著者
戸塚 武美 藤田 桂史 吉田 光汰 橋本 和賢 飯田 幸英
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.403-406, 2020-12-28 (Released:2020-12-28)
参考文献数
3

われわれは先行研究において雷鳴頭痛の概念を踏まえた情報聴取教育が, 神経学的所見に乏しい出血性脳卒中に対する救急隊の病院選定的確率を改善させる可能性を報告した。救急隊に広く普及しているシンシナティ病院前脳卒中スケール (Cincinnati Prehospital Stroke Scale ; CPSS) は, 脳局所症状を判断するものであり, 脳卒中で最も危険といわれるくも膜下出血では該当しない症例がある。また, くも膜下出血の典型的な症状である「突然の激しい頭痛」は客観性に乏しく, 救急隊が判断に迷う一因となっている。この対策として, 吐気, 意識消失, めまいなどの症例では必ず頭痛の有無を確認し, 頭痛を訴えた場合には雷鳴頭痛の概念を踏まえた情報聴取を行うよう教育に取り組んだところ, 頭痛情報聴取率は統計学的に有意に改善し, 病院選定的確率は改善傾向を認めた。雷鳴頭痛の概念を踏まえた情報聴取教育は, 神経学的所見に乏しい出血性脳卒中に対し, 的確な病院選定を行う一助となり得る。