著者
吉野 純 中田 勇輝 古田 教彦 小林 智尚
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_493-I_498, 2017 (Released:2017-10-17)
参考文献数
6
被引用文献数
1

台風1610号は,2016年8月30日午後6時頃に北西進することで統計開始(1951年)以降初めて東北地方太平洋側に上陸した.本研究では,このような特異な進路をとった台風1610号の進路形成メカニズムを解明することを目的として,渦位部分的逆変換法に基づいて,台風周辺の擾乱が励起する指向流ベクトルを渦位偏差毎に分解することで推定した.台風1610号が岩手県大船渡市付近に上陸した時間帯には,台風の西側に位置した上層の寒冷渦が作り出す南東風に加えて,それに伴う積乱雲活動(非断熱加熱)により発達した下層低気圧(湿った正渦位偏差)が作る南風や上層高気圧(湿った負渦位偏差)が作り出す東風が同時に作用することで,約20 m/sの南東風の指向流ベクトルにより北西進したことが明らかとなった.