著者
末広 喜代一 吉松 定昭
出版者
香川生物学会
雑誌
香川生物 (ISSN:02876531)
巻号頁・発行日
no.28, pp.15-22, 2001-06

戦前(1892年から1939年まで)の「香川新報」および1970年から1999年までの「四国新聞」の記事より香川県のウミガメに関する記事を収集した。その結果, 1892年から1939年までの48年間に21件, 1970年から1999年までの30年間に6件のウミガメに関する記事が見られた。1件を除いて, 上陸・産卵したと見られる例はなかった。ウミガメの出現場所は東讃で20件, 西讃で8件と, 東讃の方が多かった。新聞記事に記載されたウミガメの体長と体重の間には相対成長の関係が成立し, 体長の0.75倍を甲長とすると, アカウミガメについてえられた内田(1982)の結果とほぼ一致した。生け捕られたウミガメのその後の処置として, 放したのが9件, 見せ物にしたのが4件, 飼育中が3件, 標本にしたのが1件, 銃殺予定が1件, 不明が3件であった。ウミガメが網にかかった漁業者の反応には吉瑞と喜ぶ場合と忌み嫌う場合の相反する例があった。
著者
松岡 聡 吉松 定昭 小野 哲 一見 和彦 藤原 宗弘 本田 恵二 多田 邦尚
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.77-84, 2005-08-26
被引用文献数
13

2002年度冬季,香川県沿岸では例年にないノリの不作が起き,ノリの生産金額は,平年の6割にまで減少した.ノリの色落ちが認められた水域の分布を詳細に検討したところ,特に不作であった海域は小豆島の北部および南西部海域であり,この地区の生産金額は平年の3割程度であった.過去12年間における年間ノリ生産量と漁期中の積算降水量との間には,正の相関関係が認められ,陸上からの栄養塩の供給がノリ生産量に大きく影響していることが考えられた.ノリ色落ち被害が顕著であった海域を対象に海洋観測を行った結果,色落ち被害の発生直後の2003年1月では,対象海域の塩分は33psu以上と例年よりも高く,栄養塩濃度もNO_3濃度が例年と比較して,3μM未満と低かった.このことから,例年に比べて,対象海域への陸域からの栄養塩の供給が少なかったことが考えられた.一方,2003年の梅雨期の6月には,対象海域の塩分は低く,栄養塩濃度も高かった.さらに,ノリの生育がほぼ正常であった翌年の1月では,2003年1月に比べて塩分は低く,栄養塩濃度も高くなっていた.以上の結果から,2002年度にノリの色落ちは,秋期の降水量が少なかった事が主な原因と考えられ,ノリの色落ち被害が顕著であった海域のノリ生産には,岡山県側の旭川・吉井川河口域(岡山水道)からの栄養塩供給が重要な影響を及ぼしていることが考えられた.