著者
八木 浩司 吉川 契子
出版者
THE TOHOKU GEOGRAPHICAL ASSOCIATION
雑誌
東北地理 (ISSN:03872777)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.247-257, 1988-12-20 (Released:2010-04-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1

西津軽沿岸地域は, 本邦における地殻変動の活発な東北日本弧内弧に位置する。この地域には6段以上の更新世海成段丘が発達しみごとな景観をなしている。本研究は西津軽沿岸地域に発達する完新世海成段丘の高度分布を述べ, さらに本地域の完新世地殻変動について考察した。結果は以下のようにまとめられる。(1) 西津軽沿岸地域には完新世の旧汀線が4段認められる。それらは上位よりLI面, LII面, BI面, BII面である。LI面とLII面は海成段丘, BI面およびBII面は隆起ベンチである。BII面は1704年に本地域南部岩館周辺で発生した地震, および, 1793年に北部の大戸瀬沖で発生した地震の際に離水した。(2) LI面の形成年代は, 放射性炭素年代測定で約6,000yr. B. P. を得た。LI面の発達高度は5~8mである。最大隆起速度は1.3mm/yrに及び本地域が本邦で最も隆起の激しい地域であることを示す。(3) 完新世段丘の隆起量の最も大きな地域は, 海岸線が桝形山地と白神山地を横切る所に位置し, またそこは更新世海成段丘の隆起量の激しい位置と一致する。各旧汀線の高度分布パターンは, 18世紀の地震で隆起した離水ベンチのそれとよく類似する。西津軽沿岸地域における完新世海成段丘の発達は, 更新世より続く桝形山地および白神山地の間欠的な地震隆起によるものと考えられる。