著者
吉田 孝次郎
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究
巻号頁・発行日
vol.9, pp.69-103, 1993-09-30

祇園会の山鉾に使用する工芸品は、質、量、品種に於いて世界の至宝といっても過言でないものを現在も使用しているが、特に懸装染織品は、近世染色美術史を痛感し得る内容をそなえ、中国大陸文化圏をはじめ、印度、中近東、大航海時代以降の欧州の染織品を数多く有している。
著者
吉田 孝次郎
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
no.9, pp.p69-103, 1993-09

祇園会の山鉾に使用する工芸品は、質、量、品種に於いて世界の至宝といっても過言でないものを現在も使用しているが、特に懸装染織品は、近世染色美術史を痛感し得る内容をそなえ、中国大陸文化圏をはじめ、印度、中近東、大航海時代以降の欧州の染織品を数多く有している。 山鉾風流は南北朝期に出現(応仁の乱で焼失後、明応九年(一五〇〇)に復興)して以来、今日まで六五〇年の歴史をもつ伝統行事であり、今日では、国の重要有形民俗文化財、重要無形文化財の指定を受けている。 本稿では、祇園社の本来的神格を明らかにしつつ、室町時代―江戸時代前期に描かれた、「月次祭礼図」(東京国立博物館蔵)、「祇園、山王祭礼図」(サントリー美術館蔵)、町田家・上杉家本「洛中洛外図」、勝興寺本「洛中洛外図」、八幡山本「祇園祭礼図」などの絵画資料と、山鉾町に現存する懸装染織品の同定を基本とし、中世末期から近世初期における渡来懸装染色の実態を考察するものである。稿末に「品種別渡来染織品一覧表」を付した。