著者
吉永 創 山田 二久次 関根 義彦
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.105-117, 1998-02-28
被引用文献数
4

親潮の異常南下に注目して日本の気温, 降水量の変動特性について調べた。親潮異常南下年の日本の気温では冬季に東北以南の本州, 四国, 九州で負の偏差, 北海道では逆に正の偏差が見られた。降水量では北陸を中心とする日本海側で正の偏差が見られた。5月から6月にかけては関東から東北南部の太平洋側で負の偏差, 降水量では九州中部〜四国南部〜紀伊半島を境にして北で増大し南で減少する傾向が示された。親潮南限緯度と気温, 降水量とのラグ相関解析により冬季は本州, 四国, 九州の気温と3〜5か月後の親潮南限緯度の間で最も高い正の相関, 北陸の降水量と4〜5か月後の親潮南限緯度の間で有意な負の相関が得られた。5月から6月については気温に対して同時あるいは1か月の前の親潮南限緯度の間で関東から東北南部の太平洋側でのみ有意な正の相関が得られた。さらに500 hPa高度偏差のEOF解析の第1, 2モードのスコアと日本の気温・降水量との相関解析により, 冬季に日本上空から北太平洋中央部にかけて500 hPa高度場が負偏差になると本州, 四国, 九州で気温が低下する傾向が示された。また気温ほど顕著ではないが1月の北陸の降水量で有意な正の相関が得られた。これらより親潮異常南下年の冬季の本州, 四国, 九州の気温の低下及び北陸での降水量の増加はグローバルな大気大循環の変動の影響による可能性が高く, 5月, 6月は関東から東北南部の太平洋側でのみ親潮の異常南下に伴う低海面水温の影響を受けて気温が低下している可能性が示唆された。