著者
三輪 眞木子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.611-621, 2012 (Released:2012-01-01)
参考文献数
11
被引用文献数
2

情報通信技術の発展に伴う知識経済社会の到来により,図書館を取り巻く環境は急激な変化を遂げつつある。図書資料の電子化とネットワークを通じた流通の進展は,図書館員に求められる知識やスキルを印刷資料を対象とするものから電子資料や情報通信ネットワークを対象とするものに拡大している。欧米では,図書館情報専門職教育の質保証と専門職資格の国境を超えた流動性向上を目指して,専門職養成カリキュラムの等価性や互換性を支える仕組みが構築されてきた。また,教育機関の名称を,library schoolからinformation schoolに変えるとともに,カリキュラムの内容を大きく変化させている。日本の「司書」制度はこの動きから取り残されている。本論文は,日本の図書館が,知識経済社会の基盤を支える組織として生き残るために必要な情報専門職教育の在り方と,それを実現するために必要な取り組みを提案する。
著者
高久 雅生 江草 由佳 寺井 仁 齋藤 ひとみ 三輪 眞木子 神門 典子
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.224-235, 2009-05-16 (Released:2009-06-27)
被引用文献数
1 4

Web 情報探索行動中のサーチエンジン検索結果一覧ページ(以下,SERP と呼ぶ)に対する行動に着目し,ユーザ実験の方法論により,視線データ,ブラウザログ,事後インタビュー等の情報を包括的に用いて,ユーザ属性,タスク属性,クエリ属性の3 つの要因と,眼球運動による視線データとの関連を探った.分析の結果,SERP における行動の説明変数としては,他の要因に比べてInformation/Navigational クエリの違いによる効果が最も大きく,SERP への遷移の直接的な原因となるクエリ種別により,ユーザの行動を予測しうる可能性が示唆された.
著者
高久 雅生 江草 由佳 寺井 仁 齋藤 ひとみ 三輪 眞木子 神門 典子
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.249-276, 2010-10-22 (Released:2010-12-08)
参考文献数
41
被引用文献数
3

Web利用者の情報探索行動の理解のために,眼球運動データ,ブラウザログ等の情報を包括的に用いて,ユーザ特性,タスク種別の違いがいかに探索行動に影響しうるかを検討した.ユーザ特性として図書館情報学専攻の大学院生と一般学部生の2グループを設定し,それぞれ大学院生5名,学部生11名が実験に参加した.タスク種別としてレポートタスクと旅行タスクの2つを設定して,それぞれ15分間ずつのWeb探索行動を観察した.実験の結果,タスク種別の影響として,サーチエンジンの検索結果一覧ページ上における視線注視箇所として,旅行タスクではスポンサーリンク,レポートタスクではスニペット領域がより多く見られるなど,タスク毎に着目する情報が異なることが示された.また,旅行タスクではサーチエンジン検索結果一覧ページから2回以上たどったページの閲覧回数がより多く,異なるタスクにおいて情報収集方略が異なる傾向が示唆された.一方でユーザ特性の影響として,大学院生は学部生に比べて,ページ閲覧をすばやく行い,タブ機能を用いた並列的な閲覧行動も観察されるなど,効率的な情報収集を目指した行動の差異が見られた.
著者
中尾 教子 三輪 眞木子 青木 久美子 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.49-60, 2014-05-20 (Released:2016-08-11)
被引用文献数
5

本研究では,日常的に実物投影機とコンピュータが活用されている小学校の事例の分析を通じて,ICT活用に関する教員間コミュニケーションの特徴を明らかにすることを目的とする.教員へのインタビューの結果を元に,情報や助言を求める相手,求められる相手について,矢印を用いた「コミュニケーションフロー」として図示した.その結果,多くは,教職経験の短い教員から長い教員へ,また実物投影機やコンピュータの活用開始時期の遅い教員から早い教員へ情報を求める傾向があった.さらに,矢印が集中する2名の教員の存在が明らかになった.調査対象校では,ほぼ全ての教員が,この2名を中核とする全校的なコミュニケーションのネットワークに組み込まれており,教科指導におけるICT活用についてだけでなく実物投影機やコンピュータに関する技術的な内容についても情報や助言を得ることができる環境にあることが明らかになった.
著者
古隅 阿子 三輪 眞木子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.157-177, 2022 (Released:2022-09-30)
参考文献数
51

教育研究環境の変化に伴い大学図書館に求められる役割や機能も変わりつつあるが,設置者の種類(国立・公立・私立)や大学の規模によって,新たな設備やサービスへの対応状況に格差が生じている。本研究の目的は,大学図書館で近年整備が進むアクティブ・ラーニング・スペース(以下,ALS)の整備状況における大学図書館の格差を把握し,その要因を探ることである。学術情報基盤実態調査のデータ分析から,公立大学や小規模大学におけるALS 設置状況が国立大学と比べて低調なことが明らかとなった。この結果を踏まえ,公立大学図書館に焦点を当ててALS 整備関連の事業報告を分析した。更に規模の異なる公立大学4 校の図書館へのインタビュー調査を実施し,現場を支える図書館職員の声を直接聞くことで,公立大学図書館が予算や人材の削減が続く厳しい状況に置かれていることを把握した。これらの知見は,公立大学図書館の将来を検討する際の手掛かりとなる。
著者
根本 彰 影浦 峡 青柳 英治 海野 敏 小田 光宏 河西 由美子 岸田 和明 倉田 敬子 古賀 崇 鈴木 崇史 竹内 比呂也 谷口 祥一 研谷 紀夫 中村 百合子 野末 俊比古 松本 直樹 三浦 太郎 三輪 眞木子 芳鐘 冬樹 吉田 右子 今井 福司 河村 俊太郎 浅石 卓真 常川 真央 南 亮一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

5年間にわたる本プロジェクト(通称LIPER3)では、過去2回のLIPER研究で抽出した図書館情報学教育の問題構造に変化を与えるために次の実践研究を行った。第一に、図書館情報学教育の教育内容を見直すために、新しい標準的な教科書シリーズを執筆し刊行した。第二に、この標準的な教育内容に沿って各教育機関がどのような教育成果を上げているかを自己評価できるように、図書館情報学検定試験を4年間にわたり実施した。第三に、外国の図書館情報学教育の状況を把握し関係者と交流するために、アメリカの標準的教科書を翻訳・刊行し、国際学会で日本の図書館情報学教育について発表し、欧米の教育機関での聞き取り調査を実施した。
著者
高久 雅生 江草 由佳 寺井 仁 齋藤 ひとみ 三輪 眞木子 神門 典子
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.224-235, 2009-05-16
被引用文献数
4 4

Web情報探索行動中のサーチエンジン検索結果一覧ページ(以下,SERPと呼ぶ)に対する行動に着目し,ユーザ実験の方法論により,視線データ,ブラウザログ,事後インタビュー等の情報を包括的に用いて,ユーザ属性,タスク属性,クエリ属性の3つの要因と,眼球運動による視線データとの関連を探った.分析の結果,SERPにおける行動の説明変数としては,他の要因に比べてInformation/Navigationalクエリの違いによる効果が最も大きく,SERPへの遷移の直接的な原因となるクエリ種別により,ユーザの行動を予測しうる可能性が示唆された.
著者
高久 雅生 江草 由佳 寺井 仁 齋藤 ひとみ 三輪 眞木子 神門 典子
出版者
Japan Society of Information and Knowledge
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.249-276, 2010-10-22
被引用文献数
1

Web利用者の情報探索行動の理解のために,眼球運動データ,ブラウザログ等の情報を包括的に用いて,ユーザ特性,タスク種別の違いがいかに探索行動に影響しうるかを検討した.ユーザ特性として図書館情報学専攻の大学院生と一般学部生の2グループを設定し,それぞれ大学院生5名,学部生11名が実験に参加した.タスク種別としてレポートタスクと旅行タスクの2つを設定して,それぞれ15分間ずつのWeb探索行動を観察した.実験の結果,タスク種別の影響として,サーチエンジンの検索結果一覧ページ上における視線注視箇所として,旅行タスクではスポンサーリンク,レポートタスクではスニペット領域がより多く見られるなど,タスク毎に着目する情報が異なることが示された.また,旅行タスクではサーチエンジン検索結果一覧ページから2回以上たどったページの閲覧回数がより多く,異なるタスクにおいて情報収集方略が異なる傾向が示唆された.一方でユーザ特性の影響として,大学院生は学部生に比べて,ページ閲覧をすばやく行い,タブ機能を用いた並列的な閲覧行動も観察されるなど,効率的な情報収集を目指した行動の差異が見られた.
著者
三輪 眞木子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.2-8, 2013
参考文献数
24

検索の歴史を振り返り将来を展望した。システム志向とユーザ志向のアプローチの立脚点を概観し,研究開発の歴史を両者のせめぎあいから歩み寄りに至るプロセスと位置づけ,両アプローチの概念モデルを紹介した。検索システムの進化を捉える軸として,適合性,情報探索プロセスモデル群,コストと時間削減のあゆみ,および学習や調査のための探索型検索への対応を取り上げた。あらゆるタスクやゴールを目指すユーザがいつでもどこにいても制約なく楽しみながら求める情報を入手することを検索の目標と位置づけ,その実現のために,適合性に代わる検索システム評価基準として知識の変化を測定する尺度の必要性に言及した。
著者
田村 俊作 三輪 眞木子 池谷 のぞみ 齋藤 泰則 越塚 美加 河西 由美子 齋藤 誠一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

公共図書館の課題対応型サービスが定着するための条件を明確にすることを目的に各種調査を行い,以下の点を明らかにした。(1)サービスは複合的であり,重点の置き方は図書館により異なる。(2)図書館員はサービスの多様性を容認している一方,業務負担の増大に対して根強い抵抗がある。(3)従って,課題対応型のサービスに対する図書館員の理解と参加,および必要な技能の獲得が鍵となる。(4)また,関連組織との協働型の連携がサービス展開に効果的である。
著者
高久 雅生 江草 由佳 寺井 仁 齋藤 ひとみ 三輪 眞木子 神門 典子
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
pp.1005110019-1005110019, (Released:2010-05-24)
参考文献数
41
被引用文献数
3

Web利用者の情報探索行動の理解のために,眼球運動データ,ブラウザログ等の情報を包括的に用いて,ユーザ特性,タスク種別の違いがいかに探索行動に影響しうるかを検討した.ユーザ特性として図書館情報学専攻の大学院生と一般学部生の2グループを設定し,それぞれ大学院生5名,学部生11名が実験に参加した.タスク種別としてレポートタスクと旅行タスクの2つを設定して,それぞれ15分間ずつのWeb探索行動を観察した.実験の結果,タスク種別の影響として,サーチエンジンの検索結果一覧ページ上における視線注視箇所として,旅行タスクではスポンサーリンク,レポートタスクではスニペット領域がより多く見られるなど,タスク毎に着目する情報が異なることが示された.また,旅行タスクではサーチエンジン検索結果一覧ページから2回以上たどったページの閲覧回数がより多く,異なるタスクにおいて情報収集方略が異なる傾向が示唆された.一方でユーザ特性の影響として,大学院生は学部生に比べて,ページ閲覧をすばやく行い,タブ機能を用いた並列的な閲覧行動も観察されるなど,効率的な情報収集を目指した行動の差異が見られた.
著者
三輪 眞木子 仁科 エミ 黒須 正明 高橋 秀明 柳沼 良知 廣瀬 洋子 秋光 淳生 Makiko Miwa Emi Nishina Masaaki Kurosu Hideaki Takahashi Yoshitomo Yaginuma Yoko Hirose Toshio Akimitsu
出版者
放送大学
雑誌
放送大学研究年報 = Journal of The Open University of Japan (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
no.32, pp.101-111, 2014

本研究は、面接授業「初歩からのパソコン」の受講で習得した放送大学生のデジタル・リテラシー・スキル(以下「DLスキル」)の定着状況把握を目的に実施した。この授業を2010年度2学期から2013年度1学期の間に受講した在学生に2013年11月に郵送アンケートを実施した。調査結果は、DLスキルの種類により、定着したもの、低下したもの、向上したものがあること、DLスキルの定着には、受講生の年齢、受講生のパソコン・インターネットの利用頻度が影響を及ぼしていること、DLスキルの向上とパソコン・インターネット利用頻度の間に相関があること、DLスキルの定着には、受講生のその後の学習方法が影響を及ぼしていることを示した。受講直後から本調査の期間に低下したDLスキルについて、授業後のスキル活用の機会を増加させる必要性が示唆された。また、定着効果のあるテレビ授業「遠隔学習のためのパソコン活用」の受講と同好会等への参加を促す必要性が示唆された。
著者
三輪 眞木子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.536-541, 2018-11-01 (Released:2018-11-01)

多様な文脈において人間が情報ニーズを生成し,そのニーズを満たすために情報を試行錯誤により探し出し,有用な情報を獲得し,それを利用するという一連のプロセスである探索型検索は,探索者の知識構造を変化させる究極の自律学習である。情報を探しやすくするには,探索的検索をシームレスに実行できるようなシステム環境を整備するとともに,探索者の経験知,領域知識,自己効力感を高める必要がある。インフォプロには,情報システムの整備とともに,情報探索プロセスの理解,情報探索を通じた効率的・効果的な自律学習方法の伝授,情報探索経験知の形式知への変換が求められる。
著者
江草 由佳 高久 雅生 齋藤 ひとみ 寺井 仁 三輪 眞木子 神門 典子
雑誌
研究報告情報学基礎(FI)
巻号頁・発行日
vol.2009-FI-95, no.20, pp.1-7, 2009-07-21

本研究では,サーチエンジンを用いた Web の情報探索行動を対象に,サーバサイドのクリックスルーログからだけでは捉えることのできない,サーチエンジンから検索結果を取得した後の探索行動を含めた全体の情報探索行動の特徴を明らかにすることを目的とし,課題の志向性や利用者の経験が与える影響について実験的な検討を行った.実験には大学学部生 11 名および大学院生 5 名が参加した.実験参加者には,世界史のレポートを作成するための情報を収集する 「Report 課題」 と,国内旅行の計画を立てるための情報を収集する 「Trip 課題」 の 2 つが与えられ,それぞれ 15 分間ずつ取り組んだ.どれくらいサーチエンジンの検索結果から離れたかを示す指標:LinkDepth を提案し,Link Depth を用いて実験参加者の Web 閲覧の特徴を示した.
著者
一ノ渡 勝彦 三輪 眞木子 本橋 秀世 松山 禎憲 井手 添貢
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.583-595, 1989 (Released:2012-03-23)
参考文献数
3

産業界における知的所有権への関心が高まっている現状を踏まえて, 昭和43年~62年まで20年間の特許の中から集合住宅計画に影響を及ぼす特許630件を抽出し, 集合住宅業界の技術動向を調査した。分析ツールとして, 大・中・小分類とキーワードから成る独自の分類体系を開発した。それを基に, 技術要素と達成課題, および出願人からみた出願傾向を分析した結果, 前者では住宅生産技術の変遷とほぼ一致する動向が, 後者では全体の2/3強をゼネコンと住宅関連企業が占める傾向が得られた。また, 調査対象特許をビジュアル化表現による冊子体の二次資料として編集し, 特許情報にアクセスしやすいツールを開発した。
著者
田村 俊作 高山 智子 三輪 眞木子 池谷 のぞみ 越塚 美加 八巻 知香子 須賀 千絵
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

公共図書館の医療・健康情報サービスを適切にデザインするための知見を得ることを目的に,医療・健康情報サービスの現状調査を行ない,アクションリサーチによりサービス普及を試行した。がん相談支援センターとの連携によるサービスには可能性があり,大規模図書館を中心にサービスは普及しはじめているが,実施自治体は公共図書館設置自治体の2割に達しておらず,普及に向けて多くの課題があること,特に公共図書館員に関連知識・技能の修得機会を提供する必要のあることが明確になった。
著者
田村 俊作 三輪 眞木子 池谷 のぞみ 齋藤 泰則 越塚 美加 河西 由美子 齋藤 誠一
雑誌
科学研究費補助金研究成果報告書
巻号頁・発行日
2011 (Released:2012-00-00)

研究種目 : 基盤研究(B)研究期間 : 2008~2011課題番号 : 20300087研究分野 : 総合領域科研費の分科・細目 : 情報学・図書館情報学・人文社会情報学 公共図書館の課題対応型サービスが定着するための条件を明確にすることを目的に各種調査を行い、以下の点を明らかにした。①サービスは複合的であり、重点の置き方は図書館により異なる。②図書館員はサービスの多様性を容認している一方、業務負担の増大に対して根強い抵抗がある。③従って、課題対応型のサービスに対する図書館員の理解と参加、および必要な技能の獲得が鍵となる。④また、関連組織との協働型の連携がサービス展開に効果的である。
著者
三輪 眞木子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.611-621, 2012
被引用文献数
2

情報通信技術の発展に伴う知識経済社会の到来により,図書館を取り巻く環境は急激な変化を遂げつつある。図書資料の電子化とネットワークを通じた流通の進展は,図書館員に求められる知識やスキルを印刷資料を対象とするものから電子資料や情報通信ネットワークを対象とするものに拡大している。欧米では,図書館情報専門職教育の質保証と専門職資格の国境を超えた流動性向上を目指して,専門職養成カリキュラムの等価性や互換性を支える仕組みが構築されてきた。また,教育機関の名称を,library schoolからinformation schoolに変えるとともに,カリキュラムの内容を大きく変化させている。日本の「司書」制度はこの動きから取り残されている。本論文は,日本の図書館が,知識経済社会の基盤を支える組織として生き残るために必要な情報専門職教育の在り方と,それを実現するために必要な取り組みを提案する。