む側面も有ると考えられる。本稿ではこのような「認識上の地域」に着目し、その実態と決定に及ぼす要因について分析方法の提案を行い、それを実空間に適用した。具体的には、地域名選択確率という概念を導入し、「つくば地域」を対象に数量化モデルを適用することによって社会資本整備をはじめとする諸要因が地域認識に及ぼす影響を定量的に検討した。さらに、認識上の地域が有する階層構造についてもその特性を明らかにした。
著者
山本 陽二郎 萩原 亨 足達 健夫 加賀屋 誠一 内田 賢悦
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.709-715, 2004-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
12

本研究では、歩行者の方向感覚を阻害する存在として、地上と地下を繋ぐ階段での進行方向の回転に着目した。地上から地下への階段の曲がり数とその後の地下歩行空間における歩行者の方向定位と経路探索時への影響を分析するため人の空間認知プロセスにおける視覚情報について具体的に検討した。階段通過時の進行方向の回転をシミュレートした室内実験を行った。被験者に対し情報提供を行い、それらの経路探索への影響を分析したその結果、階段の曲がり数が要因となって方向定位と経路探索が困難になった。また、情報提供内容によって方向定位を改善できる可能性を示唆した。
著者
鈴木 美緒 屋井 鉄雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.479-486, 2008-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
21
被引用文献数
2 1

本研究では, 日本の都市部での自転車配慮型道路の整備にあたり, 自動車の進入を許可する運用方法の自転車共用通行帯を導入する可能性を, ドライビングシミュレータ実験で得た自動車走行特性から検討した. その結果, 十分な幅員の余裕がない車道に自転車を走行させる場合, 自動車進入可能な自転車共用通行帯を, 優先的に幅員を与えて導入することで, 自動車と自転車に適切な距離が保たれ, 自動車の速度も上昇することがわかった. また, 交差点では, 歩道より車道の自転車の方が対処されやすいことが明らかになった. さらに, 交差点や駐車車両, 自転車同士の追い越しなどでの自動車の挙動より, 自転車配慮型道路に求められる課題も見出せた.
著者
田中 尚人 川崎 雅史
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.331-338, 2002-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
29

水辺は都市と水域の双方を包含する境界領域であり, 舟運や陸運など様々な都市基盤が接続する結節点である. 本研究では, 京都伏見を対象地として歴史的な文献・資料等を用い, インフラストラクチャーとしての水辺の近代化プロセス, 都市空間への影響を分析した. 近世の水辺は物流・旅客のターミナルとして機能し, 都市施設を集積させ都市的な賑わいの基盤となった. 近代においては, 近世以来舟運により保持されてきた都市機能やアメニティは鉄道駅周辺へと移行し, 水辺の工業基盤機能が卓越するようになった結果, 都市アメニティを享受する場としての水辺が散漫になった. このような都市形成のメカニズム, 及びそこで水辺が果たした役割が本論文にて明らかになった.
著者
日野 智 岸 邦宏 佐藤 馨一 千葉 博正
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.827-834, 2000-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

整備新幹線である東北新幹線盛岡-新青森間が開通した後、並行在来線である東北本線盛岡-青森間は第三セクターとへ経営が移管される。しかし、同区間は北海道と本州とを結ぶ鉄道貨物列車の主要経路であるため、第三セクター化後の鉄道貨物輸送存続が懸念されている。そこで、本研究は鉄道貨物の必要性を示し、代替経路や代替機関による輸送についても検討する。結果として、東北本線経由の鉄道貨物輸送は大きな役割を果たしており、鉄道貨物を存続させた方が関係主体合計の負担は少ないことが明らかとなった。
著者
高山 純一 中山 晶一朗 福田 次郎
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.647-655, 2004-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
6
被引用文献数
1

本研究では, 高齢者の横断歩道外での歩行事故が多発している実態を踏まえ, 横断歩道外での高齢者の横断行動の調査・分析を行った. 調査は, ビデオによる横断行動の撮影および横断者に対するインタビュー調査である.分析の結果, 高齢者の横断所要時間は非高齢者よりも有意に長いにもかかわらず, 横断利用ラグには違いは見られず, 高齢者は相対的に危険な横断を行う傾向があること, 自分の行った横断に関して危険でないと認識する人が逆に危険な横断を行っている傾向が見られた.よって, 高齢者は, 歩行速度を含めた自分の身体能力, 自分が行っている横断について, 客観的に適切に自覚してもらう必要があると考えられる.
著者
奥村 誠 足立 康史 吉川 和広
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.115-122, 1989-12-01 (Released:2010-06-04)
参考文献数
10

Spatial data are characterized by spatial interdependence and heterogeneity which give a variety of measurement problems. Heterogeneity can be covered by some econometrical techniques for model with non-spherical error term. Though spatial interdependence is considered as a “statistical noise” in the field of econometrics to date, how to model spatial interaction is the main subject in regional modeling. However, most of empirical works fails to take into account the interdependence effects in estimation or tests.In this paper, we consider a family of simultaneous spatial models which explicitly contain spatial interdependence. The most popular OLS estimator is neither unbiased nor consistent. We propose a new consistent and efficient estimator, that is named Two Stage Generalized Least Squares (2SGLS) Estimator. OLS bias, efficiency of 2SGLS and 2SLS estimator are numerically assessed. We conclude by discussing the applicability of 2SLS and 2SGLS estimator.
著者
橋本 成仁 小倉 俊臣 伊豆原 浩二
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.703-708, 2005-10-31 (Released:2010-06-04)
参考文献数
3
被引用文献数
1

歩道の設置されていない補助幹線道路や生活道路において交通事故の削減、歩行者の歩行環境の向上等を目指して、中央線を抹消し、路側帯を拡幅するという施策が導入されつつある。この施策は愛知県下では平成12年以降、積極的に導入しており、平成15年以降、全国でも同様の整備が行われつつあるが、この施策についてはこれまでのところ十分な効果検証がなされていないのが現状である。本論文では、この施策について積極的に導入しつつある愛知県豊田市内での整備路線を対象に、この施策の効果を交通事故データ、交通量、走行速度などの客観的データと整備路線周辺の居住者の意識調査を基に評価することを目的としている。
著者
日野 智 岸 滋 岸 邦宏 浅見 均 佐藤 馨一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.495-503, 2002-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
14

近年、北海道と本州間の鉄道輸送網において、事故・災害による不通が多発している。鉄道輸送網の不通は旅客だけではなく、物資輸送にも多大な影響を与えている。本研究は鉄道貨物輸送における代替経路探索モデルを構築し、津軽海峡線貨物列車脱線事故と有珠山噴火災害に適用したものである。本研究で構築したモデルは時刻を考慮しているため、便毎に経路を探索することができる。そのため、運行頻度や発着時刻等を含めた代替経路の評価が可能である。また、現実に採用されている列車待機を代替経路の一つとして、表現できる。モデルを事故・災害事例へと適用した結果、フェリー航路が代替輸送に有用であることが明らかにされた。すなわち、今後はフェリーも鉄道貨物輸送における代替経路として考慮すべきといえる。
著者
竹林 幹雄 黒田 勝彦 杉田 孝 吉田 純土
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.613-618, 2003

本論文では, 旅客のチケット予約行動においてウイナー過程を仮定した最適SICモデルを構築することを目的としている.特に最適シートブロックとチケット販売期間の構成に着目した.まず, 特定のフライトにおける旅客のシート予約を販売座席数と予約時間の関数として定式化した.次にモデルが伊藤積分によって最適解が求められることを示した.続いてモンテ・カルロ・シミュレーションにより数値計算を行い, シート・プロテクションと販売期間の関係を明らかにした.最後にオーバーブッキングの効果について検討し, その結果, シート・プロテクションごとに最適OB率が存在することが示された.
著者
橋本 成仁 谷口 守 水嶋 晋作 吉城 秀治
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.737-742, 2010 (Released:2017-11-29)
参考文献数
5
被引用文献数
2 8

住宅地内の道路などではドライバーは街路全体から受ける雰囲気からその道路に適していると感じる走行速度で運転しており、無意識のうちに安全な走行速度で走るような街路を実現することが安全な生活空間を形成する上で重要であると考えられる。そこで本研究では、主に岡山市内の街路54路線において合計1,906台の自動車の走行速度を実測し、速度と街路空間要素の関係を分析した。その結果、自動車の走行速度や速度のばらつきにどの街路空間要素がどれほど影響を及ぼすかを定量的に明らかにした。この結果は、街路空間の改良によって自動車の走行速度をコントロールし得ることを示唆したものと考えられる。
著者
八川 圭司 徳永 幸之 須田 熈
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.835-841, 1997-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
9

地方部において新幹線駅に無料駐車場を整備することはアクセス改善に対してだけではなく新幹線の利用促進に対して非常に有効であると考えられる.また, 地方部の人口減少に悩む過疎地域では, 近隣都市圏との交流が地域の利便性の向上, 生活機会の改善のために必要不可欠であり, 地方部における新幹線の活用は重要である.このように, 地方部における新幹線駅の無料駐車場整備は非常に重要であるにもかかわらず, P&Rを考慮した駐車場容量の算定基準はなく, 駐車場容量が地域住民の交通行動に与える影響に対する定量的な分析も為されていない.本研究では, 新幹線駅の駐車場容量に応じたアクセス手段, 交通機関選択行動の変化を表現できる需要推計モデルを構築することを目的としており, これに基づいて地方部の新幹線駅に関する駐車場容量の算定基準について検討を行った.
著者
片岸 将広 岡田 茂彦 高山 純一 石川 俊之 埒 正浩
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.597-606, 2008-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
11

本論文では、バスレーンを活用した「自転車走行指導帯」(幅1.25mの着色帯) の設置による交通安全対策の効果と課題について述べる。道路交通法上、自転車は「車道の左側端」を走行しなければならないが、実態としては歩道走行や右側逆走など無秩序な走行が多くみられ、ルールと実態の乖離が近年の自転車関連の交通事故増加につながっていると考えられる。本論文では、バスレーンを活用した「自転車走行位置の明確化」と「交通ルール及びマナーの指導強化」を実施することが、歩行者・自転車・バス・クルマのそれぞれにとって安全・安心な道路空間の創出に効果的であることを、対策前後の自転車走行実態調査やアンケート調査等から明らかにしている。
著者
藤井 聡 小畑 篤史 北村 隆一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.439-445, 2002-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
12
被引用文献数
2 5

本研究では, 路上放置自転車問題における心理的方略の一つとして, 施策としての “説得”(あるいは, 説得的コミュニケーション) の有効性を確認するためのフィールド心理実験を行った. 実験では, 被験者 (n=99) を複数のグループに分け, 何種類かの説得的コミュニケーションを行ったところ, 自転車放置行為の問題を指摘し, かつ, 自転車放置行為を止めるために必要な方法を具体的に提示することで, 放置自転車行為の実行頻度は3割減少することが見いだされた.
著者
瀬口 哲夫 河合 正吉
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.201-212, 1997-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
7

日本の運河は300近くあるが、近年モータリゼーションや産業構造の変化から運河の機能と運河周辺の土地利用に変化が現れている。運河の変容過程とその要因を明らかにするとともに、運河に対する将来イメージを明らかにした。ケーススタディーとして、工業開発・交通拠点型の運河を取り上吠その建設目的、変容過程、運河周辺の土地利用変化等について明らかにした。
著者
榎本 拓真 中村 文彦 岡村 敏之
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.385-394, 2008-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
17
被引用文献数
2 1

本研究では, 近年, 導入が進む大型SCの公共サービス機能の導入の中で, 特にアクセス公共交通導入に着目し, アクセス費用のモード問比較, 買物行動の実態評価を通じ, 郊外大型SCのアクセス公共交通導入実態と, 郊外大型SCへの公共交通乗り入れによる地方都市における買物行動の手段転換可能を明らかにした. 結果として, 郊外大型SCへのアクセス公共交通は, 多様な導入形態があり, 高いLOSを担保する事例も確認した. さらに, 買物行動の実態分析と自動車とのアクセス費用比較から, アクセス公共交通の優位性は認められず, チョイス層でも買物行動時の自動車利用が固定化し, 所要時間が公共交通より長くても自動車を選択する傾向を示し, 手段転換が困難であることを示した.
著者
岡田 幸子 樋口 明彦 仲間 浩一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.381-388, 2006-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
28

維持管理の時代である今、再使用やリサイクルされる建設材料が増えている。建設材料である石材は、石垣や路盤舗装材などに使われてきた。しかし、文化財などの石造構造物の研究はあるが、石材の流通や再使用に焦点をあてた研究は少ない。本研究は、土木事業における石材の流通や再使用に着目し、北九州市では西鉄路面電車の敷石の生産から利用技術及び別用途での再使用に到る経緯を調査したものである。その結果、併用軌道における舗装技術と舗装に関する歴史的な経緯・過程、敷石の生産・流通・施工・補修の技術、ある時代の流通やストックの方法の全貌を解明した。また、現在77ヵ所 (39ヵ所確認) で再利用の情報を把握した。
著者
清水 一大 加藤 博和 福本 雅之 竹下 博之
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.659-666, 2006-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
8

本研究では, 名古屋の基幹バス新出来町線の実例をもとに, 中央走行方式バスの中長期的な導入効果を明らかにすることを目的としている. 分析によって, 1) バス走行が一般車両の影響を受けにくくなる結果, 高速化や定時性向上が図られていること, 2) 沿線状況のわりに利用客がより多く喚起されており, 他のバス路線に比べ乗客の減少が少ないこと, 3) 一般車の走行車線は減少するものの, バスも含めた単位時間あたり道路断面通過可能人キロはさほど減少しないこと, 4) 速度向上効果が, 停留所減による沿線住民のバス停アクセス時間の増加を補っていること, などが示されている.