著者
吉原 智仁 森本 忠嗣 塚本 正紹 園畑 素樹 馬渡 正明
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.845-848, 2016-09-25 (Released:2016-12-06)
参考文献数
15

比較的稀な脊髄硬膜外血腫の3例を経験した.症例は,男性1例,女性2例,年齢は49歳,71歳,73歳である.発症時の症状はいずれも突然の背部痛であり,2例はその後麻痺を認めた.既往歴は高血圧2例,Hippel Lindau病1例であった.抗凝固薬内服例はなかったが,1例は片麻痺を呈していたため脳梗塞と判断され,t-PA治療がなされていた.血腫部位は頸椎部1例,頸胸椎部2例であった.背部痛のみで麻痺を認めなかった1例は保存治療を行い,不変・増悪の2例(t-PA治療例含む)は手術を行い,2例ともに改良Frankel分類でC1からEへと改善した.麻痺を呈さない症例については保存治療,麻痺の程度が不変・増悪例については手術治療が有効であった.また脊髄硬膜外血腫は片麻痺で発症する場合もあり,脳梗塞と誤診されt-PA治療により血腫増大,麻痺増悪を来たした報告も散見され,注意を要する疾患である.
著者
吉原 智仁 森本 忠嗣 釘崎 創 塚本 正紹 園畑 素樹 馬渡 正明
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.319-321, 2015-03-25 (Released:2015-05-22)
参考文献数
8

腰椎疾患を治療する場合に股関節疾患が潜在している症例も少なくない.腰椎単純X線に股関節を含めることは見逃しを予防できる利点がある.今回佐賀県整形外科標榜医療施設110施設における腰椎レントゲンの撮影方法についての実態を調査した.腰椎レントゲンフィルムの大きさ,股関節を含めているか,脊椎外科専門医勤務歴があるかを調査し,脊椎外科専門医勤務歴の有無で腰椎単純X線正面像に股関節を含めている割合を検討した.腰椎単純X線フィルムの大きさは半切12%,大角21%,B4 17%,大四切19%,四切31%であった.股関節を含めていた施設は25%であった.脊椎外科専門医の勤務歴は25%であり,脊椎外科専門医勤務歴ありの施設では46%,勤務歴なしの施設では18%で股関節を含めていた.股関節疾患の症状と神経根性疼痛が類似していることより,誤診を予防するためには腰椎レントゲン正面像に股関節を含めることが推奨される.
著者
角田 憲治 浅見 昭彦 石井 英樹 吉原 智仁 田中 博史 重松 正森
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.69-71, 2011-03-25 (Released:2011-06-02)
参考文献数
9

過去5年間に当科で治療を行った特発性後骨間神経麻痺9例(男性4例,女性5例,平均年齢62.1歳,平均経過観察期間11.7か月)の治療成績を報告する.3例は保存的治療で軽快し,手術的治療を行ったのは6例であった.3例に対し神経線維束間剥離のみを行い,残りの3例は神経線維束間剥離に加え,一期的に腱移行術を行った.神経線維束間剥離のみを行った3例はいずれも発症から約10か月で手術が行われ,全例MMT4以上に改善を認めた.一期的に腱移行を行った3例のうち,2例はMMT4以上に改善したが,糖尿病,頚髄症を合併した1例は回復が悪かった.麻痺に先行する疼痛を伴った症例は33%であった.後骨間神経の所見でくびれを認めた症例はなかったが,神経の色調の変化を3例に認めた.発症後約10か月の経過観察が妥当であるが,合併症がある症例や高齢など回復が期待できない場合は一期的な再建も考慮してよいと思われた.