著者
藤島 宏之 松田 和也 牛島 孝策 矢羽田 第二郎 白石 美樹夫 千々和 浩幸
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.405-410, 2012 (Released:2012-09-30)
参考文献数
19
被引用文献数
2 3

同一着果条件下において,ブドウ‘巨峰’のジベレリン処理果実(無核果実)とジベレリン無処理果実(有核果実)の品質の差異について調査した.無核果実は着色開始が早いものの,その後の着色の進行や糖度の上昇程度,酸含量の減少程度は,有核果実の方が優れる傾向にあった.収穫期では,果皮色は年次により変動したが,糖度は無核果実で低かった.同一新梢内では,無核果実で果粒重が軽くなり果皮色や糖度が低下した.同一花穂内では,無核果実で果皮色が劣った.有核,無核にかかわらず,果皮色,糖度とも果房重が重いほど低下し,特に無核果実では糖度の低下が顕著であった.
著者
山田 昌彦 山根 弘康 佐藤 明彦 平川 信之 岩波 宏 吉永 勝一 小澤 俊治 三谷 宣仁 白石 美樹夫 吉岡 美加乃 中島 育子 中野 正明 中畝 良二
出版者
農業技術研究機構果樹研究所
巻号頁・発行日
no.7, pp.21-38, 2008 (Released:2010-07-07)

1. ‘シャインマスカット’は、果樹試験場安芸津支場(現 農研機構果樹研究所ブドウ・カキ研究拠点)において、1988年に安芸津21号に‘白南’を交雑して得た実生から選抜された、肉質が崩壊性で硬く、マスカット香を持つ黄緑色の大粒ブドウである。1999年よりブドウ安芸津23号の系統名を付けてブドウ第9回系統適応性検定試験に供試し、全国30か所の国公立試験研究機関において特性を検討した。2003年9月に農林水産省育成農作物新品種命名登録規程に基づき、‘シャインマスカット’と命名、ぶどう農林21号として登録された。また、2006年3月に種苗法に基づき登録番号第13,891号として品種登録された。2. 樹勢は強い。長梢剪定では花穂の着生は良く、平均1.6花穂/新梢着生した。短梢剪定においても花穂着生率が高かった。満開時と満開10~15日後にジベレリン25ppmに花(果)穂を浸漬処理することにより無核化生産できる。開花前にストレプトマイシン200ppmを散布すると、無核化はさらに安定する。無処理の有核栽培では、満開時に花穂整形すると、長梢・短梢剪定樹とも新梢の強さにかかわらず結実が良く、適度に着粒した。花穂整形労力は‘巨峰’なみ、摘粒労力は‘巨峰’に近い程度と評価された。3. 果実成熟期は‘巨峰’とほぼ同時期である。果粒重は有核栽培では10g程度であるが、満開10~15日後にジベレリン25ppmに果房浸漬処理を行うと、1g程度増大する。また、育成地における無核化栽培では、有核栽培と比べて2.4g増大し、平均12.4gであった。裂果性は非常に低く、系統適応性検定試験では‘巨峰’よりやや裂果しにくかった。‘巨峰’より脱粒しにくく、日持ちも長かった。糖度は‘巨峰’と同程度であり、育成地で18%程度であった。酸含量は‘巨峰’より0.1g/100mLあまり低く、育成地では0.4g/100mL程度であった。果肉特性は崩壊性で、噛み切れやすくて硬く、マスカット香を呈し、食味が優れる。渋みは一般に感じられない。4. 東北以南の‘巨峰’栽培地域における栽培に適する。耐寒性は‘巨峰’なみと評価された。べと病・晩腐病・うどんこ病については、ある程度の抵抗性があり、‘巨峰’を対象とした防除により栽培可能と見込まれる。しかし、黒とう病には強くないため、降雨の多い地域では簡易被覆またはハウス栽培が望ましい。
著者
濱田 美智雄 白石 美樹夫
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.83-88, 2020 (Released:2020-03-31)
参考文献数
26
被引用文献数
2

Plant Canopy Analyzer(PCA)実測値と同等の測定精度で生食用ブドウの葉面積指数(LAI)推定を行うために,魚眼レンズ装着デジタルカメラと画像処理ソフト「Fiji-ImageJ」を用いた新しい手法を開発した.個葉の葉幅長(X)に対する葉面積(Y)の回帰は有意に高かった(Y = 0.5716X2.0425,R2 = 0.99**).解体調査LAI値とPCA測定値との間には有意に高い回帰関係が認められた(r = 0.964**).「Fiji-ImageJ」では3段階の画像処理を行った:(1)撮影した原画像のR,GおよびB画像への分割処理,(2)「Subtract Background」アルゴリズムと自動閾値補正モードの「Minimum」を用いた3画像の補正処理,(3)補正された3画像個々の植被率を合計した累積植被率を算出.LAI水準1~4の範囲において,累積植被率(X)に対する解体調査LAI値(Y)の間には高い線形回帰関係が認められた(Y = 0.0769X − 18.325,R2 = 0.82**).