著者
西河 正行 八城 薫 向井 敦子 古田 雅明 香月 菜々子
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.25, pp.1-14, 2015 (Released:2015-03-27)
参考文献数
11

心理学教育を通して社会人基礎力を育成するキャリア教育を行うに当たり,社会・臨床心理学専攻に所属する全学生を対象に現行の心理学必修専門科目の教育効果について,学生のスキル習得認知,それに関連する心理学的特質等から,学生評価の学年比較を行った.その結果,本専攻が重視するジェネリック・スキルの認識に学生と教員で違いが見られ,また「前に踏み出す力」の育成に課題が認められた.学年比較からは,3年生に大きな特徴があり,「自尊心」が他学年より有意に低く,キャリア選択の動機づけにおいて「社会的安定希求」が有意に高かった.本結果に加え,他大学の教育実践の視察も踏まえた結果,3年後期に開講する新科目の授業内容は心理学教育を通して「前に踏み出す力」を身につけられるよう,①学生自身のキャリアについて考えさせる,②キャリアモデルを提示する,③内向的で受身的な学生に自信を与えるという3つの柱を導き出した.最後に,具体的な授業運営において,教育方法にPBL型授業を取り入れる可能性ならびにジェネリック・スキルについて学生と教員の間で共通の認識を持つ必要性を示唆した.
著者
児玉 成未 西河 正行 古田 雅明 齊藤 圭 中村 純子
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2016, no.26, pp.98-102, 2016-01-01 (Released:2020-03-18)
参考文献数
7

近年,人の心に関わる臨床心理士は医療・福祉・教育・司法・産業など様々な現場において幅広く活躍している.本研究では臨床心理士訓練途中である大学院生と大学院を修了して数年の臨床経験を経たカウンセラーを対象とし,カウンセリング場面における初心者カウンセラーの特徴を抽出し,それらがどのように作用しているのかを検討した.そして大学院を修了したカウンセラーの特徴を抽出し,初心者カウンセラーとの違いを探索的に検討し,それらの違いを明らかにすることで,臨床心理士養成教育へ提言することを目的とした.その結果,大学院生はクライエントの問題を十分に理解していない,うまく対応できていないと感じていた.また,「自分がカウンセラーとして技量を試されているようなプレッシャー」「中断の恐怖」を感じていた.そして,「今後カウンセラーとして働いていく上で適性が脅かされる不安」が明らかとなり,クライエント,指導教員の期待に応えていない葛藤の背景に,より根本的な適性不安があることが示唆された.しかし,大学院を修了したカウンセラーには大学院生に見られたような特徴は見られなかった.これらのことから,大学院生には「誰に何を期待され,自分自身は何を期待しているのかを考えさせる機会を持たせる」などの「型」への固執を引き起こす要因への配慮なり対策が講じられなければ根本的な解決にはならないことが示唆された.
著者
西河 正行 八城 薫 向井 敦子 古田 雅明 香月 菜々子
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究
巻号頁・発行日
vol.2017, no.27, pp.259-268, 2017

<p> 本稿は,大妻女子大学人間関係学部人間関係学科社会・臨床心理学専攻の「『キャリア心理学セミナー』に関する授業研究」の第4 報である.同セミナーは,2009 年度のFD 活動の結果,必修科目として設置されることが決まり,2012 年度から大妻女子大学の研究助成を受けて授業研究を開始した.本稿では,同専攻3 年生に対して2015 年度後期に初めて実施した授業の概要とその意義について報告する.</p><p> 半期の授業は3 期に分けられる.Ⅰ期は,キャリア形成の自覚を高めることを目的とした.Ⅱ期は,マナー講習,業界・企業研究など,社会人になるための準備教育を行うこと,および,その実践として学生たち自身が卒業生に対してインタビュー調査を実施することを企図した.Ⅲ期はインタビューと,インタビューで得られた情報の整理,調査結果の発表を行い,それを通して自らのキャリアを考える機会とした.学生には,本セミナー終了後に,自らを振り返らせるために個人レポートの提出を求めた.その後,報告会で配布された資料を冊子としてまとめ,学生に配布した.</p><p> 最後に,学生のアイデンティティ形成をサポートすることを目的とした本セミナーの意義を検討した.</p>