著者
長久 吉雄 吉田 泰夫 伊藤 雅 小笠原 敬三
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.1054-1058, 2009 (Released:2009-10-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1

Humoral hypercalcemia of malignancy(以下,HHM)をきたしたParathyroid Hormone Related Protein(以下,PTHrP)産生胃癌の1例を経験したので報告する.症例は82歳の女性で,2007年2月に食欲不振を主訴に来院した.精査にて胃噴門部癌と診断されたが,入院時検査で高Ca血症を認めたため,内分泌学的血液検査を追加施行したところintact PTH・高感度PTHがそれぞれ低下し,血清PTHrPは上昇していた.以上から,PTHrP産生胃癌によるHHMと診断した.可及的な高Ca血症の改善を図った後,脾合併胃全摘術,膵体尾部切除術を施行した.術後,血清CaおよびPTHrPは基準範囲内に低下し経口摂取も可能となった.しかし,術後17日目より血清Caは上昇へ転じ,PTHrPは67.8pmol/lにまで増加した.転移病巣が出現・増大し,術後38日目に死亡した.HHMを来した胃癌の予後は極めて厳しく,またPTHrPが胃癌の予後指標因子のひとつとなりうる可能性が推測された.