著者
吉川 英志 鈴木 登
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

神経細胞移植は現在有効な治療法がない難治性神経疾患に対する新規治療法として注目されている。本研究で、サルES細胞をレチノイン酸処理することで神経細胞を分化誘導できること、これを片麻痺マウスに移植することで運動機能を回復させることができた。移植した運動神経はケモカイン受容体CXCR4を発現しており、損傷部皮質に集族したグリア細胞の産生するケモカインSDF1に反応して、損傷部皮質に移動した。脳血流MRIを用いると、神経細胞移植脳では損傷部皮質の脳血流量が改善した。神経ネットワークの再生にはケモカインとその受容体が神経細胞の遊走に関わり、損傷組織への定着には神経接着因子が極めて重要な役割を果たすことを示唆された。今回の成績から、近い将来ヒトでの応用が行なわれれば運動障害も持つ多くの患者のQOLの改善に貢献すると期待される。