著者
伊藤 朗 古賀 由香 秦野 伸二 三上 俊夫 村上 秀明 後藤 浩史 丹 信介
出版者
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
雑誌
尿酸 (ISSN:03884120)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.65-74, 1986 (Released:2012-11-27)
参考文献数
21
被引用文献数
2

各種スポーツマン, すなわち陸上競技の投てき(以後投てきと略),同短距離(以後短距離と略),同跳躍(以後跳躍と略),同長距離(以後長距離と略),器械体操,水球,水泳,ラグビー・フォワード( 以後フォワードと略) , 同バックス(以後バックスと略),野球,ハンドボール(以後ハンドと略),バレーボール(以後バレーと略),バスケットボール(以後バスケと略),サッカー,弓道,スキー,テニス,柔道,モトクロスの尿酸代謝について検討した.被検者は,18-29歳の男性211名とした.結果は以下のとおりである.1)全員の血清尿酸値(以後SUAと略)は,正規分布を示し,平均値は5.95mg/dl,2 S.D.は3.07-8.83mg/dlであった.種目別のSUAは高値順から投てき,水球,野球と続き,低値順からはモトクロス,跳躍,バレーと続いた.2)全員の高尿酸血症(7,5mg/dl以上)発症率(以後発症率と略)は9.95%,種目別発症率は,高率順から投てき,野球(各25%),テニス(20%)と続き,モトクロス,弓道,スキーなど7種目は発症しなかった.3)全員の尿中尿酸排泄量は,正規分布を示し,平均値は692mg/day,2S.D.は220-1,161mg/dayであった.種目別では,高値順から野球,柔道,バックスと続き,低値順からは器械体操,水泳,弓道と続いた.4)全員の尿酸クリァランス(以後CUAと略)は,対数正規分布を示し,平均値は7.87ml/min,2S.D.は3.35-18.49ml/minであり,種目別では高値順から長距離,バレー,バックスと続き,低値順からは器械体操,サッカー,テニスと続いた.5)全員のSUAとCUAには相関が認められ,相関係数は- 0.523 (p<0.001) であった.以上の結果および各種目の運動特性を考慮すると以下の示唆が得られた.1)アマの一流でない一般のスポーツマンのSUAは,一般人の平均値より高値が13種目,低値が6 種目, また発症率が一般人より高率が7種目,同率5種目,低率7種目であり種目間の差が著しく,なかには運動の影響のみられない種目があることが示唆された.本対象のSUA,発症率は最高でもプロ,アマー流選手より低く,活躍度が関係していることが示唆された.2)各種目の運動特性と尿酸代謝の関係は,パワー,有気的持久性,無気的持久性が多く含まれている種目の影響が大きく,なかでもパワーの影響が大きい.またパワー,有気的持久性が多く含まれ,無気的持久性の少ない種目は,尿酸産生過剰型であることが示唆された.一方,無気的持久性が多く含まれる種目は,尿酸排泄低下型であるが,パワー,有気的持久性の要素も含まれる種目では産生過剰の両型あることが示唆された.