著者
森本 忠嗣
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.96-101, 2008 (Released:2008-12-22)
参考文献数
20
被引用文献数
3 3

SLRテスト陽性(以下,SLR(+))の定義が明記してある文献(和文32編,英文28編,整形外科教科書から20編)を調査した.SLRテストは手技により自動と他動に分類され,さらに使用目的により疼痛評価,筋力評価,柔軟性評価に細分類され,SLR(+)の定義は評価者によりさまざまであった.とりわけ,疼痛評価の場合,SLR(+)とする疼痛誘発部位は腰部,下肢,坐骨神経痛などであり,角度も70~80度以下と多様であった.本研究よりSLR(+)の定義は目的や疼痛部位によりさまざまであり教科書レベルでも統一された定義がないことが明らかになった.そのため,SLR(+)の定義を明確にしていない報告の解釈には注意が必要である.反面,SLR(+)の定義の多様性は,SLRテストが腰下肢痛の誘発テストとして感度が高く,幅広い病態評価が可能な手技であることの反映と思われた.
著者
吉原 智仁 森本 忠嗣 塚本 正紹 園畑 素樹 馬渡 正明
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.845-848, 2016-09-25 (Released:2016-12-06)
参考文献数
15

比較的稀な脊髄硬膜外血腫の3例を経験した.症例は,男性1例,女性2例,年齢は49歳,71歳,73歳である.発症時の症状はいずれも突然の背部痛であり,2例はその後麻痺を認めた.既往歴は高血圧2例,Hippel Lindau病1例であった.抗凝固薬内服例はなかったが,1例は片麻痺を呈していたため脳梗塞と判断され,t-PA治療がなされていた.血腫部位は頸椎部1例,頸胸椎部2例であった.背部痛のみで麻痺を認めなかった1例は保存治療を行い,不変・増悪の2例(t-PA治療例含む)は手術を行い,2例ともに改良Frankel分類でC1からEへと改善した.麻痺を呈さない症例については保存治療,麻痺の程度が不変・増悪例については手術治療が有効であった.また脊髄硬膜外血腫は片麻痺で発症する場合もあり,脳梗塞と誤診されt-PA治療により血腫増大,麻痺増悪を来たした報告も散見され,注意を要する疾患である.
著者
森本 忠嗣 小西 宏昭 奥平 毅
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.145-149, 2009 (Released:2009-12-19)
参考文献数
5

腰椎椎間板ヘルニア(以下LDH)と変形性股関節症(以下OAH)に対するSLRテストで生じる臨床所見を比較検討した.対象はLDH102例,OAH141例である.両群とも手術施行例であり,両疾患の合併例は除外した.両群に対してSLRテストで生じる臨床所見を調査した.結果は,SLR角70度未満はLDH79%,OAH26%,疼痛誘発率はLDH83%,OAH25%であり,いずれもLDHで有意に高かった(P<0.01).誘発疼痛部位は,膝以下(臀部から膝以下までの疼痛)はLDH47%,OAH0%,臀部(臀部から大腿後面の疼痛)はLDH36%,OAH9%であった.本研究結果から,SLRテストの陽性率はLDHで有意に高く,LDHの診断におけるSLRテストの有用性が確認できた.しかしながら,両群ともSLRテストで臀部痛のみが誘発される症例があり鑑別に注意が必要である.
著者
森本 忠嗣 會田 勝広 西田 圭介 角田 憲治 前田 和政 佛淵 孝夫
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.356-360, 2003 (Released:2004-04-28)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

This study was designed to investigate the changes of low back pain and saggital pelvic inclination over time after total hip arthroplasty (THA) in osteoarthrosis (OA) of the hip. Fifty OA cases were classified into three groups according to age: Adult; 40 to 64 years of age, 19 hips; Young-Old; 65 to 74 years of age, 16 hips; Old-Old; 75 years of age ∼16 hips. The incidence of low back pain before THA was about 60% in all groups, but the transition of low back pain after THA was that the low back pain tended to improve more in the younger group. No improvement was seen in the “Old-Old” group. The degree of saggital pelvic inclination was calculated from the transverse axis length (b/a) ratio of the radiological shape of the pelvic cavity in antero-posterior radiographs. As a result, we found that the pelvis tended to incline posteriorly with increasing age. Therefore, pelvic anterior inclination was found in all “Adult patients” and pelvic posterior inclination in most “Old-Old patients”. After THA, the pelvis in most patients tended to slightly incline posteriorly over time.
著者
田島 智徳 西田 圭介 會田 勝広 森本 忠嗣 北島 将 小河 賢司 馬渡 正明 佛淵 孝夫
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.626-629, 2007 (Released:2007-11-27)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

日常生活における前屈動作は股関節と脊椎の協調動作であり互いに密接に関わりあっている.変形性股関節症患者における股関節と脊椎の前屈時の動作関係を明らかにするために,立位中間位および座位前屈位の単純X線側面像を用いて股関節可動域と腰椎可動域を測定した.対象は初回人工股関節全置換術を受けた40~88歳(平均62歳)の変形性股関節症の女性患者164例であり,術前の単純X線で評価した.中間位からの前屈動作で股関節と腰椎と合計して80~120度屈曲していた.腰椎変性の強い高齢者ほど前屈時の腰椎可動域が小さく,変形性股関節症があるのにもかかわらず主に股関節で前屈していた.中高年者は腰椎変性が進行していないため,主に腰椎で前屈しており股関節可動域は小さかった.そのため変形性股関節症の罹病期間が長くなると腰椎へ過度の負荷がかかることとなり,腰痛や腰椎変性の原因となることが予想される.
著者
會田 勝広 森本 忠嗣 西田 圭介 前田 和政 佛淵 孝夫
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.846-853, 2004 (Released:2005-06-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

In the present study, changing in pelvic inclination before total hip arthroplasty (THA) were investigated using 59 patients with osteoarthritis of the hip. The subjects were divided into following four groups by their age: Group A consisted of 21 patients between 45 and 54 years, Group B 10 patients between 55 and 64, Group C 18 patients between 65 and 74, and Group D 10 patients at 75 years or older. Pelvic inclination became retroverted with age, further retroverting at the standing position especially in elderly people. When performing THA on patients with severe pelvic retroversion, alignments of the lumber spine, pelvis, and hip should be carefully considered. Insertion of acetabular socket should be considered in some cases taking into account standing position or pelvic inclination in future. In elderly people with lumbar degenerative kyphosis and severe pelvic retroversion, it was important to insert the acetabular socket in prospect of future changes of the pelvis inclination since the pelvis retroverts according to posture and age.
著者
吉原 智仁 森本 忠嗣 釘崎 創 塚本 正紹 園畑 素樹 馬渡 正明
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.319-321, 2015-03-25 (Released:2015-05-22)
参考文献数
8

腰椎疾患を治療する場合に股関節疾患が潜在している症例も少なくない.腰椎単純X線に股関節を含めることは見逃しを予防できる利点がある.今回佐賀県整形外科標榜医療施設110施設における腰椎レントゲンの撮影方法についての実態を調査した.腰椎レントゲンフィルムの大きさ,股関節を含めているか,脊椎外科専門医勤務歴があるかを調査し,脊椎外科専門医勤務歴の有無で腰椎単純X線正面像に股関節を含めている割合を検討した.腰椎単純X線フィルムの大きさは半切12%,大角21%,B4 17%,大四切19%,四切31%であった.股関節を含めていた施設は25%であった.脊椎外科専門医の勤務歴は25%であり,脊椎外科専門医勤務歴ありの施設では46%,勤務歴なしの施設では18%で股関節を含めていた.股関節疾患の症状と神経根性疼痛が類似していることより,誤診を予防するためには腰椎レントゲン正面像に股関節を含めることが推奨される.
著者
森本 忠嗣 會田 勝広 園畑 素樹 馬渡 正明 佛淵 孝夫
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.586-589, 2010
被引用文献数
1

【背景】変形性股関節症(以下,OA股)では腰椎側弯(以下,LS)合併が稀ではなく,脚長差が一因と考えられているが詳細な検討例は少ない.【目的】OA股における脚長差と腰椎側弯カーブの方向との関係について調査すること.【対象と方法】初回人工股関節置換術を行った片側OA股437例(男性56例,女性381例,平均年齢62歳)の脚長差とLSカーブの方向について調査した.脚長差は10mm未満,10mm代,20mm代,30mm以上の層に分類し,層別のLS頻度(Cobb角5°以上),LSカーブ方向と層別尤度比を調査した.【結果】LS頻度は40%であり,内訳は患側凸26%,健側凸14%であった.層別尤度比の検討からは,30mm以上の層のみでLS頻度,患側凸頻度は有意に高くなった.【考察】片側OA股では30mm以上の脚長差で腰椎への負荷は一定方向となり患側凸のLSが発生しやすいことが示唆された.
著者
森本 忠嗣
出版者
日本脊椎脊髄病学会
雑誌
Journal of spine research (ISSN:18847137)
巻号頁・発行日
vol.1, no.7, pp.1299-1302, 2010-07-25