著者
生野 公貴 松尾 篤 吉川 奈々 中原 彩希 庄本 康治 森本 茂 鍋島 祥男
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.69-74, 2014 (Released:2022-09-03)
参考文献数
24

本研究は脳卒中後重度感覚障害に対する経頭蓋直流刺激(tDCS)と理学療法の併用治療の有効性をシングルケースデザインで検討した.症例は左視床出血後約3年経過した50歳代の男性である.表在および深部感覚は脱失で,右上肢に著明な感覚性失調を認めていた.tDCSは左体性感覚野に陽極を置き,刺激強度は2 mAとした.介入頻度は週1回20分とし,続いて40分の上肢練習を行った.練習セッションとベースライン測定に続いて,3セッション目をSham刺激,続く5セッションは真の刺激として,計8セッションの介入を実施した.評価は9-Hole Peg Test, Box and Block Test,感覚検査を実施した.その結果,tDCSによる有害事象はなかった.Sham刺激期間と比較してtDCS期間での全評価項目の有意な改善は認めなかった.感覚障害に対するtDCSは安全に実施可能であったが,本症例の運動および感覚障害に対して明らかな効果を認めなかった.