著者
古隅 阿子 三輪 眞木子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.157-177, 2022 (Released:2022-09-30)
参考文献数
51

教育研究環境の変化に伴い大学図書館に求められる役割や機能も変わりつつあるが,設置者の種類(国立・公立・私立)や大学の規模によって,新たな設備やサービスへの対応状況に格差が生じている。本研究の目的は,大学図書館で近年整備が進むアクティブ・ラーニング・スペース(以下,ALS)の整備状況における大学図書館の格差を把握し,その要因を探ることである。学術情報基盤実態調査のデータ分析から,公立大学や小規模大学におけるALS 設置状況が国立大学と比べて低調なことが明らかとなった。この結果を踏まえ,公立大学図書館に焦点を当ててALS 整備関連の事業報告を分析した。更に規模の異なる公立大学4 校の図書館へのインタビュー調査を実施し,現場を支える図書館職員の声を直接聞くことで,公立大学図書館が予算や人材の削減が続く厳しい状況に置かれていることを把握した。これらの知見は,公立大学図書館の将来を検討する際の手掛かりとなる。