著者
古澤 頼雄
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学比較文化研究所紀要 (ISSN:05638186)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.13-25, 2005

文化が人間のあり方に大きく影響することは様々な事象によって自明のことであるが、人間のあり方に文化を超えたかなりの共通性があることもまた見逃せない事実である。そのひとつに社会的スティグマ(烙印)がある。社会的スティグマとは、ひとが相手を自分とは異質なもの、汚れたものと見ることによって、相手の存在によって自分の幸せが脅かされると思えたり、理解したくないという気持ちから、相手と一層距離を置きたいと考える心理である。このことは、大勢の人たちが共通にもっている見方からはずれた対象に対して特に顕著にあらわれる。高齢者、異人種・民族、障害者、貧困者などが社会的スティグマの標的になることはしばしば見聞きするところであるが、それだけではない。ここでは、血縁のない家族を創ろうとする人たちが血縁をもつことは家族にとってごく当たり前と思っている人たちから浴びせられる社会的スティグマに焦点を当てながら、どのようにして非血縁家族は構築されていくかを、"不妊治療の選択→養子を迎える決断→幼年養子を迎える"という家族のライフサイクルによって考察し、非血縁家族を構築する人たちの社会的スティグマへの挑戦を通して、改めて家族とは何かを考える。