著者
藤綱 隆太朗 白川 和宏 石田 径子 井上 聡 鳥海 聡 金子 翔太郎 土屋 光正 宮嶌 和宏 三吉 貴大 植松 敬子 金尾 邦生 春成 学 竹村 成秀 進藤 健 塩島 裕樹 荘司 清 齋藤 豊 田熊 清継
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.285-287, 2018-12-31 (Released:2018-12-28)
参考文献数
14

ナツメグは香辛料としてハンバーグなどの肉料理に用いられ, わが国でも容易に入手可能である。欧米では急性中毒を起こす原因物質として一般的に知られており, 死亡例も報告されている。米国の報告では自殺目的の大量摂取のほか, 意図せずにナツメグ中毒となっている例も半数以上を占めている。しかしわが国では症例報告は少なく, 中毒の原因としてはあまり知られていない。本症例は香辛料としてナツメグ10gを摂取した。その後, 浮遊感, 動悸などが出現, 不穏となった。自身でインターネット検索し, ナツメグ中毒の症状と合致することに気づき, 救急要請した。来院時, 不安感と口渇感を訴え, 興奮気味であったが, 安静にて経過観察を行い, 症状は改善した。本症例は患者自らのナツメグ摂取の申告により診断に至ったが, 本人の自覚なくナツメグ中毒に至る症例もあると思われる。そのため, 急性の精神異常を呈した症例では原因中毒物質として鑑別にあげる必要があると考える。
著者
鈴木 恵輔 加藤 晶人 光本 (貝崎) 明日香 沼澤 聡 杉田 栄樹 中村 元保 香月 姿乃 井上 元 柿 佑樹 中島 靖浩 前田 敦雄 森川 健太郎 土肥 謙二
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.35-38, 2021-03-31 (Released:2021-03-31)
参考文献数
10

ジフェンヒドラミンは抗ヒスタミン薬であり過量内服により多彩な中毒症状を呈するが, 重症例では最悪死に至ることがある。近年インターネットなどで取り上げられ, 自殺目的での中毒症例の増加が懸念されている。今回, 市販の抗ヒスタミン薬の大量服薬により心肺停止に至った症例を経験したので報告する。17歳女性。公園内で倒れているところを通行人が発見し救急要請。ジフェンヒドラミン12,000mg内服したと推定され, 救急隊現着時には心肺停止状態であった。当院救命救急センター来院時も心肺停止状態であり蘇生することはできず永眠となった。後日ジフェンヒドラミンの血中濃度を測定したところ, 来院時の血中濃度は26.73µg/mLと過去に報告されている心肺停止症例と比較しても高値であった。OTC医薬品として簡単に手に入る薬剤での死亡症例のため治療側も販売側も十分に注意していく必要があると考えられる。
著者
杉村 真美子 竹本 正明 金澤 将史 今村 友典 中野 貴明 戸部 有希子 伊藤 敏孝
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.275-277, 2018-12-31 (Released:2018-12-28)
参考文献数
3

症例は, 14歳女子2人。2カ月ほど前から2人で自殺することを計画してインターネットで情報を集め, 通販サイトで浮揚用のヘリウムガスを購入していた。ヘリウムガスをビニール袋で互いに吸わせ合ったが死ねず, 警察へ連絡し, 警察から救急要請となった。ヘリウムガスを密閉状態で吸入できていなかったため, 身体的にも検査上も明らかな異常は認めなかった。様子観察のため入院としたが問題なく, 精神科診察の後, 退院となった。浮揚用のヘリウムガスには酸素が添加されていないため, 密閉状態で吸入すると窒息死する。この情報はインターネットで気軽に得ることができ, さらにインターネットの通販サイトで誰でもヘリウムガスを気軽に入手することが可能である。今回のように若年者でも身元確認なく手軽に購入できるため注意が必要であり, 早急な対策が必要である。
著者
進藤 博俊 山岸 利暢 長岡 毅 坪井 謙 松本 建志 守谷 俊
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.271-273, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
12

症例は67歳男性。腰痛のために鍼灸院で治療を受けた。治療後3時間半後から呼吸困難感が出現した。徐々に増悪し, 当院に救急搬送された。来院時は著明な頻呼吸と酸素化低下, 両側呼吸音減弱を呈していた。肺エコーで両側性気胸を疑い, 胸部X線で両側性気胸と診断した。両側に静脈留置針で緊急脱気し, 続けて胸腔ドレーンを留置し入院した。経過は良好で第5病日に退院となった。鍼灸治療の合併症としての両側性気胸は稀である。鍼の安全刺入深度は前胸部8〜26mm, 背部20mm前後と報告されている。本症例では, CTで両側気胸を起こし得る基礎疾患を認めなかったこと, 鍼治療に40mmの鍼を使用していたこと, 鍼治療後から症状が出現したことなどから鍼治療に伴い両側性気胸を発症したと考えられた。診断には身体所見や, ベッドサイドでの画像診断が肝要である。肺エコーは有用なツールであり迅速な早期診断, 治療介入において有用である。
著者
村田 健介 岡本 健 池上 さや 川崎 喬彬 唐津 進輔 近藤 豊 松田 繁 田中 裕
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.307-309, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
5

家庭常備薬の「正露丸」を200錠内服し, 木クレオソート中毒に至った1例を経験した。症例は67歳の女性で, 原因不明の意識障害で当院に救急搬送された。意識レベルはGlasgow Coma Scale E3V1M4であり, 気管挿管し入院とした。CTや血液生化学検査で明らかな意識障害の原因は断定できなかった。第2病日に意識が改善し, 入院前日に下痢症状に対して正露丸を200錠内服したことが判明した。第5病日をピークとした軽度の肝逸脱酵素の上昇が出現したが改善し, 第6病日に精神科に転科となった。正露丸は日本において家庭常備薬の下痢止めとして長年親しまれている薬である。その主成分は木クレオソートであり, 大量内服症例では木クレオソートに含まれる少量のフェノールによる嘔吐や血圧低下, 意識障害, 遅発性肝障害等の症状が出ることがあり注意が必要である。
著者
村田 健介 岡本 健 池上 さや 川崎 喬彬 唐津 進輔 近藤 豊 松田 繁 田中 裕
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.307-309, 2020

<p>家庭常備薬の「正露丸」を200錠内服し, 木クレオソート中毒に至った1例を経験した。症例は67歳の女性で, 原因不明の意識障害で当院に救急搬送された。意識レベルはGlasgow Coma Scale E3V1M4であり, 気管挿管し入院とした。CTや血液生化学検査で明らかな意識障害の原因は断定できなかった。第2病日に意識が改善し, 入院前日に下痢症状に対して正露丸を200錠内服したことが判明した。第5病日をピークとした軽度の肝逸脱酵素の上昇が出現したが改善し, 第6病日に精神科に転科となった。正露丸は日本において家庭常備薬の下痢止めとして長年親しまれている薬である。その主成分は木クレオソートであり, 大量内服症例では木クレオソートに含まれる少量のフェノールによる嘔吐や血圧低下, 意識障害, 遅発性肝障害等の症状が出ることがあり注意が必要である。</p>
著者
久村 正樹 百瀬 ゆずこ 久野 慎一郎 福島 憲治 有馬 史人 今本 俊郎 大井 秀則 重松 咲智子 中村 元洋 淺野 祥孝 亀田 慎也 橋本 昌幸 安藤 陽児 園田 健一郎 輿水 健治
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.267-270, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
10

症例は44歳男性。救急搬送3カ月前より原因不明の右下腿全体の疼痛を自覚し, 整形外科, 脳神経外科で精査され, 線維筋痛症の診断で整形外科からプレガバリンの投薬治療が開始された。疼痛は改善せず, 程なく睡眠障害を自覚するようになった。救急搬送1週間前からは改善しない疼痛を悲観し, 希死念慮を訴えるようになった。X月Y日, 自宅で頸部と胸部を自ら刺し, 倒れているところを家族に発見され救急搬送された。病着時は心停止であり, 蘇生に反応せず死亡確認した。線維筋痛症は原因が不明の「身体疾患とも精神疾患とも言い切れない」疾患であり心身両面の治療が必要である。本症例は投薬治療のみがされていたが, 救急医療者が線維筋痛症などの慢性疼痛を正しく理解すること, また救急現場から慢性疼痛患者に標準治療を提供することは, 慢性疼痛治療を望ましい方向にするのみならず, 患者の救急医療受診を回避できる可能性があり重要であると考えられた。
著者
木村 龍太郎 竹本 正明 杉村 真美子 金澤 将史 今村 友典 中野 貴明 伊藤 敏孝
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.262-264, 2018-12-31 (Released:2018-12-28)
参考文献数
1

【症例】14歳, 女性【主訴】左示指刺創【現病歴】家庭科の授業中にミシンを用いて裁縫中に誤って左示指の末節にミシン針が刺さり救急要請となった。救急隊はミシンを破壊し本体の一部をつけたまま搬送した。【来院後経過】救急外来にて針に付着した布押さえの部分を工事用ペンチで破壊した。針と糸が共に指を手背側から手掌側へ貫通している状態であった。左示指に局所麻酔し, 針の末端部分の一部を切断し, 手掌側の針の先端をペンチで把持して引き抜くように糸と共に除去した。除去後, 止血を確認し, 帰宅とした。【考察】ミシンの縫い目は2本の糸が絡み合うことによって作られる。その構造上ミシン針の糸通しは針の先端についているためミシン作業中の刺創では針と共に糸が必ず体内を通過する。その構造を把握しないで針だけを抜去すると糸が皮膚の中に残存することがある。ミシン針の貫通創の処置では抜去時にミシンの仕組みを知る必要があると考えた。
著者
中村 元保 加藤 晶人 井上 元 鈴木 恵輔 中島 靖浩 前田 敦雄 森川 健太郎 八木 正晴 土肥 謙二
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.407-410, 2020-12-28 (Released:2020-12-28)
参考文献数
7

症例は89歳の女性。身長147cm, 体重43kgと小柄で慢性閉塞性肺疾患 (Chronic Obstructive Pulmonary Disease : COPD) の既往歴がある。1カ月前から呼吸困難を自覚していた。朝に呼吸困難が増強したためにツロブテロールテープ2mgを1枚胸部に貼付したが, 症状改善ないために夕方に2枚目を胸部に追加貼付した。追加貼付2時間後から動悸, 嘔気を自覚したために救急要請した。救急隊到着時は意識レベルJCS1であったが, 嘔吐が出現し意識レベルJCS100まで低下し当院へ救急搬送された。搬送時意識障害は改善傾向であり, 胸部に貼付されていたツロブテロールテープ2枚を剝離したところ動悸と嘔気が消失した。臨床症状よりツロブテロールテープによる中毒症状が疑われた。貼付薬は容易に自己調整できるが, 高齢者や乳幼児など管理能力に問題がある場合や, 低体重の症例では使用方法に注意が必要となる。また, 救急対応の際には全身観察での貼付薬の有無の確認も必要となってくる。
著者
野口 裕司 金子 直之
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.234-237, 2019-12-31 (Released:2019-12-31)
参考文献数
12

はじめに : 除草剤であるパラコート (PQ) は, かつて自殺企図や殺人目的の使用が社会問題になり, 本邦では1999年に生産が中止された。しかし古くから所持している人は少なくなく, また現在もPQ・ジクワット合剤 (PGL) が販売されている。今回我々は3年間で3例の自殺企図を経験した。症例1 : 53歳男性。PGLを飲用し6病日に受診。急性腎不全と肺線維化を認め持続的血液濾過透析 (CHDF) を導入。9病日にCHDFは離脱したが肺線維症が増悪し17病日に死亡。症例2 : 86歳男性。青い液体を吐いて痙攣しているのを家人が発見。救急隊接触時に心肺停止状態。警察の調査でPGLが発見され自殺と断定。症例3 : 78歳男性。自室で苦しんでいるところを家人が発見。救急隊がPGLを発見し搬送。来院時ショック状態で6時間後に死亡。おわりに : 現在市販のPGLの致死率は依然高く, 諸外国では既に厳重に規制されており, 本邦においてもより厳重な行政介入が望まれる。
著者
吉田 徹 堤 健 栗栖 美由希 岩井 俊介 三上 翔平 吉田 稔 若竹 春明 北野 夕佳 桝井 良裕 藤谷 茂樹 平 泰彦
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.221-225, 2019-12-31 (Released:2019-12-31)
参考文献数
11

向精神薬によるARDS (acute respiratory distress syndrome) の報告は限られており, また, ARDSや薬物中毒に対してECMO (extracorporeal membrane oxygenation) の有用性が指摘されている。【症例】20歳代女性。うつ病等で精神科通院中。フェノチアジン系抗精神病薬, ベンゾジアゼピン系催眠鎮静薬, オレキシン受容体拮抗薬, ノルアドレナリン再取り込み阻害薬の過量服薬を行い, 服用後約5時間で救急搬送された。来院時意識レベルE3V5M6, その他バイタルサインに大きな所見はなかった。入院後に低酸素血症出現, 胸部単純X線で肺水腫の所見を認めた。人工呼吸管理を施行するも心停止し, VA-ECMOを導入した。頭部・上肢の酸素化不良に対しVVA-ECMOとした。第6病日にVVA-ECMOを離脱, 第32病日に転院した。【考察・結語】本症例は, ARDSから心停止, VVA-ECMOを必要とした。過量服薬した原因薬剤のうち, フェノチアジン系抗精神病薬以外は今までARDSの報告はなく, 注意が必要と考えられた。
著者
宮崎 百代 小林 憲太郎 山本 真貴子 松田 航 廣瀬 恵佳 植村 樹 佐々木 亮 木村 昭夫
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.392-395, 2020-12-28 (Released:2020-12-28)
参考文献数
7

脂肪吸引術は, 体形の美容的改善を目的とした保険外診療である。手術は全身麻酔下で小さな切開孔から盲目的に広範囲の脂肪吸引を行う。外来手術で行われる症例が多いが, 時に術後当日に救急搬送を要する患者が発生し, 救急部門でその合併症治療に迫られることがある。今回われわれは, そのような患者の実態調査と他院保険外診療による合併症患者の診療請求のあり方を後方視的に検討した。2年半の間に該当症例は4症例であり, 全患者が入院診療を必要とした。半数は輸血を要するほどの貧血を呈していた。また併発した合併症に対し手術療法が必要となった症例もあった。当院当科では, 事務部門と協議し, 東京保険医協会のコメントをもとに保険診療としたが, 診療費は多額になる症例もあり, 保険診療とすることで公的医療費の負担が増すことを考えると, 手術した施設に支払いを請求するなど他の対策も講じる必要がある。
著者
戸塚 武美 中村 秀明 宮崎 康宜 中村 哲久 鈴木 宏昌
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.248-252, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
5

目的 : 機械的CPR装置 (MCD) が救急救命士の特定行為や予後に与える影響について検証した。方法 : 救急隊が積極的CPRを行った524症例を後方視的に調査し (A) 平均活動時間, (B1) 静脈路確保 (IVA) 試行率と (B2) 成功率, さらにアドレナリン適応123症例の (C) 投与率, (D) 病院前心拍再開率, (E) 予後について, 用手的CPR群 (HCC群) と機械的CPR群 (MCD群) に分け比較検討した。結果 : (A) HCC群13.2分, MCD群13.1分。 (B1) HCC群85.1%, MCD群92.5%。 (B2) HCC群59.6%, MCD群73.8%。 (C) HCC群32.2%, MCD群63.6%。 (D) HCC群13.3%, MCD群30.3%。 (E) 生存退院率はHCC群7.8%, MCD群12.1%。MCD群で有意にIVA試行率 (p<0.05) と成功率 (p<0.01), アドレナリン投与率 (p<0.01), 病院前心拍再開率 (p<0.05) が高かった。生命予後に有意差は認めなかったが, 脳機能良好で退院した7例はすべて病院前心拍再開例であった。まとめ : 現場活動におけるMCDの使用は, 活動時間を延長することなく効率的な蘇生処置を可能にし, 病院前心拍再開率を高めることから, 神経学的機能予後を改善することも期待される。
著者
寺島 侑希 山形 梨里子 末吉 亮 石上 雄一郎 小川 敦裕 沼田 賢治 溝辺 倫子 本間 洋輔 高橋 仁 井上 哲也 舩越 拓
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.366-368, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
6

【背景】精巣は白膜に保護されているが強い外力が加わると大腿や恥骨に挟まれ破裂し, 外科的修復を要することがある。【症例】特に既往のない24歳男性。 400ccバイクで走行中に, 60km/時で軽自動車と正面衝突し当院救急搬送となった。来院時は意識清明, バイタルサインは心拍数 71回/分, 血圧 119/79 mmHg, 呼吸数 25回/分, 体温 37.0℃, SpO2 98% (室内気) だった。primary surveyでは明らかな異常を認めなかったが, secondary surveyで会陰部に陰囊の腫脹・疼痛があり右精巣が陰囊から体表に脱出していた。体幹部造影CT検査では軽度の左陰囊内への造影剤の血管外漏出以外に明らかな異常はなかった。治療方針決定のため精巣超音波検査を行うと, 左精巣が腫脹 (35×28×26 mm) しており, 陰囊内部のエコーは低エコーから高エコー域が混在, ドプラエコーで内部血流は不明瞭であり左精巣破裂が疑われた。緊急手術の方針とし, 右精巣は精巣固定術を施行, 左精巣に関しては損傷が大きく機能温存は不可能であり精巣摘出術を施行した。術後は創部感染や合併症等なく経過し, 入院7日目に退院となった。退院後の精査では右精巣機能の温存が確認できた。【結語】精巣損傷を認めた際は, 見た目に損傷が大きい側だけでなく反対側の評価も怠らないことが早期の治療加入, 精巣機能温存につながるため重要である。
著者
吉田 徹 藤谷 茂樹 平 泰彦 堤 健 栗栖 美由希 岩井 俊介 三上 翔平 吉田 稔 若竹 春明 北野 夕佳 桝井 良裕
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.221-225, 2019

<p>向精神薬によるARDS (acute respiratory distress syndrome) の報告は限られており, また, ARDSや薬物中毒に対してECMO (extracorporeal membrane oxygenation) の有用性が指摘されている。【症例】20歳代女性。うつ病等で精神科通院中。フェノチアジン系抗精神病薬, ベンゾジアゼピン系催眠鎮静薬, オレキシン受容体拮抗薬, ノルアドレナリン再取り込み阻害薬の過量服薬を行い, 服用後約5時間で救急搬送された。来院時意識レベルE3V5M6, その他バイタルサインに大きな所見はなかった。入院後に低酸素血症出現, 胸部単純X線で肺水腫の所見を認めた。人工呼吸管理を施行するも心停止し, VA-ECMOを導入した。頭部・上肢の酸素化不良に対しVVA-ECMOとした。第6病日にVVA-ECMOを離脱, 第32病日に転院した。【考察・結語】本症例は, ARDSから心停止, VVA-ECMOを必要とした。過量服薬した原因薬剤のうち, フェノチアジン系抗精神病薬以外は今までARDSの報告はなく, 注意が必要と考えられた。</p>
著者
松本 順 大井 康史 佐藤 公亮 森村 尚登
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.242-245, 2020-02-07 (Released:2020-02-07)
参考文献数
3

【はじめに】救急医療の現場では, チーム医療として他職種と連携し診療にあたることが多い。そのような状況において円滑に診療を進めるためにノンテクニカルスキルの重要性が指摘されている。我々は当院での救急外来におけるインシデント報告を分析することで, 救急医療に必要とされるノンテクニカルスキルのカテゴリーを明らかにすることとした。【方法】2012年1月から2016年9月の間の後ろ向き調査。【結果】救急外来で医師が関与したインシデントとして32件の報告が確認された。最も多いインシデントの種類としてはカルテ記載やオーダリングに伴う患者や内容の取り違いであった。これらのインシデントの発生要因を分析すると, 主に状況認識, コミュニケーションやチームワークの問題によるものが多くを占めた。【考察】救急医療の中で, 特に阿吽の呼吸が形成されていないチームでの診療では状況認識やコミュニケーションが重要であると考えられた。
著者
櫻井 陽奈子 笹尾 健一郎 菅原 洋子 入野 志保 武部 元次郎 土屋 悠海 関根 和彦
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.307-310, 2018

<p>症例は67歳独居男性。肺扁平上皮癌に対する左肺全摘除術後の II 型呼吸不全のため在宅酸素療法導入中であった。居室で倒れているところを知人に発見されて救急搬送となり, 深昏睡のため緊急気管挿管後に原因を検索した。トライエージ DOA®でtetrahydrocannabinol (THC) 反応陽性を認めたが, 特定のトキシドロームはなく, II 型呼吸不全急性増悪による意識障害と判断された。支持療法のみで速やかに呼吸不全から離脱し, 覚醒後に患者は大麻の使用歴を否定した。廃用萎縮の進行により入院中の大麻使用は不可能であったが, 退院前 (第100病日) のトライエージ DOA®でもTHC反応が陽性を呈した。入院中もHIV感染に対してエファビレンツ内服が継続されたが, エファビレンツの内服により簡易型尿中薬物検出キットでTHC偽陽性を示すことが文献で報告されていることから, 偽陽性が考えられた。</p>
著者
道下 貴弘 大井 康史 山縣 英尋 高橋 充 白澤 彩 伊巻 尚平 竹内 一郎
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.329-332, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
4

70歳代女性。既往歴に糖尿病, 高血圧, 慢性腎臓病 (StageG4) を認め, 変形性膝関節症のためリハビリを行っている患者。リハビリ中に体調不良を訴えたため救急要請された。救急隊接触時BP 64/39mmHg, HR 32/分と血圧低下, 徐脈を認め当院救命救急センターに搬送となった。来院時HR 29/分の徐脈が持続しており, 心電図ではP波の消失を認め, 採血でカリウム8.7mEq/Lと高カリウム血症を認めた。高カリウム血症に伴う徐脈と診断し, 血液透析と一時的ペースメーカーの挿入を施行した。血液透析にて高カリウム血症は改善し, 自己脈も安定してきたため第3病日にペースメーカーを抜去した。その後カリウム値の再上昇はなく, 第7病日に退院となった。高カリウム血症の原因として2週間前より通常量の3倍以上の青汁を摂取していたことがわかり, 原因として青汁の過剰摂取が考えられた。慢性腎不全の患者においては栄養指導等のサポートも重要であり, 健康食品は本人の状態に応じた適切な使用法が望まれる。
著者
西澤 芙美香 豊田 洋
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.257-261, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
12

【背景】脊髄梗塞は脳梗塞に比べ稀な疾患であり, 全脳卒中の1~2%といわれており未だ不明な部分が多い。生活レベルに大きく影響する緊急性の高い疾患であるため, 原因検索や診断, 治療に関する検討は重要であると考えられる。 【症例】脳梗塞の既往があり, 抗血小板薬を内服していた70代男性。第1病日に足底のしびれを感じ, 次第に立位歩行困難となり, 排尿感覚が消失した。当院来院時, 四肢の筋力低下はなくTh12~L1以下の左右対称性の触覚・温痛覚・振動覚・位置覚の著明な低下があり膀胱直腸障害も認めていた。第2病日に脊髄MRIを施行するも明らかな所見は認められなかった。第9病日の三度目に撮影した脊髄MRIにてTh12レベルの髄内にT2高信号域が出現し, 脊髄梗塞と診断した。 【考察】発症時に脊髄MRIのT2強調像で脊髄梗塞が描出されるのは4~6割であり, 発症時に陰性のこともあるため, 脊髄梗塞を疑った際には繰り返しMRIを施行することが重要である。
著者
久村 正樹 藤井 昌子 松枝 秀世 城下 翠 橋本 昌幸 中村 元洋 淺野 祥孝 久木原 由里子 大井 秀則 平松 玄太郎 有馬 史人 安藤 陽児 輿水 健治
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.315-318, 2018-12-31 (Released:2018-12-28)
参考文献数
7

症例は55歳男性。自殺企図で有機リン製剤を飲み, 埼玉医科大学総合医療センターに救急搬送された。病着時, Glasgow Coma Scale 14 (E3V5M6) と軽度の意識障害と瞳孔径2mm/2mmの縮瞳, および著明な流涎を認めていた。血液検査ではコリンエステラーゼ値が4U/Lと低下し, 血清からはジクロルボスが検出された。有機リン中毒と診断し呼吸管理を中心に加療を行った。第4病日からリハビリテーション (以下, リハビリ) を開始したが, 第25病日に両足の動かしづらさを訴えるようになった。第33病日に歩行困難となりICU-acquired weaknessの診断基準を満たすようになったが, リハビリ病歴から原因は有機リンの遅発性多発神経炎と診断できた。このため病態に沿ったリハビリが継続できた。第43病日に自力歩行が可能となり, 第65病日に独歩で転院した。重症患者に早期からリハビリを導入することは, 治療のみならず診断にも寄与する可能性がある。