著者
古谷野 英一
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.104-110, 1984

本研究は作業者の脈拍速度曲線を先行指標として, その変化から事務ミスの発生を予知することのできる方法開発の基礎研究である.本報ではとくに脈拍速度曲線と事務ミス曲線との相関関係が成立するための要因と, 相関係数の正負の発生構造を解明することを目的した.本報では被験者40名, 実験延時間400時間, 393回の英文タイプと電卓計算作業における打鍵ミスの実験を行った.実験結果の解析から, (1)両曲線間には統計的に有意な相関関係が存在するとともに脈拍先行差が存在する, (2)脈拍先行差は両極線の相関関係の正負発生に強い影響をもつ, (3)脈拍先行差は作業種別に影響を受けないが性別にやや受ける, (4)脈拍速度曲線に変動係数を用いた場合のほうが算術平均値を用いる場合より脈拍先行差の特性が現われやすい, (5)脈拍先行差には個人別恒常性が存在しない, (6)両曲線の相関係数の正負は作業者の作業開始時点と肉体的条件に影響を受ける, などのことが解明された.
著者
古谷野 英一 宮川 裕之
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.364-371, 1988-02-15

本研究は作業者の脈拍速度曲線を先行指標として, その変化から事務ミスの発生を予知すことのできる方法の開発である.本稿では第3報, 第4報の知見を基として新しい予知方式を開発(試作)し, 被験者4名を用いて各2時間の実験を20回, 延40時間の検証実験を行い, 事務ミス発生予告警告54回のうち, 96%は平均誤打率よりも1σ以上多い場合を予知し, 79%は平均誤打率よりも2σ以上多い場合を, 平均約7分以前に予知できることが認められた.また検証実験の結果より脈拍速度曲線の変化を各データの平均値±2σ, 各データ間の差異の平均値±2σの管理限界によって監視することにより, 平均誤打率より1σ以上多くなる場合の90%を予知し, 平均誤打率より2σ以上多くなる場合を88%予知できることがわかった.なお本方式には4%の第1種のエラーがあったが, 第2種のエラーは発生しなかった.