著者
山田 二久次 関根 義彦
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.995-1000, 1997-10-25
被引用文献数
3

日本東岸における春季(1967〜86年、3〜5月)において、100m水深5℃の等温線緯度で定義される親潮第一分枝南限緯度の年々変化と、北太平洋上の500hPa高度場の関係を解明した。高度場については、北太平洋領域でEOF解析をし、第1・第2成分と親潮南限緯度のラダ相関を解析した。その結果、親潮の南限緯度と500hPa高度のEOF第1成分との間に、3力月遅れ(大気が先行)で有意な相関があることを見いだした。500hPar高度のEOF第1成分の空間パターンはアリューシャン低気圧の南下を示している。なお親潮の南限緯度は、EOF第2成分とは有意な関係はなかった。親潮の南下が著しい年の冬には12月から2月まで、北太平洋の30〜50゜Nでの海水温か負偏差となる。この時海面水温負偏差域の北部では、風の応力ベクトル偏差は西向きで、風の応力が弱まっている。したがって、この温度低下は潜熱・顕熱フラックスやエクマン輸送の増加では説明できず、アリーシャン低気圧の南偏に伴う亜寒帯循環の南下に伴うものであることが示唆された。
著者
関根 義彦
出版者
三重大学大学院生物資源学研究科
雑誌
三重大学大学院生物資源学研究科紀要
巻号頁・発行日
no.37, pp.57-60, 2011-02

To infer the future and / or the true mechanism is an important event in the present society. It is pointed out that to confirm the predicting events on the four dimensional situation, three special dimensions and a time dimension, and to consider the events on the four dimensional coordinate are an basic important process in the inference of future problems and / or the true mechanism. Examples of special difficult problems of future inference such as the nonlinear characteristics of the fluid dynamics is also discussed.
著者
関根 義彦
出版者
三重大学生物資源学部
雑誌
三重大学生物資源学部紀要 (ISSN:09150471)
巻号頁・発行日
no.31, pp.1-23, 2004-03

風の海面応力の季節変動については海洋の順圧応答が卓越し,北太平洋の亜熱帯循環では南西諸島の東にある大陸棚斜面に沿う琉球海流といわれる西岸境界流と伊豆海嶺の東にある西岸境界流の存在が晩冬から春にかけて指摘されていた。したがってこの二つの西岸境界流を接続する海流の存在が予知され,ここでは琉球海流続流と呼ぶ。この琉球海流続流の流れの特性を見るため,順圧モデルを仮定して冬と春のスヴェルドラップバランスした流れで駆動する幾つかの数値モデル実験を行った。本論では線形および弱非線形のモデルパラメータを与えた数値モデルの結果をまとめた。その結果,四国海盆ではムンク型,ムーア型,非線形型,超非線形型の4つの流れのパターンが存在することが示された。大きい渦粘性係数の場合にはムンク型のみが生じること,小さい渦粘性係数の場合には深さで制御される流入出速度が小さい場合にはムーア型が生じ,流入出速度が大きい場合には非線形型,流入出速度が最大の場合には超非線形型が生じることが示された。さらに,琉球海流続流はムンク型とムーア型の場合に明瞭に出現するが,非線形型と超非線形型の場合には不明確となることが示された。原著論文
著者
関根 義彦 堀尾 健一郎 金子 順一
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2011年度精密工学会春季大会
巻号頁・発行日
pp.309-310, 2011 (Released:2011-09-01)

本研究ではガラス研磨加工の際に生じる加工変質層を残留応力の開放に伴う形状変化によって評価する手法の開発を行った.本手法は研磨加工によって反りが発生した薄板試料の加工面を,エッチングによって均等に微小除去し残留応力を解放,反りの変化を測定することで残留応力層の深さの推定を実現する.本報ではこの手法により可能となった,ソーダガラスおよびBK7の残留応力層厚さの測定条件および測定結果について述べる.
著者
関根 義彦 陳 苗陽
出版者
The Oceanographic Society of Japan
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.277-289, 2003
被引用文献数
2

日本南岸の黒潮流路の変動特性を知るため,1975年から1995年までの都井岬から房総半島沖までの9点からの黒潮の離岸距離を海上保安庁水路部の海洋速報の黒潮流路の中央点との距離として求め,その時間変動を調べた。その結果1975年に発生した黒潮大蛇行は室戸岬から大王崎にかけて離岸距離が大きく御前崎以東で離岸距離が小さいのに対し,1980年以後の五回の大蛇行は室戸岬から潮岬では離岸距離が小さく御前崎以東で離岸距離が大きくなり,大蛇行の流路のパターンが1980年前後で大きく変化していることが示された。大蛇行期ごとの平均距離をみると,1975年発生の大蛇行は伊豆海嶺の三宅島と八丈島の間のゲート領域を通るのに対し,1980年以降発生の大蛇行は平均距離が伊豆海嶺のゲート部よりも南に位置し,C型流路かゲート部を通る流路の選択を強制されることが示唆された。このため1980年以降発生の大蛇行は流路に及ぼす伊豆海嶺の地形効果が大きく,低気圧渦である大冷水塊を伴う大蛇行が比較的短時間で消滅する可能性が示唆された。九州南の潮位差解析により黒潮の南側分流の流量が大きいと都井岬から室戸岬沖の黒潮離岸距離が大きくなり,御前崎から石廊崎沖では離岸距離が小さくなる傾向が示された。一方北部流量が大きくなると,都井岬から潮岬沖の離岸距離が小さくなり御前崎から野島崎沖で離岸距離が大きくなる傾向がある。また,犬吠埼沖では黒潮の離岸距離が九州南の潮位差と有意な相関を示さない。
著者
関根 義彦 川股 信一 佐藤 裕一
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究ノート (ISSN:09143882)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.190-196, 1992-02-29

伊勢湾の沿岸フロントについて1989年12月および1990年11-12月にCTDによる断面観測を行った.1989年12月の観測は海底までの混合層が形成された後に行われ,知多半島の南と神島東の2つの場所に水温・塩分フロントが観測された.神島東のフロントでは密度の極大が認められた.1990年11-12月の観測は台風28号の到来前後に行われ,わずか3日の間に海況の大きな変化が認められた.特に台風に伴う河川水の流出で湾奥部の低塩分化が著しく,低塩分水が幾つかの塩分躍層を形成しながら沖側に拡散していく過程が観測された.神島東は1989年12月と同様に水温・塩分フロントが認められ,台風の影響が小さい前半の観測では密度の極大域が確認された.また,観測中木屑が20-40m程度の間隔で列をなして海面に浮いている様子がこのフロント域で目視されており,密度の極大域の形成と考え合わせて,このフロントは熱塩フロント的性格が強いことが示唆された.
著者
関根 義彦 陳 苗陽
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.277-289, 2003-05-05
参考文献数
41
被引用文献数
3

日本南岸の黒潮流路の変動特性を知るため,1975年から1995年までの都井岬から房総半島沖までの9点からの黒潮の離岸距離を海上保安庁水路部の海洋速報の黒潮流路の中央点との距離として求め,その時間変動を調べた。その結果1975年に発生した黒潮大蛇行は室戸岬から大王崎にかけて離岸距離が大きく御前崎以東で離岸距離が小さいのに対し,1980年以後の五回の大蛇行は室戸岬から潮岬では離岸距離が小さく御前崎以東で離岸距離が大きくなり,大蛇行の流路のパターンが1980年前後で大きく変化していることが示された。大蛇行期ごとの平均距離をみると,1975年発生の大蛇行は伊豆海嶺の三宅島と八丈島の間のゲート領域を通るのに対し,1980年以降発生の大蛇行は平均距離が伊豆海嶺のゲート部よりも南に位置し,C型流路かゲート部を通る流路の選択を強制されることが示唆された。このため1980年以降発生の大蛇行は流路に及ぼす伊豆海嶺の地形効果が大きく,低気圧渦である大冷水塊を伴う大蛇行が比較的短時間で消滅する可能性が示唆された。九州南の潮位差解析により黒潮の南側分流の流量が大きいと都井岬から室戸岬沖の黒潮離岸距離が大きくなり,御前崎から石廊崎沖では離岸距離が小さくなる傾向が示された。一方北部流量が大きくなると,都井岬から潮岬沖の離岸距離が小さくなり御前崎から野島崎沖で離岸距離が大きくなる傾向がある。また,犬吠埼沖では黒潮の離岸距離が九州南の潮位差と有意な相関を示さない。
著者
吉永 創 山田 二久次 関根 義彦
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.105-117, 1998-02-28
被引用文献数
4

親潮の異常南下に注目して日本の気温, 降水量の変動特性について調べた。親潮異常南下年の日本の気温では冬季に東北以南の本州, 四国, 九州で負の偏差, 北海道では逆に正の偏差が見られた。降水量では北陸を中心とする日本海側で正の偏差が見られた。5月から6月にかけては関東から東北南部の太平洋側で負の偏差, 降水量では九州中部〜四国南部〜紀伊半島を境にして北で増大し南で減少する傾向が示された。親潮南限緯度と気温, 降水量とのラグ相関解析により冬季は本州, 四国, 九州の気温と3〜5か月後の親潮南限緯度の間で最も高い正の相関, 北陸の降水量と4〜5か月後の親潮南限緯度の間で有意な負の相関が得られた。5月から6月については気温に対して同時あるいは1か月の前の親潮南限緯度の間で関東から東北南部の太平洋側でのみ有意な正の相関が得られた。さらに500 hPa高度偏差のEOF解析の第1, 2モードのスコアと日本の気温・降水量との相関解析により, 冬季に日本上空から北太平洋中央部にかけて500 hPa高度場が負偏差になると本州, 四国, 九州で気温が低下する傾向が示された。また気温ほど顕著ではないが1月の北陸の降水量で有意な正の相関が得られた。これらより親潮異常南下年の冬季の本州, 四国, 九州の気温の低下及び北陸での降水量の増加はグローバルな大気大循環の変動の影響による可能性が高く, 5月, 6月は関東から東北南部の太平洋側でのみ親潮の異常南下に伴う低海面水温の影響を受けて気温が低下している可能性が示唆された。