著者
清水 彩洋子 平良 暁子 畑﨑 聖弘 馬屋原 豊 平良 真人 古賀 正史
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.121-127, 2015-02-28 (Released:2015-03-05)
参考文献数
18
被引用文献数
2

HbA1cは血糖コントロール指標として広く用いられているが,貧血や異常ヘモグロビンを有する患者のHbA1cは血糖コントロールを正しく反映しない.今回,HbA1cが偽性高値を示したために,経口血糖降下薬の投与を受けた非糖尿病異常ヘモグロビンの2例を経験した.2例とも高血糖は認めなかったが,免疫法で測定したHbA1cが高値を示した.1例はスルホニルウレア薬の投与で低血糖をきたしたが,他の1例はDPP4阻害薬およびビグアナイド薬の投与のために低血糖は起こさなかった.内服薬中止後に行ったOGTTの結果,1例は境界型,他の1例は正常耐糖能であった.HbA1cと血糖の乖離より異常ヘモグロビンを疑い,グロビン遺伝子解析を行った結果,β鎖のヘテロ変異を認め,Hb Himeji[β140Ala→Asp]と診断した.今回の経験より,糖尿病の診断はHbA1cのみでは行ってはならないことを再認識した.
著者
古賀 正史 村井 潤 曽我 純子 斎藤 博
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.841-848, 2013

異常ヘモグロビンはHbA1cが異常値を示すために血糖コントロール状態の判断を誤る危険性がある.今回,人間ドック受診者でHbA1c(NGSP値)の異常低値(4.2 %未満)を契機に発見した異常ヘモグロビンの5例を報告する.HPLC法で測定したHbA1c(HPLC-HbA1c)の異常低値例に対して,グリコアルブミン(GA)および免疫法によるHbA1c(IA-HbA1c)を測定した.HPLC-HbA1cがGAおよびIA-HbA1cと乖離した非糖尿病の5例全員に<i>β</i>鎖グロビンのヘテロ変異(Hb Shizuoka 1例,Hb Moriguchi 2例,Hb G-Szuhu 2例)を認めた.HPLC-HbA1cが異常低値を呈し,GAおよびIA-HbA1cとの乖離を認めれば,異常ヘモグロビンが強く疑われる.HPLC-HbA1cが異常低値を示す例に対して我々が用いている診断のためのフローチャートを併せて提示する.