著者
吉久 徹 遠藤 斗志也 遠藤 斗志也
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

tRNAの一生における細胞内動態の全貌を明らかにする目的で、出芽酵母より新たなtRNA結合タンパク質の生化学的な単離・同定を行った。Hsp70ファミリーに属すSsa2pが新規tRNA結合タンパク質として同定され、実際、栄養飢餓時に見られるtRNAの核内輸送因子であることが、in vivo、in vitroの実験で明らかとなった。併せて、RNAの3'末端を配列特異的に可視化できる手法を開発した。
著者
吉久 徹
出版者
名古屋大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

本年度は、出芽酵母の小胞体ストレス応答(UPR)で非典型的細胞質スプライシングを受けるHAC1 mRNAとRNPを形成することがわかった酵母tRNA ligase Rlg1pの遺伝学的解析を中心に研究を進め、さらに組換えRlg1pを用いたin vitroでの解析へと展開を図った。まず、tRNA ligaseの持つ、tRNAのスプライシング酵素としての機能、HAC1 mRNAのスプライシング酵素としての機能、そして、HAC1 mRNAの翻訳制御因子としての機能が個別に異常となった変異が単離できるかを検討した。多数の温度感受性rlg1およびUPR欠損rlg1を単離・解析した結果、上記の3つのいずれかの機能にだけ欠損を示す変異をそれぞれ単離することができた。特にtRNAのスプライシングに欠損を示すrlg1変異には、単にligation反応が進まない結果としてエキソンが蓄積する変異だけでなく、イントロンを含んだ前駆体も蓄積するもの、さらには、切断されたイントロンも蓄積するものが得られ、Rlg1pがtRNAのスプライシングの複数の局面に必要とされる可能性が示された。また、UPR欠損変異には、明らかにHAC1 mRNAのスプライシングが低下しているものと、そこそのHAC1^i mRNAが生じているにも関わらず、Hac1^iタンパク質の合成できない変異が存在した。これは、Rlg1pが翻訳制御に特異的に働くドメインを持つことを示唆している。さらに、Rlg1p組換え体を用いたin vitroのpull down実験によって、Rlg1pがIre1pで切断される前のHAC1^u mRNAを直接結合することが確認できた。以上のことから、Rlg1pはtRNAやHAC1 mRNAとRNPを形成しつつ、そのスプライシングおよび翻訳制御に直接関わることが明らかとなった。