著者
古谷野 英一
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.104-110, 1984

本研究は作業者の脈拍速度曲線を先行指標として, その変化から事務ミスの発生を予知することのできる方法開発の基礎研究である.本報ではとくに脈拍速度曲線と事務ミス曲線との相関関係が成立するための要因と, 相関係数の正負の発生構造を解明することを目的した.本報では被験者40名, 実験延時間400時間, 393回の英文タイプと電卓計算作業における打鍵ミスの実験を行った.実験結果の解析から, (1)両曲線間には統計的に有意な相関関係が存在するとともに脈拍先行差が存在する, (2)脈拍先行差は両極線の相関関係の正負発生に強い影響をもつ, (3)脈拍先行差は作業種別に影響を受けないが性別にやや受ける, (4)脈拍速度曲線に変動係数を用いた場合のほうが算術平均値を用いる場合より脈拍先行差の特性が現われやすい, (5)脈拍先行差には個人別恒常性が存在しない, (6)両曲線の相関係数の正負は作業者の作業開始時点と肉体的条件に影響を受ける, などのことが解明された.
著者
黒須 誠治
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.429-434, 1986-02-15
被引用文献数
1

製品在庫は, 需要の変動を吸収し, その影響を少なくする緩衝として, 大量見込生産型工場で用いられている.受注残も, これをもつことによって需要が減少した場合に工場に遊休を起こせしめる可能性を少なくさせることができるという意味で, 緩衝になりうる.個別受注生産型工場では, 製品在庫による緩衝はもてないから, 受注残は重要な役割を果たすと考えられる.本研究では需要の変動に対して, 緩衝としての受注残が, 遊休率の期待値およびn期間連続して遊休が生じない確率への効果を, 期間山積計画法を採用している1工程からなる工場のモデルを通して解析した.また同時に, 緩衝としての受注残がn期後の期末受注残の期待値に与える影響を解析した.ただし第1期については理論的に, 第2期以降については数値計画によって解析を行った.この解析から得られる結果は, 当面の残業計画や今後の生産能力計画の資料として活用できる.
著者
丹下 敏 堀 泰裕 石舘 達二
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.330-336, 1994-10-15

設備配置問題は製造システム設計の最終段階に位置づけられる構造確定問題とみなし得る.配置問題の解決には構造確定に固有のアプローチとして"構造指向"の方法論が必要と考える.構造設計のねらいは諸構造要素の空間配列にある.この配列構造は構造要素間の関係によって確定される.したがって構造要素間の関係づけの明確化が先決となる.ここに配置問題の解決過程が「課題確定」と「課題解決」の2段階に区分することの妥当性が導き出される.課題確定とは構造要素間の関係の明確化であり.課題解決とは明確化された構造要素間の関係にもとづく空間配列確定である.本研究では物の流れが存在する製造システムを前提とした配置設計問題の"課題確定"のための方法論を導出している.この方法論は製品, 設備, 工程に関する諸情報をデータ・ベース化し, これらデータを必要に応じて入力し, 自動処理による配置設計問題の課題が出力される仕組みになっている.
著者
堀江 良典
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.225-231, 1995-08-15
被引用文献数
1

本研究はVDT作業の休憩時間の過ごし方を主題として実験的に検討した.主作業として一位数検索・加算作業を負荷し, 一連続作業時間は60分, 休憩は15分とした.休憩時間の過ごし方は15分間閉眼安静, 5分間の肉体作業(ハーバード・ステップテスト)負荷, 10分間の精神作業(労研性能検査 : 図形分割)負荷の3条件とし, 全作業時間120分, 作業前安静5分, 作業後安静10分である.被験者は視覚, 聴覚, 筋骨格系の健康正常な男子大学生8名である.測定項目は心搏数, CFF値, 作業量, 聴覚信号弁別, 自覚症状調査, 物理的環境条件などである.結果は開眼安静といった消極的対応より, 肉体的な負荷を課すことによって大脳皮質に刺激を与え生体の活性化をはかる休憩時間の過ごし方のほうが.心身諸反応, 作業能率などの観点から有効であることが認められた.また主作業と異なる精神作業を負荷することも効果が認められた.
著者
下田 祐紀夫 櫻井 文仁 宮崎 晴夫
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.114-122, 1995-06-15
被引用文献数
3

機械加工では工具が寿命になったことに気づかなければ不良品が発生し, 生産量に変動をきたす.本論は, 2つの工具で順次加工する2段階加工を対象とし, 加工中に工具が寿命になると加工の中断時間が発生する場合に, 各工具の交換時期を決定するための統計的方法を与えている.複数工具の交換時期の決定は, 定式化の複雑さのため, 過去の実績にもとづく試行錯誤的な方法で行われているのが現状である.本論では, 2段階加工の場合に「各工具の工具交換時期」と「各工具の寿命分布」および「工具異常による加工の中断時間」が「生産能率」に与える影響を, 同時分布の概念を用いて定式化し, 能率基準のもとで, 各工具の交換時期を設計するための理論的方法を与えている.2段階加工では, 単一工程の場合と同じ方法で工具の交換を行うと生産能率が低下することを数値例で示している.
著者
古谷野 英一 宮川 裕之
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.364-371, 1988-02-15

本研究は作業者の脈拍速度曲線を先行指標として, その変化から事務ミスの発生を予知すことのできる方法の開発である.本稿では第3報, 第4報の知見を基として新しい予知方式を開発(試作)し, 被験者4名を用いて各2時間の実験を20回, 延40時間の検証実験を行い, 事務ミス発生予告警告54回のうち, 96%は平均誤打率よりも1σ以上多い場合を予知し, 79%は平均誤打率よりも2σ以上多い場合を, 平均約7分以前に予知できることが認められた.また検証実験の結果より脈拍速度曲線の変化を各データの平均値±2σ, 各データ間の差異の平均値±2σの管理限界によって監視することにより, 平均誤打率より1σ以上多くなる場合の90%を予知し, 平均誤打率より2σ以上多くなる場合を88%予知できることがわかった.なお本方式には4%の第1種のエラーがあったが, 第2種のエラーは発生しなかった.
著者
中村 信人 新宮 哲郎
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.31-37, 1983-04-15

本研究では, MRPの数理計画モデルの構築とその解法のためのアルゴリズムを提案する.まずMRP全体に関する概念的数学モデルを構築し, これをマスター・プロダクション・スケジューリングとロット・サイズ・スケジューリングの2レベル意志決定システムに分割する.そして, 二つの意志決定システムのそれぞれに対して具体的に数学モデルを定式化し, そのアルゴリズムを展開し, 最後に簡単な例解によってアルゴリズムの実行可能性を示す.
著者
片岡 洋一
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.312-319, 1984-12-15 (Released:2018-12-17)

標準原価計算による原価統制方式としての直接材料費差異分析において, 複数の直接材料が相互に代替的である場合について, 従来, 数量差異は単純に配合差異と歩留差異に分析されるだけであったが, この研究では正味数量, 仕損数量, 減損数量の三つの概念を導入し, それらの相互関係を定立したうえでより下位の原価差異にまで分析しうる基礎を与え, 新たに一般性の高い15分法を誘導する.その方法では正味配合差異, 正味歩留差異, 減損率差異, 仕損率差異, および種種の混合差異が導かれ, 個別の材料ごとの歩留の相違や正味配合と正味数量の標準値からの変化による原価差異等を導くことができ、原価統制のための情報として従来のものとくらべてより優れているといえる.
著者
塹江 清志
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.185-192, 1990-08-15 (Released:2018-12-17)

本論文の目的は, 日本人の根源的・根底的心理特性が, 「一体感」の心理であることを明らかにすることである.本居, 中根, 小此木, 土居, 源, そして木村の理論がとりあげられた.諸家の主張する日本人の心理特性について検討された結果, それらの特性が「一体感」の心理に基づいて成立することが確認された.それゆえ, 日本人の根源的・根底的心理特性が「一体感」の心理であると結論された.
著者
村杉 健 大橋 岩雄 羽石 寛寿 地代 憲弘
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.148-153, 1982-06-15 (Released:2018-12-17)
被引用文献数
2

ハーズバーグのM-H理論において, 対人関係因子はH因子とされている.しかし, 日本人の労働者にとって, 対人関係因子はM因子的傾向を有している.日本人は労働者を動機づける要因は, たいへん複雑になている.日本人は, 職務に内在する因子と対人関係因子とによって動機づけられる.本研究は, ハーズバーグの最新(1976年)のデータと比較して, それらの対人関係因子について実証的に検討したものである.
著者
瓜生 浩朗
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.300-308, 1988-12-15

物質, エネルギーという従来の二大概念に対する基本的思考論理は, 真か偽かという形式論理であった.しかし, 情報化時代が到来した現在, 新しい概念である情報は人間の価値と密接な関係があるため, 形式論理は情報に対する論理とはなりえず, 情報の論理がまだない.そこで, 情報の論理として情報のもつ価値を媒体とする価値論理を構築した.価値論理は, 生命の連続性を実現化するという目的に対して, 価値思考の法則等を研究する論理であり, 次の内容および特徴をもっている.(1)価値あり1,あいまいな価値α, および価値なし0の価値定数を定義した.(2)否定, 論理和, 論理積および, とくに論理商を定義した.(3)演算記号により結合した論理式の価値は, 価値表により評価される.(4)論理商により価値情報が創造, 生産される.
著者
飯島 正樹
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.575-580, 1995-02-15 (Released:2018-12-17)
参考文献数
9

新商品の開発は主として企業内のマーケティング部門とテクノロジー部門により行われてきた.ここ数年は, ダイレクトマーケティングや顧客満足のように, 顧客の要望を取り入れた商品開発が重視されてきている.顧客の意見には苦情(complaints)と要望(claims)があり, 本研究では苦情を中心とした口コミ情報が販売に及ぼす影響を考察している.商品を効率よく生産し販売するためのロジスティクス等のサービスや企業イメージ等の, 細分化された顧客の要求を満たす商品を販売するための情報メディアとして, 口コミは重要な役割を果たす.本研究で調査対象にした洋服は自動車に比べて, メーカーが新製品の品質向上に努力しているにもかかわらず, アフターサービスが伴っていないことを確認した.口コミ情報は, 商品購入や商品開発にとって重要なので, 顧客の意見を反映させやすいサービスシステムを確立することが肝要である.
著者
後藤 正幸 開沼 泰隆 俵 信彦
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.152-158, 1995-06-15
被引用文献数
2

階層型ニューラルネットワークの学習法であるBP学習において, 学習速度とローカルミニマの問題がある.学習の高速化に関しては, 共役勾配法が提案されており, その高速性が明らかになっているが, 初期値依存性の問題も合わせ持つ.一方, 初期値依存性に対しては, 変傾法が提案されているが, 本質的に最急降下法であるため, 学習速度の面で改良の余地がある.そこで, 本研究では変傾法の更新を共役方向に実現する変傾共役勾配法を提案する.さらに, その挙動に癖が見られることを指摘し, この癖を利用して高速化を図った改良型変傾共役勾配法を提案し, 化学プロセスの制御問題に適用してその有効性を示す.
著者
船橋 高志 金川 明弘 太田 宏
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.209-216, 1993

チェーン・サンプリング検査方式とは, 同一生産条件のもとで連続生産されるロットの受け入れ検査において, 当該ロットの検査結果のみならず過去の検査結果の履歴をも考慮して, その合否を決定する方式である, そのため, 検査ロットからの検査情報のみで合否判定を行うその他の一般的な抜取検査と比べて, サンプルサイズは小さくすむ反面, "工程品質一定"の仮定のもとに検査が構築されていることから, 工程変化の早期発見という点においては余り期待できない.本論文では, チェーン・サンプリング検査方式が適応される従来の基本仮定を踏襲しつつも, 最新の検査情報に比重をおき, 工程変化を敏感に検出することを目的に, 対象ロットに対して二回抜取検査を実施する検査方式を提案する.あわせて, 工程変化に対する検出特性並びに検査における運用コストについて, 従来のチェーン・サンプリング検査方式との比較を行い, 提案検査方式の有効性を検証する.
著者
大野 勝久 大竹 裕一 趙 暁波 木瀬 洋
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.187-193, 1995-08-15 (Released:2018-12-17)
参考文献数
11
被引用文献数
4

本論文は, ジャストインタイム生産システムにおけるライン停止のある混合品種組立ラインを考え, アイドル時間とライン停止時間を考慮した総費用を最小化する投入順序を決定する問題を論ずる.この問題にたいする分枝限定法によるアルゴリズムを開発し, 実用的なアルゴリズムとしてSimulated Annealingによるアルゴリズムを提案する.この近似アルゴリズムの種々のパラメータ値が分校限定法の厳密解を用いて効率的に設定される.そして, この近似アルゴリズムを実際の混合品種組立ラインへ適用し, その有効性を示している.