著者
小林 康夫 吉川 修身
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.294-299, 2009-05-15 (Released:2009-06-18)
参考文献数
22

右肩関節制動術予定患者に全身麻酔下に神経刺激装置を用いて斜角筋間ブロックを行った. 途中, 首を左右に振る動きがあった以外に異常筋収縮はなかった. ブロック直後に両側瞳孔散大を伴う血圧低下をきたしたため, 全脊麻と判断し急速輸液と昇圧薬投与で対処した. 術後の意識および自発呼吸の回復は速やかで右上肢以外に麻痺を認めなかったが, 翌朝になっても右上肢麻痺が回復せず左上肢のしびれも訴えた. 頸髄MRIではC2~7に右側優位のT2高信号病変を認め, 梗塞性脊髄損傷が疑われた. 斜角筋間ブロックは, 短い針を用い尾側に明確に傾けるなど椎間孔に進入させない工夫が必要で, 神経刺激法を用いても全身麻酔下には行わない方が安全である.