著者
吉澤 和徳 吉冨 博之 上村 佳孝
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

標本収集:国内でのフィールド調査により,より幅広い範囲のチャタテムシの形態解析用サンプルが得られた.ヒョウモンチョウ,マルハナノミのサンプリングも継続して行い,追加サンプルが得られた.遺伝子解析:前年度解析したミトコンドリアゲノム情報に基づき,トリカヘチャタテの分子系統解析に必要な追加プライマーの設計を終え,データもほぼそろった.現在外群のデータを追加している状態である.予備解析ではトリカヘチャタテ内の系統関係の解像度も高く,また近縁な Afrotrogla, Sensitibilla, Spekeletor 属との系統関係に関しても良好な解析結果が得られている.トリカヘチャタテの親子判別,集団構造解析に必要なマイクロサテライトプライマーも完成し,それらを報告した論文が受理され,現在印刷中である.形態解析:SPring8での追加の形態解析を行い,十分なデータを集めた.特に,トリカヘチャタテの精子貯蔵構造に興味深い発見があり,それらの解析をほぼ終え,論文の執筆を開始している段階にある.雌ペニスに関連した構造の解析も進めており,現在は比較に必要な雌ペニスを持たない通常のチャタテムシの交尾器の状態の解析を進めている.加えて,共焦点レーザー顕微鏡を用いた解析も進めており,これらの構造のタンパク質構成などについても解析を進めている.サブプロジェクト:プロジェクトを通して得られたトリカヘチャタテなどのサンプルを用いて,交尾器以外の形態の観察も行った.特に,前後翅を連結する構造の解析を行い,その結果を論文として出版した.この構造から,トリカヘチャタテの飛翔能力が弱いであろう事も傍証された.受賞:本プロジェクトでイグ・ノーベル賞生物学賞を受賞した.