著者
吉岡 照高 松本 亮司 奥代 直巳 山本 雅史 國賀 武 山田 彬雄 三谷 宣仁 生山 巖 村田 広野 浅田 謙介 池宮 秀和 内原 茂 吉永 勝一
出版者
農業技術研究機構果樹研究所
巻号頁・発行日
no.8, pp.15-23, 2009 (Released:2011-07-13)

1. ‘麗紅’は1984年に果樹試験場口之津支場(現 果樹研究所カンキツ研究口之津拠点)において、‘清見・アンコールNo. 5’に‘マーコット’を交配して育成された品種である。1996年より‘カンキツ口之津32号’の系統名でカンキツ第8回系統適応性・特性検定試験に供試した。その結果、2004年1月26日付けでタンゴール農林9号‘麗紅’と命名、登録された。また、2005年12月7日付けで種苗法に基づき品種登録された。登録番号は第13542号である。2. 樹勢は中庸で、樹姿は直立性と開張性の中間である。枝梢は長く、太さは中位で密生する。雄性不稔性で、花粉を形成しない。かいよう病に対する抵抗性はやや弱いものの、栽培管理上の問題はない。また、そうか病に対する抵抗性は強い。3. 果実は平均200g程度で、扁円形~扁平形である。果皮は濃橙色~淡赤橙色で、果面は平滑である。果皮の厚さは平均2.4mmと薄い。剥皮性は容易~やや容易である。果肉色は濃橙色で、果肉は柔軟、多汁である。1月下旬における果汁の糖度は平均12.4%、酸含量は平均的な大きさの果実では1.10~1.30g/100mLとなる。成熟期は1月中下旬である。4. 各地の試験地において果実の肥大は良好で、栽培適地は広いと思われるが、1月以降も樹上越冬ができる温暖な地域での栽培が望ましい。また、雄性不稔性で花粉を形成しないが、周囲の他品種花粉の受粉により含核数が著しく多くなるので、無核果あるいは少核果生産のためには、周囲には多量の花粉を形成するような品種を植栽しないことが重要である。
著者
山田 昌彦 山根 弘康 佐藤 明彦 平川 信之 岩波 宏 吉永 勝一 小澤 俊治 三谷 宣仁 白石 美樹夫 吉岡 美加乃 中島 育子 中野 正明 中畝 良二
出版者
農業技術研究機構果樹研究所
巻号頁・発行日
no.7, pp.21-38, 2008 (Released:2010-07-07)

1. ‘シャインマスカット’は、果樹試験場安芸津支場(現 農研機構果樹研究所ブドウ・カキ研究拠点)において、1988年に安芸津21号に‘白南’を交雑して得た実生から選抜された、肉質が崩壊性で硬く、マスカット香を持つ黄緑色の大粒ブドウである。1999年よりブドウ安芸津23号の系統名を付けてブドウ第9回系統適応性検定試験に供試し、全国30か所の国公立試験研究機関において特性を検討した。2003年9月に農林水産省育成農作物新品種命名登録規程に基づき、‘シャインマスカット’と命名、ぶどう農林21号として登録された。また、2006年3月に種苗法に基づき登録番号第13,891号として品種登録された。2. 樹勢は強い。長梢剪定では花穂の着生は良く、平均1.6花穂/新梢着生した。短梢剪定においても花穂着生率が高かった。満開時と満開10~15日後にジベレリン25ppmに花(果)穂を浸漬処理することにより無核化生産できる。開花前にストレプトマイシン200ppmを散布すると、無核化はさらに安定する。無処理の有核栽培では、満開時に花穂整形すると、長梢・短梢剪定樹とも新梢の強さにかかわらず結実が良く、適度に着粒した。花穂整形労力は‘巨峰’なみ、摘粒労力は‘巨峰’に近い程度と評価された。3. 果実成熟期は‘巨峰’とほぼ同時期である。果粒重は有核栽培では10g程度であるが、満開10~15日後にジベレリン25ppmに果房浸漬処理を行うと、1g程度増大する。また、育成地における無核化栽培では、有核栽培と比べて2.4g増大し、平均12.4gであった。裂果性は非常に低く、系統適応性検定試験では‘巨峰’よりやや裂果しにくかった。‘巨峰’より脱粒しにくく、日持ちも長かった。糖度は‘巨峰’と同程度であり、育成地で18%程度であった。酸含量は‘巨峰’より0.1g/100mLあまり低く、育成地では0.4g/100mL程度であった。果肉特性は崩壊性で、噛み切れやすくて硬く、マスカット香を呈し、食味が優れる。渋みは一般に感じられない。4. 東北以南の‘巨峰’栽培地域における栽培に適する。耐寒性は‘巨峰’なみと評価された。べと病・晩腐病・うどんこ病については、ある程度の抵抗性があり、‘巨峰’を対象とした防除により栽培可能と見込まれる。しかし、黒とう病には強くないため、降雨の多い地域では簡易被覆またはハウス栽培が望ましい。
著者
松本 亮司 山本 雅史 國賀 武 吉岡 照高 三谷 宣仁 奥代 直巳 山田 彬雄 浅田 謙介 池宮 秀和 吉永 勝一 内原 茂 生山 巖 村田 広野
出版者
農業技術研究機構果樹研究所
雑誌
果樹研究所研究報告 = Bulletin of the National Institute of Fruit Tree Science (ISSN:13473549)
巻号頁・発行日
no.2, pp.25-31, 2003-03

1. 1984年に果樹試験場口之津支場において,'口之津37号'('清見×アンコールNo. 2')に'マーコット'を交雑し育成された交雑品種である。2. カンキツ'口之津19号'の系統名でカンキツ第7回系統適応性・特性検定試験で検討され,1998年8月21日に'せとか'と命名され'タンゴール農林8号'として登録・公表された。なお種苗法に基づき,登録番号第9398号として2001年10月18日付けで品種登録された。3. 樹勢は中~やや弱で,樹姿は中~開張性である。そうか病・かいよう病に対する抵抗性は強い。豊産性で連年結果し,栽培性に優れる。4. 果実の大きさは200~280g位で大果である。果形は扁円形である。果皮は橙~濃橙色で厚さは薄く,剥皮は中~容易である。果面は平滑であるが油胞が目立つ。中位のマーコット香がある。果肉は橙色で,じょうのう膜が極めて薄く,肉質は柔軟・多汁である。熟期は2月で濃厚な食味になる。果汁糖度は12~13程度,クエン酸含量は適熟期に0.8~1.2g/100mlになる。雄性不稔性で単為結果性が強く,果実は通常,無核である。5. 'せとか'の成熟期は2月の厳寒期であることから,果実が樹上で越冬できる温暖なカンキツ栽培地帯,あるいは施設栽培に適する。また樹勢がやや弱いため,適正着果に留意し,肥培管理を徹底することにより,樹勢の維持・強化を図る必要がある。