著者
古籏 安好
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.26-31, 1968-03

集団行動の諸要因の相互関係を公式化するためのカギは集団参加性にある。そこでまずこの概念について取り扱い,その3因子である連帯性・勢力性および親和性の相互関係を分析的に考察した。ここで用いた技法を集団行動の3変数すなわち集団生産性・集団凝集性および集団参加性の相互関係の分析にも適用した。この技法は重相関と重決定係数を算出し,変数相互の相対的寄与量をみることによって,相互関係を見とおすというものである。これによって,若干の成果を得た。その主要な点は次のようである。 (1)集団凝集性と集団参加性はともに課題遂行に有意の相関をもつことが示されたが,相対的寄与量からいえば,凝集性よりも参加性により重みがあることをより明確にできた。 (2)集団参加性は,平等的集団での場合には階層的集団よりも生産性に関連が深くなる。平等的集団では,階層的集団よりもいっそう相互作用が積極的かつ効果的で,課題遂行に寄与し,課題遂行と参加性との対応がより大きい。しかし平等的集団でも知能水準の下位群の場合には,そういう傾向はそれほど明確に示されないので,課題遂行と参加性との対応にはある限界があるだろう。 (3)3つの変数のおのおのが,相互に他の2変数によって推定される割合いは,課題Iの方が課題IIよりもおよそ大きくなる傾向がある。この要因は,成員の目標達成のための手段的相互依存関係の程度にあると考えられる。一般には,課題の困難を増すにつれて協同の度合いを高めなければならないが,課題Iは課題IIよりもこのような協同事態により適切なものとなっていることを示す。 (4)こうして,協同・競争の集団を力学的な活動体系とみる考え方を実証しえたと思われるが,3変数の相互関係の基本的な様相(configuration)からは,協同と競争の集団間に差はみとめられない。 しかし,集団成員のパーソナリティ特徴は,集団過程に劣らず重要である。集団過程とパーソナリティの相互関連を検討することが,今後の課題となる。これは他の機会に発表したいと考えている。
著者
古籏 安好
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.193-205,252, 1965-12-31 (Released:2013-02-19)
参考文献数
27

協同と競争の集団効果は, 教育社会心理学の観点から, 最も関心のある問題である。この集団効果を体系的に検討するためには, 「参加性」仮説の体系化が肝要な問題のひとつである。ここに集団参加性変数は'連帯性・勢力性および親和性の3次元に関するとして, これらの概念的および操作的定義を明らかにし, それらの測度を示した。従来かならずしも明確でなかつた参加性と凝集性を識別した。集団に関する凝集性の測度として集団への魅力と対人的魅力に関する2方法によつて, これらの関連をも検討した。以上の検討はすべて集団レベルでなされた。この実験の結論はTable15に要約される。すなわら,1) 協同集団は, 競争集団よりも連帯性・勢力性・親和性およびそれらの総合としての集団参加性の各得点で有意にまさる。特に勢力性は最も顕著な差を示す。2) 協同集団は, 競争集団よりも集団凝集性 (ATG) の得点が高くなる傾向がある。また一般的にいえば, 協同集団では競争集団におけるよりも集団内ソシオメトリックな選択数を増加する傾向がある。ソシオメトリック・テストによる対人的魅力と集団凝集性 (ATG) との間には, 有意の連関があるといえる (TabLe9, 10) 。3) 課題1とIIの得点によつて測定された集団生産性においても, 協同は競争に有意にまさる。4) 知能水準によつて構成された各類型A・B・C・D1およびD2の間に, 集団参加性とその3つの次元 (S・P・A), 集団凝集性および集団生産性の差があるかないかを, 分散分析の結果によつてみると, 競争条件下の勢力性のほかは, すべての測度の得点において有意の差がある。そして一般的にいつて, 集団としての知能水準の高い集団類型は, その低い類型よりも生産性のみならず参加性および凝集性の各変数でも有意に高い得点を持つている (Table5, 8, 14) 。